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対談 難聴と認知症のかかわりとは(後編)難聴に対する早期介入について

対談 難聴と認知症のかかわりとは(後編)難聴に対する早期介入について
繁田 雅弘 先生

東京慈恵会医科大学 精神医学講座 教授、東京慈恵会医科大学附属病院 精神神経科 診療部長

繁田 雅弘 先生

小川 郁 先生

慶應義塾大学医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 教授・診療科部長

小川 郁 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年11月14日です。

歳を重ねると周りの音が聞こえにくくなってきます。これは老化現象のひとつとして誰にでも起こりうることです。加齢にともなう難聴は、65歳以上で急増するという調査結果もあります。一方、65歳以上の認知症患者の割合は、2015年では15.5%(約6人に1人)で、今後は、さらに増加するだろうといわれています。

難聴と認知症のかかわりをテーマに、慶應義塾大学病院 耳鼻咽喉科の小川郁先生と、東京慈恵会医科大学 精神医学講座の繁田雅弘先生による対談が行われました。本記事では、対談後半の様子をレポートします。

対談の前半については、記事1『対談 難聴と認知症のかかわりとは(前編)難聴は認知症発症に関わるリスクのひとつ』をご覧ください。

小川先生:

認知症の危険因子のひとつである難聴に関して、最近はiPS創薬注1をはじめとするさまざまな研究が進められています。また、従来から行われている介入方法としては、補聴器の適切な活用があります。

繁田先生:

私が担当する患者さんにも、補聴器をされている方がいます。彼らの中には、きちんと補聴器を使い続けているケースと、そうでないケースが混在していますが、そこにはどのような違いがあるのでしょうか。

 

繁田先生

小川先生:

まず「補聴器は眼鏡と同じようには使えない」という点を強調したいと思います。

補聴器をつけることで、すぐに音がはっきりと聞こえるようになるだろう、と期待される方は多いです。しかし、補聴器は眼鏡と違い、つけるだけでなく音を聞き取るトレーニングが必要なのです。

一般的には、補聴器をつけ始めてから少なくとも3か月〜半年ほどは、定期的に通院し、補聴器の音量などを調整しながら、徐々に音を聞き取るトレーニングを続けます。

補聴器をつけたばかりの頃は、雑音を含めて周囲の音が大きく聞こえますが、トレーニングを積むことで、徐々にその中から必要な音や言葉を聞き取れるようになります。

繁田先生:

なるほど。補聴器を適切に使用できるようになるためには、一定期間のトレーニングが必要なのですね。

注1 iPS創薬・・・iPS細胞から目的の細胞を大量に分化誘導し、体外で多種類の薬剤を投与することで、それぞれの薬剤の効果や毒性を検討する方法。ヒト由来の細胞を大量に用いて体外で検討することができ、薬剤開発の効率改善が期待されている。

繁田先生:

補聴器の使用にあたっては、一定期間におよぶトレーニングが必要であることを知らないために、雑音が大きくなってうるさいからと補聴器をつけなくなったり、耳に馴染まないと感じたりして、結果的に補聴器を有効活用できないという声をよく聞きます。なぜ、このような状況が生まれるのでしょう。

小川先生:

問題は、補聴器を販売する際に、正しい情報提供が行われていないことがあると考えます。今や、補聴器は、家電量販店やデパート、眼鏡販売店などを含め、さまざまな場所で購入できる時代になりました。

中には、「売って終わり」という販売店も存在します。そのような場合、補聴器を購入される方に対して、本来必要な正しい情報提供が行われません。また、定期的な聴力の経過観察や適切な補聴器の使い方の指導といった継続的なケアが行われないことも珍しくありません。

繁田先生、小川先生

繁田先生:

それは問題ですね。どのようなところで補聴器を購入したらよいのでしょうか。

小川先生:

認定補聴器技能者注2が在籍する補聴器の専門店であれば、正しい情報提供と継続的なケアが行われているはずです。

小川先生

欧米諸国では、難聴者に補聴器を販売する場合は、まず医師による診断を行い、有資格者(オージオロジストまたは音響技師等補聴器専門家)による聴力検査、耳型採取、フィッティングを実施します。しかし、日本ではそのような制度が確立されていませんでした。

現在、日本耳鼻咽喉科学会では、このような状態を変えたいと考えています。2018年より、補聴器相談医注3が補聴器の診療情報提供書を作成し、それに基づき販売店で補聴器を調整する流れを確立しました。さらに、医療費控除が受けられるシステムを構築しました。

補聴器相談医の名簿は、日本耳鼻咽喉科学会のホームページに掲載されています。

繁田先生:

そのような名簿があると、臨床の現場でも患者さんにおすすめしやすくて助かります。

認知症の方が社会から孤立してしまうことは、非常に残念です。難聴に関しても、少しでも患者さんのQOLを改善したいと思い、できるだけよい形で補聴器の装用をおすすめしたい気持ちがありました。けれども、補聴器は安い買い物ではありませんし、途中でつけなくなってしまう方も少なからずみてきたため、自信を持って補聴器を患者さんにおすすめできませんでした。

しかし、今日お話を伺って安心しました。これからは患者さんに、補聴器相談医に相談するよう自信を持っておすすめできそうです。

加齢性の難聴の患者さんがいたら、適切に早期介入することが大切ですね。そのためには、認知症の診断にかかわる者が、難聴に対する認識を改めることも必要です。それこそ、2つ3つ質問して、患者さんの聞き返しが多い、よく聞こえないといわれるときには、難聴の可能性を疑うことができます。そこで難聴に気づき、早期介入を行えば、その患者さんの認知機能の低下を抑えられる可能性が高まります。

注2 認定補聴器技能者・・・補聴器の販売・調整に関して、基準以上の知識や技能を持つと認定された資格者

注3 補聴器相談医・・・難聴の方が適切に補聴器を利用できるよう、それぞれの障害に対応して、機能、価格などで合理的な補聴器利用ができるよう活動する医師。耳の状態を診察して聴力検査を行い、難聴の種類を診断する。治せる難聴に対しては治療を行い、治せない難聴に対しては真に補聴器が必要なのかどうかを診断し、必要があれば専門の補聴器販売店を紹介し、連携して適切な補聴器を選ぶ。また、補聴器が決まった後も、聴力の経過観察を行い、適切な補聴器の使い方を指導する。

繁田先生:

認知機能の低下によって、それまでできていたことができなくなったり、家族から怒られたりして、徐々に自信を失い、社会参加自体に消極的になっていく。そのような患者さんを、数多くみてきました。今日のお話で、難聴がその一因になっていることを認識しました。

難聴に対して適切に早期介入することで、患者さんの社会参加を少しでも維持したり促したりできたらよいですね。そうすれば、患者さんの日常生活での楽しみや生きがいが増え、QOLを向上させられる可能性があると感じます。

自分自身が年齢を重ねたことで、あらためて聴力の大切さを実感しています。以前は、「生活する上では、聴こえなくなることより、見えなくなることの方がつらいだろう」と思っていました。しかし今では、聴力や言葉の力、たとえばちょっとした会話のニュアンスなどを誰かと理解し合えることの大切さを身にしみて感じています。

繁田先生、小川先生 座談会

小川先生:

そうですね。言葉というのは、思考と情動の引き金になっています。「私たちは、言葉によってさまざまな思いをめぐらせ、深く思考したり、感動したりする。」そのような意味で、聴力は生きていく上で非常に大切な機能といえるでしょう。

加齢によって起こる難聴を、完全に防ぐことは難しいとされています。人が今よりも短命だった頃ならまだしも、「人生100年時代」といわれる現代において、加齢による影響を完全に食い止めることはできません。

そのような中でも、たとえば難聴に対して適切な早期介入を行うことで、認知機能の低下を抑制できるとしたら、それは非常に大切なことだと考えます。

繁田先生、小川先生 握手している様子

このようにして、小川先生と繁田先生による対談は和やかに終了しました。

 

 

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