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大腸がんへの3D腹腔鏡を用いた手術とは?

大腸がんへの3D腹腔鏡を用いた手術とは?
JR札幌病院 外科診療部長 鶴間 哲弘 先生

JR札幌病院 外科診療部長

鶴間 哲弘 先生

目次
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JR札幌病院では、大腸がんに対してフルハイビジョンの3D腹腔鏡を用いた手術を行っています。高画質で立体的な画像を映し出すことで、手術時間の短縮や安全な手術につながると考えられています。

今回は、JR札幌病院の鶴間哲弘先生に、大腸がんへの3D腹腔鏡を用いた手術の特徴から、同病院の外科の取り組みまでお話しいただきました。

大腸がんへの3D腹腔鏡を用いた手術とは?

大腸がんでは腹腔鏡下手術が行われることが多い

記事2『大腸がんのステージ分類と治療-JR札幌病院の大腸がん治療の特徴』でお話ししたように、近年、大腸がんでは腹腔鏡下手術が一般的になっています。腹腔鏡下手術とは、腹腔鏡の先端につけられたカメラによって、手術する場所を映し出しながら行う手術です。

映し出される画像は、昔は画質が荒かったといわれています。しかし近年では腹腔鏡機器が進歩し、フルハイビジョンの3D腹腔鏡も登場しています。フルハイビジョンの3D腹腔鏡では、高画質で立体的な画像を映し出すことが可能になりました。

3D腹腔鏡を用いた手術を適応する患者さん

当院では、手術が適応となる大腸がんの患者さんの手術には、原則、3D腹腔鏡を用いた手術を施行しています。また、手術の適応は、患者さんの状態やがんの進行度などを確認したうえで決定するため、高齢であっても3D腹腔鏡を用いた手術を行っています。患者さんの年齢だけをみて判断することはありません。

高齢者

3D腹腔鏡を用いた手術ではいくつの穴を開ける?

通常、大腸がんの腹腔鏡下手術であれば、5つくらいの穴を開けることになります。カメラをおへそから入れ、手術の操作のために左右2つずつ穴を開けることが多いです。

また、おへそだけに2~4センチくらいの1つだけの穴を開ける単孔(たんこう)手術を行うこともあります。ただし、これはすべての患者さんに適応できるわけではありません。肥満でなかったり、がんが大きくなりすぎていなかったりする場合に行われます。

3D腹腔鏡を用いた大腸がんの手術の特徴 

無駄な動きがなくなり手術時間の短縮に

写真ご提供:JR札幌病院
写真ご提供:JR札幌病院

フルハイビジョンの3D腹腔鏡を用いた手術では、3Dメガネをかけることによって奥行きがわかるようになります。3Dにすることで立体感がわかるため、無駄な動きが少なくなり、手術時間の短縮につながるといわれています。

たとえば、手術のときに、お腹の中で縫う操作があります。縫うときに、2平面であると、奥行きがつかめないために空回りをしてしまうことがあります。一方、3Dであると、奥行きがわかるため、縫う操作もよりスムーズになります。スムーズに操作できるために、手術時間が短く体に負担の少ない手術が可能になります。

安全で正確な手術につながる

写真ご提供:JR札幌病院
写真ご提供:JR札幌病院

フルハイビジョンの3D腹腔鏡を用いた手術では、高画質になったことで、より正確な手術ができるようになったといわれています。たとえば、高画質によって神経のひとつひとつを確認することができるようになりました。

直腸がんの手術では、神経を損傷することで術後に排尿障害を生じることがあります。こうした合併症を回避するためには、術中に神経の位置を確認しながら手術を進め、神経を温存することが重要です。3D腹腔鏡を用いた手術は、術中に神経の位置をより明確に確認できることから、神経を温存する体に優しい手術につながっていると考えています。

日本では腹腔鏡の技術認定制度がある

日本では、日本内視鏡外科学会が定める、腹腔鏡の技術認定制度があります。技術認定を受けるためには、腹腔鏡下手術の手術画像をストックしておき、未編集にした状態で学会の審査を行う部門に送ります。送付後、審査員の審査の結果、技術認定を受けることができます。当科でも、技術認定を取得した外科医が手術に関わり、よりよい成績の手術を行えるように取り組んでいます。

肛門温存手術

可能な限り肛門を残す肛門温存手術(taTME)を

従来、肛門に近い下部直腸がんの場合は、切除した腸をつなげることができず(肛門温存困難)永久的人工肛門の手術が行われることが多かったのですが、当科では、がんの進行度にもよりますが、可能な限り肛門を残す肛門温存手術(taTME)を行っています。

JR札幌病院が導入するICG蛍光法とは? 

縫合不全やリンパ節の取り残しを防ぐ

近年、腹腔鏡下手術においてもICG蛍光法の有用性が報告され始めています。当院でも、このICG蛍光法を導入しています。

たとえば、大腸がんの手術では、がんや腸管の切除の後に腸をつなげなくてはいけません。しかし、中には縫合不全と呼ばれる状態になり、きちんとつながらなくなってしまうケースもあります。このような縫合不全を起こす原因のひとつは、血流障害といわれています。

血流障害に起因する縫合不全を少しでも減らすために、当院では、血液の中にICGと呼ばれる薬剤を注射します。その後、特殊なカメラで画像化すると、血流のあるところが光って映しだされます。

ICG蛍光画像:緑に発光され腸管の血流が良好であることがわかる(写真ご提供:JR札幌病院)
ICG蛍光画像:緑に発光され腸管の血流が良好であることがわかる(写真ご提供:JR札幌病院)

腸をつなげたところの血流が低下している場合には、ICG蛍光法を行っても発光度が低下するため、血流障害を発見することができます。当院でも、ICG蛍光法を導入してから縫合不全が起こることが少なくなりました。

ICG蛍光画像:血管内の血流が緑色に発光される(写真ご提供:JR札幌病院)
ICG蛍光画像:血管内の血流が緑色に発光される(写真ご提供:JR札幌病院)

当院においては、ICG蛍光法は、大腸がん、胃がんなどの消化器がんや炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)などのさまざまな腹腔鏡下手術にも応用しています。

手術後の生活

術後2週間程度で元の生活に戻ることが多い

一般的に、大腸がんの手術のための入院期間は10日程度です。患者さんの状態をみながら、手術の翌日には歩行開始、4日目から食事を開始するケースが多いです。仕事をしている方であれば、だいたい2週間程度仕事を休み、その後復帰するケースが多いでしょう。

入院中の患者さん

術後3年は再発する可能性が高い

内視鏡治療や手術の後の再発の可能性は、ステージによって異なります。ステージⅡであれば約13%、ステージⅢであれば約30%は再発する可能性があるといわれています。そのため、術後の患者さんは、定期的に通院していただき検査を受けていただく必要があるでしょう。また、手術によってがんをとりきれない場合には、術後に化学療法や放射線療法を行うこともあります。

基本的に、当院では、術後5年程度は定期検査を受けることを推奨しています。術後にがんが再発する場合、約8割が術後3年程度の間に生じるといわれています。そのため、術後3年間は、3か月ごとなど、比較的高い頻度で受診していただきます。

ただし、患者さんの状態によっても推奨される検査の頻度は異なります。たとえば、最初に発生したがんの組織の悪性度が高い場合には、5年が経過しても定期検査を続けていただく場合もあります。

JR札幌病院の大腸がん治療の特徴

診療科の垣根が低く連携が実現されている

私たちJR札幌病院の特徴のひとつに、診療科同士の垣根がないことが挙げられます。記事1『大腸がんの原因や症状、検査について解説』でお話ししたような内科と外科の連携はもちろんのこと、ほかの診療科の連携も実現されています。

たとえば、膀胱にまで及ぶ進行直腸がんの手術の場合には、手術中はもとより術後の排尿機能についても泌尿器科医の協力のもと、治療を進めていきます。

また、高齢になると、患者さんが抱える病気はひとつとは限りません。大腸がんの患者さんであっても、ほかに心臓や肺の病気をもつケースもあります。そのような場合にも、複数の診療科の連携によって同時進行で治療を行うことも可能です。外来治療であっても入院であっても、スムーズに治療することができるケースが多いです。

多職種によるチーム医療を実現

当院は、チーム医療にも力を入れています。がん治療は、「医師によるがんの治療」のみでは成り立ちません。がんに対する治療とともに、患者さんのみならずご家族も含めた精神的および社会的なサポートも重要です。

当院では、緩和ケアチーム、専門的知識・技術を有する各種認定看護師、病棟および外来看護師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士、ソーシャルワーカーなど多職種のメンバーが加わり、個々の患者背景に適した質の高いがん治療を提供できるよう、また、治療のみではなく療養生活支援、服薬管理指導、心理的支援など、総合的がん治療の確立を目指しています。

たとえば、入院中の患者さんに、いつもパン食だからごはんだと食が進まないと相談されたとします。その場合、管理栄養士が介入し、食事内容をパンに変え、少しでも食事摂取が進むように細かい点にまで気を配ります。

また、最近は高齢な患者さんが多いので、入院治療が始まった時点から早期退院へ向けてのリハビリ、退院後の生活支援など、さまざまな方面からチーム医療に取り組んでいます。

JR札幌病院の外科の取り組み

少し話は逸れますが、私たちJR札幌病院の外科の取り組みについて少しご紹介します。当院の外科では、大腸がんなどの消化器がんの手術以外にも、さまざまな治療に取り組んでいます。ここでは、近年、当院が取り組み始めたあらたな治療について、いくつかお話しします。

便失禁のあらたな治療:仙骨神経刺激療法

憂鬱そうな女性

便失禁は、さまざまな方に起こりうる病気で、日本では500万人もの人が便失禁に悩んでいるといわれています。加齢、出産(経腟分娩)、肛門部の手術、脊椎(せきつい)(背骨)の病気や交通事故などの脊髄障害などが便失禁の原因と考えられますが、明らかな原因がない場合(特発性便失禁)もあります。

2017年、便失禁治療における診療ガイドラインが発表され、診療方法の指針が示されました。まずは、便失禁重症度判定などを施行した後、薬物療法などの初期保存的療法が開始されます。この治療で便失禁が改善あるいは治癒する場合もありますが、これで症状改善が不十分な場合には、専門的診療に移行します。

この治療には、骨盤底筋訓練やバイオフィードバック療法などの保存的療法と、外科治療があります。外科治療で唯一、診療ガイドライン上で「推奨度A」と薦められている治療が『仙骨神経刺激療法』です。

当科でも、薬物療法などの初期保存的療法から専門的診療まで、便失禁治療に取り組んでいます。特に、仙骨神経刺激療法は、2014年12月から治療を開始し、これまでに便失禁が完全寛解(便失禁ゼロ)になった患者さんもいます。

便失禁に悩んでいる方は、一度ご相談いただければと思います。

糖尿病などの改善につながる減量手術

減量手術にも取り組んでいます。近年は、肥満に悩む方も少なくありません。一旦、高度肥満症(BMI 35以上)が確立されてしまうと、食事制限や運動では、長期間の減量効果はないとも報告されています。肥満は糖尿病をはじめとして、さまざまな病気の原因になり、寿命を短くするともいわれています。

最近は、さまざまなダイエット法が報告されていますが、一度体重減少してもリバウンドに悩まされる場合もあります。肥満に対する外科治療(減量手術)は、ほかの治療方法と比較しても長期に体重を維持できる有効な減量方法です。減量手術は、肥満に伴うさまざまな病気(糖尿病、高血圧、睡眠時無呼吸など)を改善します。

特に、糖尿病に対する効果は高く、減量手術によって体重減少することにより、糖尿病に対する薬剤投与が不要になり血液データが正常化する場合もあります。「糖尿病診療ガイドライン」においても、減量手術は減量に難渋する肥満糖尿病症例に対する有効な治療選択肢として提唱されています。

肥満で悩んでいる方、なかなか肥満関連疾患が良くならない方は、一度、当科外来を受診ください。

鶴間哲弘先生からのメッセージ

大腸がんは早期に発見して手術をすれば治癒が可能

先生

大腸がんでは、腹腔鏡下手術の導入により体に負担が少なく、正確な手術が可能になってきています。特に、お話ししたフルハイビジョン3D腹腔鏡であれば、膜構造や神経まで鮮明に確認することができ、より安全な手術ができると考えています。

大腸がんは早期発見によって手術を行えば治る可能性が高くなります。40歳以上の方であれば定期的に検診を受けていただきたいと思います。また、便に血が混じったりお腹が張ったりするような場合には、早期に受診していただくことが病気の発見につながるでしょう。

お話ししたように、私たちJR札幌病院は、内科と外科を始めとして診療科ごとの垣根がありません。大腸がんに限らず複数の病気を抱えている場合にも、スムーズな治療を実現しています。検査や治療が必要な際には、ご相談いただきたいと思います。