院長インタビュー

福井県における福井大学医学部附属病院の役割─日々の診療から医師の育成まで

福井県における福井大学医学部附属病院の役割─日々の診療から医師の育成まで
腰地 孝昭 先生

福井大学医学部附属病院 院長

腰地 孝昭 先生

目次
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福井県吉田郡永平寺町に位置する福井大学医学部附属病院は日々の診療、若手医療従事者の教育、研究という三本柱で福井県の医療に尽力しています。同院は医師の育成については、福井県内だけでなく日本中で活躍できるよい医師を育てる、ということを意識していると、腰地先生はおっしゃいます。同院の特徴的な取り組みについて、福井大学医学部附属病院 病院長 腰地孝昭先生にお話を伺いました。

 

福井大学医学部附属病院外観(福井大学医学部附属病院よりご提供)

当院は1983年に福井医科大学医学部附属病院として開院し、福井県への医療提供や若手医師の育成に取り組んでいます。もともと福井医科大学は、一県一医大構想の中で創立された医科大学です。その後、2003年に福井大学と統合することで、当院の名称も「福井大学医学部附属病院」として新たなスタートを切りました。

大学病院ということもあり、日々の診療はもちろん、今後の医療を担っていく若手医師の教育にも力を注いでおり県内外の医療機関との連携を強化しています。

ここでは当院の病院機能について、簡単にご紹介します。

2018年10月現在、600床の病床数で稼働しています。その内41床を精神科病棟として設置しており、精神疾患に対する入院治療も可能です。また、総合病院のため多くの診療科があります。ですから、精神科病棟で入院している患者さんに身体合併症がみられる際には他科と連携を取り、精神と体の両方の治療を提供することができます。

また当院は、災害拠点病院をはじめ、福井県におけるいくつかの拠点病院に指定されています。災害拠点病院としては、日頃から災害などに対する訓練を実施しています。たとえば、福井県は原子力発電所がいくつか稼働しています。2011年には福島原発事故が発生したこともあるため、仮に福井県内で同様の事故が起こっても迅速に対応できるように備えています。

 

福井大学医学部 航空写真(福井大学医学部附属病院よりご提供)
高エネルギー医学研究センター外観(福井大学医学部附属病院よりご提供)

当院の敷地内には福井大学の高エネルギー医学研究センターがあります。この研究センターは、放射線などの高エネルギー電磁波を医学利用へ発展させることで、よりよい医療の提供を目指しています。放射線の医学利用ではCT検査やPET検査などの医療機器が挙げられます。また、MRI検査も高エネルギーの医学利用のひとつで、当院には日本でもまだ数少ないPET-MRIの同時診断装置も備わっています。

同センターでは主に脳神経系の機能診断や新しい画像診断法の開発を目指し、当院の各診療科や検査部門と連携を取り研究や開発に尽力しています。

高エネルギー医学研究センターは福井大学の研究分野において、特に力を入れている部門のひとつです。

 

子どものこころ診療部の外来受付(福井大学医学部附属病院よりご提供)

子どものこころに関係する疾患に対する診療の場を設けています。たとえば発達障害をはじめ、不登校や反応性愛着障害など幅広く診療しています。また、当診療部は子どもたちそれぞれに適切な診療を提供するのはもちろん、子どものこころ発達研究センターでの基礎研究にも力を入れています。この研究は、子どものこころの発達や障害の病態を解明することで、よりよい診断方法や治療方法の確立へつなげていくことを目的にしています。

子どものこころの発達支援をすることで、福井県の子どもたちやご家族がより安心して生活できるようにしていきたいと思います。

 

充実した研修体制(福井大学医学部附属病院よりご提供)

看護部では1人の患者さんに対して2人の看護師が担当する看護体制、PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)※を導入しています。このPNSは、経験の多い看護師と、まだ経験の浅い看護師をパートナーにすることで互いを補い合い、効率的で安全な看護の提供やスキルアップを目指すことを目的としています。たとえば、病棟で患者さんの容態を確認した際は、ナースステーションに戻ってから電子カルテに内容をまとめる業務があります。1人だと記憶の齟齬やメモの間違いなどが発生することも考えられます。しかし、2人で行えば一人が観察して、もう一人がその場でデータを入力できるため、間違いも少なく、時間の節約にもなります。

医療安全の充実だけでなく、患者さん一人ひとりに対して手厚い看護ケアを提供することも可能にしています。

また、互いを助け合うことで看護師たちのスキルアップにもつながります。経験の浅い看護師と経験豊富な看護師をパートナーにしているため、先輩看護師のスキルを間近で見ることができます。この看護体制は2007年から開始していますが、現在は全国の医療機関からこの看護体制の見学にいらっしゃる方が絶えず、多くの医療機関で導入されています。

※PNSは福井大学医学部附属病院が商標登録をしています。

当院は今後の福井県の医療を担う若手医師の教育、輩出もひとつの使命だと考えています。また、福井県内にとどまらず、今後の日本の医療を担っていく若手医師を育てていく気持ちで教育に力を入れています。その内の取り組みのひとつに大学病院で行うような先進的な診療だけでなく、地域の在宅医療などで必要になる力をつける研修や診療の実施も検討しています。

たとえば、当院は北米型ERの救急体制を整え救急患者さんの受け入れに努めています。北米型ERは軽症の1次救急から迅速な治療が必要になる3次救急まで患者さんを受け入れる救急体制のことです。当院の救急体制では、まず救急科に所属する医師が患者さんの病状を総合的に診療し、必要な治療や専門的な診療科との連携を図っています。このように、大学病院ではどのようなことが必要なのか、迅速に患者さんの容態を把握する力が求められます。

一方で、地域医療では、高齢者が対象になることが多く、複数の疾患を患っているケースも多いので、さまざまな疾患に対応できる総合力が求められます。

つまり、大学病院で専門的に診療する医師に必要な技量と地域医療を担う医師に必要な技量は少し違いがあるのです。

これまで、大学病院での医師教育は、急性期の専門的な医療に偏りすぎる傾向にありました。しかし、現在国が進める地域医療構想に沿った医療を提供するには、大学病院で経験できることだけではなく、慢性期の患者さんや在宅医療など総合診療の経験も重要と考えています。

そこで、当院では大学病院で必要とされる専門的な診療と地域医療に必要とされる総合的な診療の両方に対する研修ができるように体制を整え始めました。

 

手術風景(福井大学医学部附属病院よりご提供)

福井大学病院では福井県の地域医療を担う総合診療医や家庭医の育成に力を入れる必要があると考えています。そのため、より地域に密着した医療提供を学べる場として地元自治体が町立のクリニックを開院し、その管理運営を大学が行う予定があります(2018年10月現在)。午前中は一般診療を行い、午後からは在宅医療・訪問看護を行う診療所です。現在の研修体制だけでは、この地域に寄り添った医療を提供するための研修が十分とはいえません。そこで、町立のクリニックを運営することで十分な地域医療の研修が行えるようになり、地域医療を目指す若手医師の活躍の場を広げたいと考えています。

すなわち、大学病院で求められる高度先進的な医療と地域に寄り添った総合的な診療のどちらも経験することで総合力の高い医師を育てていき、次の時代の医療を担ってほしいと考えています。

若手医師に対してや講演をするときには「高い山を目指してほしい」ということをメッセージとして伝えています。目標を高く設定することで、さまざまなことにリスクを冒してでもチャレンジしなければなりませんが、その分経験値も増加します。そうすることで、自身が患者さんやご家族にとって必要とされる医師のポジションに立つことができるのではないでしょうか。夢をあきらめず、追い続けていってください。

 

福井大学医学部附属病院よりご提供

当院は特定機能病院としての高度医療とともに、地域医療の担い手としての役割を今後も果たしていきたいと思います。今後は、地域医療構想の中で医療が完結するためにさまざまな形の病診連携(病院と診療所の連携など)が必要になってきます。地域の皆さまにはぜひお家の近くの診療所やクリニックの先生をかかりつけ医として頼っていただき、必要があれば紹介状を書いていただいて大学病院を受診していただきたいと思います。

当院は2018年に外来棟の再整備が完了し、紹介していただいた患者さんがスムーズに入院や治療を受けることができるように、患者総合支援センターを外来に整備しました。分からないことがあれば何でも気軽に相談していただけます。

今後も、病院機能の充実だけでなく働くスタッフの技術も向上させて、福井県の皆さまに安心して医療を受けていただく環境を整えていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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