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定位放射線治療の可能性とは? 乳癌診療ガイドライン2018年版から考え...
肺がんの次に脳転移が多いとされている乳がん。乳がんの脳転移に対する治療の選択肢には、主に放射線治療・外科手術・薬物治療があり、さらに放射線治療には、全脳照射と定位放射線照射があります。2018年...
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定位放射線治療の可能性とは? 乳癌診療ガイドライン2018年版から考える脳転移治療

公開日 2018 年 11 月 30 日 | 更新日 2018 年 11 月 30 日

定位放射線治療の可能性とは? 乳癌診療ガイドライン2018年版から考える脳転移治療
芹澤 徹 先生

築地神経科クリニック 東京ガンマユニットセンター 院長

芹澤 徹 先生

小口 正彦 先生

公益財団法人がん研究会有明病院 副院長 / 放射線治療部長 / 放射線管理部長

小口 正彦 先生

矢形 寛 先生

埼玉医科大学総合医療センター ブレストケア科 教授

矢形 寛 先生

目次

肺がんの次に脳転移が多いとされている乳がん。乳がんの脳転移に対する治療の選択肢には、主に放射線治療・外科手術・薬物治療があり、さらに放射線治療には、全脳照射と定位放射線照射があります。

2018年版「乳癌診療ガイドライン」では、腫瘍の個数によっては、定位手術的照射(SRS)単独での治療が推奨されるようになりました。このガイドラインの改定により、今後、乳がん脳転移の治療はどのように変わっていくと考えられるでしょうか。

引き続き、築地神経科クリニック院長である芹澤 徹先生、がん研有明病院 副院長・放射線治療部長である小口 正彦先生、埼玉医科大学 総合医療センター ブレストケア科 教授である矢形 寛先生にお話をお伺いしました。

全脳照射と定位放射線照射の違い

放射線治療には、全脳照射と定位放射線照射の2つの方法があります。

全脳照射

全脳照射とは、脳全体に放射線を照射する方法です。全脳照射は、脳全体に放射線を照射するため目視確認できないような微小な腫瘍も治療することができますが、腫瘍以外の正常組織にも放射線を照射するため、以下のような副作用が発生することがあります。

  • 脱毛
  • 頭痛
  • 吐き気や嘔吐
  • 食欲不振
  • 体力低下
  • 中耳炎
  • 認知機能の低下

など

このように全脳照射は正常な脳の組織への負担があり、一般的に生涯に1度しか実施できないとされています。

定位放射線照射

定位放射線照射とは、腫瘍のみに集中的に放射線を照射する方法です。一般的には、腫瘍の数が10か所程度で、腫瘍の大きさが3cm以下の場合に適応されます。定位放射線照射を行う装置のひとつに、ガンマナイフがあります。定位放射線照射は、正常な脳組織への照射を減らすことができ、全脳照射で起こる可能性のある副作用は基本的にありません。また、定位放射線照射は繰り返し行うことができます。

ガンマナイフ治療とは?

ガンマナイフの特徴

芹澤先生:定位放射線治療の中でも、ガンマナイフは、脳疾患に対する治療としてもっとも古い歴史をもっています。また、全世界で100万人以上の治療実績があります。

ガンマナイフ治療では、放射線を約200か所から細いビームとして出し、腫瘍部分に集中して照射することで治療を行います。たとえば、小さい(1cm程度)ものであれば、25個程度まで安全に照射できる能力があります。

 

ガンマナイフの治療

ピンポイントで病変のみを照射するので、脳幹部などリスクが高い部位にも照射可能であり、多発性のがんでも一度に照射することができます。

全脳照射は、基本的に一生に一度しか照射することができませんが、ガンマナイフの場合、新しい病変が生じた場合にも、再び照射することが可能です。

日帰りで治療が完了するケースも

芹澤先生:ガンマナイフによる治療を必要とする患者さんをご紹介いただくと、当院ではだいたい1週間以内で治療が完了します。治療自体は1日で終了します。通常は二泊三日の入院が必要ですが、条件がそろえば日帰りで治療可能な場合もあります。

また、脳の正常組織はほとんど被曝しません。ただし、腫瘍の大きさによって制御率が異なります。腫瘍が大きくなるにしたがって再発率も高くなります。3cmを超えると制御率も低くなります。

小口先生:エビデンスが少ない時代は、放射線腫瘍医の中でも、ガンマナイフの適応を検討する医師は少なかったように思います。私も、定位放射線治療の経験を重ねることで、その治療効果を把握していきました。全脳照射とは異なる結果が得られることが印象的で、それ以来、定位放射線治療、とりわけガンマナイフ治療が適していると判断する患者さんには、ガンマナイフ治療をおすすめしています。

ガンマナイフ治療の課題

放射線壊死が起こることもある

芹澤先生:ガンマナイフ治療のデメリットとしては、放射線壊死の起こる可能性が挙げられます。放射線治療後、半年から1年ほど経過して、病変が再度増大しその周りに浮腫(むくみ)が現れてくることがあるのです。この放射線壊死は、MRIによる画像所見では腫瘍の再発と非常によく似ています。

この時、もし再発であれば、もう一度放射線治療あるいは手術を検討しなくてはいけませんが、壊死の場合には比較的症状が軽く自然と治っていくことも多いので基本的に経過観察をします。したがって、両者のきちんとした鑑別が重要になります。

矢形先生:ガンマナイフ治療では腫瘍が3cmを超えるものは制御率が低いということですが、それは全脳照射でも同じなのではないですか。

芹澤先生:その傾向はあると思います。ただし、ガンマナイフの場合、腫瘍が大きいと線量を落とします。そのため、再発しやすく壊死が起こりやすいと考えられています。

壊死か再発か、しっかりと区別しないと、転帰の悪化につながっていきます。こうした場合に用いられる検査として、私たち脳神経外科医の間でゴールデンスタンダードとなっているのは、メチオニンPET検査です。PET検査によって壊死か再発か鑑別を行い、再発であれば再照射を考えますし、壊死であればそのまま経過観察を行います。

また、ガンマナイフ治療後に、新しい部分に転移した場合には追加のガンマナイフ治療が必要となります。つまり、新たな転移をチェックするために、全脳照射に比べると頻回の造影MRI検査が必要になります。

2018年版「乳癌診療ガイドライン」の変更点

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矢形先生:今回、3年ぶりに「乳癌診療ガイドライン」が改定され、エビデンスに基づき、推奨される治療法にも変化がありました。

小口先生:日本のガンマナイフ臨床研究グループが、MRIにて注意深く経過観察し、適応がある限り救済定位放射線照射を繰り返すことにより、定位放射線照射の適応を超える病態の悪化を認めるまで全脳照射を待機することが可能であると証明しました。

さらに、高次脳機能・認知機能が保たれることを世界に先駆けて証明したことは、各国のガイドラインに大きなインパクトを与えました。

芹澤先生:乳癌診療ガイドライン2018年版の、今回の一番大きな改訂ポイントは、定位手術的照射(SRS)単独で1〜4個の脳転移に照射できるということ、すなわち全脳照射を併用しなくてよいということであると思います。これは、とても大きな改訂です。

定位手術的照射単独のほうがよい理由は、1)全脳照射を併用する場合のほうが3か月の時点での記憶学習能力がより低下するという研究データが示されていること、2)生存予後は変わらないことの2点でしょう。

小口先生:これは、日本だけではなく、諸外国もだいたい同じ歩調でエビデンスが蓄積されてきているからだと思います。中でも日本では、近年、ガンマナイフ機器が普及しておりガンマナイフ治療を行うための基盤が整ってきています。定位放射線治療を行いやすい環境となりつつあるといえるのではないでしょうか。

芹澤先生:また、ガイドラインの中に、「全身状態がよい10個以下の脳転移症例について、腫瘍径3cm未満、脳転移の全腫瘍体積が15mL以下、髄液播種所見がないなどの条件を満たす場合には、定位手術的照射(SRS)を行い経過観察することで全脳照射を回避できる可能性がある」という記載があります。ガイドラインに、定位手術的照射(SRS)、つまりガンマナイフも加わったことは大きな進歩であると思います。

◆CQ10  予後良好群で全脳転移病巣の最大径が3cm未満であり、脳転移個数が1~4個までの乳癌脳転移に対して、初期治療として定位手術的照射(SRS)を行い、全脳照射を省略することは勧められるか?

推奨:

初期治療として定位手術的照射(SRS)を行い、SRSの適応を超える増悪を認めるまで全脳照射を省略することが弱く推奨される。(推奨の強さ:2、エビデンスの強さ:中、合意率:83%(10/12))

◆FQ3  全身状態のよい10個以下の脳転移症例において、一次治療として定位手術的照射(SRS)を行い経過観察することで、全脳照射を回避することが勧められるか?

ステートメント:

全身状態がよい10個以下の脳転移症例について、腫瘍径3cm未満、脳転移の全腫瘍体積が15mL以下、髄液播種所見がないなどの条件を満たす場合には、定位手術的照射(SRS)を行い経過観察することで全脳照射を回避できる可能性がある。

日本乳癌学会 編. 乳癌診療ガイドライン 1治療編 2018年版. 金原出版. 2018. 379p, 381p. より引用

髄液播種:脳や脊髄を満たす髄液の中に腫瘍細胞がちらばること

新たに登場したガンマナイフ治療とは?

マスクシステムを導入したガンマナイフ治療の特徴

芹澤先生:近年では、マスクをつけて行う新たなガンマナイフが登場しています。これを使うと、従来のガンマナイフよりも、分割照射の回数を増やすことができます。従来通り局所にも絞って照射することができるので、今後この機械によって、従来のピン固定のガンマナイフよりも治療の適応が広がる、あるいは治療成績が向上するのではないかと考えています。

マスクシステムを導入したガンマナイフ治療とは?

通常のガンマナイフ治療では、金属製のフレームを患者さんの頭部に装着して照射を行います。適切な鎮静のもと局所麻酔も併用して、患者さんの頭蓋骨に特殊なピンで固定します。

近年では、先述したようにフレームで装着する必要のないマスクシステムを導入したガンマナイフ治療が登場しています。マスクシステムを導入したガンマナイフ治療では、フレーム装着の必要がなく、患者さんの頭部に合わせた専用の枕とマスクを作成します。

従来のフレームを装着する際の鎮静や局所麻酔などが不要となり、患者さんの負担軽減が期待できるとともに、容易に分割照射が可能になりました。

乳がん脳転移治療の今後の展望-「乳癌診療ガイドライン」の変更に伴い全脳照射回避へ

なるべく全脳照射を回避する治療を

先生

芹澤先生:全脳照射の懸念点のひとつとして、認知機能の低下が挙げられます。照射後のフォローアップで精密な検査をすると、3か月程度でも記憶学習能力の低下が明らかになるケースがあります。また、1年以上経過すると白質脳症といった病態が明らかになり、QOL(生活の質)の大きな低下につながることがあります。そのため、生命予後がよいと予測される患者さんでは、全脳照射をなるべく後の選択肢として検討するということが、脳の治療スタイルとしてひとつ考えられるのではないかと思います。

また、今後の課題は、なかなか難しいのですが、いかに定位照射ができる3cm以下の大きさで脳転移を見つけるかということで、この方法について考えていかなければいけないと思っています。加えて、生命予後を予測し、脳に対する治療の方法や、放射線の治療強度を最適化していくことも大切です。また、髄液播種が起こったときの治療を確立することも現状の課題であるでしょう。

ガンマナイフ治療は理にかなった方法

小口先生

小口先生:当然のことではありますが、放射線は、がん病巣だけに照射して、なるべく正常な組織には照射しないほうがよいのです。正常な組織に照射してしまうと、たとえば、髪の毛が抜けてしまうなどの副作用が現れるからです。乳がんの脳転移に限らず、近年では、さまざまな悪性腫瘍で放射線の照射体積を小さくする取り組みが行われています。その先駆的なモデルが脳転移なのです。

定位放射線治療であるガンマナイフ治療は、患者さんのQOL、高次脳機能・認知機能への影響、がんの制御などから考えると理にかなった方法なのではないでしょうか。

ガンマナイフ治療を最大限活用することが大切

矢形先生

矢形先生:乳がんの転移再発では、基本的に根治を目指すことは難しいので、QOLをできるだけ保ちながら治療を行い、患者さんがいかに今まで通りに近い生活を送れるのかということが非常に重要になります。

近年では脳転移に効果のある薬も登場してきましたが、未だ、手術と放射線治療が治療の主体です。放射線治療でいえばガンマナイフと全脳照射をいかに組み合わせて、できるだけ患者さんにとって負担が少なく、しかも少しでも長くこれまで通りの生活ができるようにコントロールしていくかということを最大限に考えていかなければなりません。

それを乳腺科、腫瘍内科、脳神経外科、放射線腫瘍医も認識して、ガンマナイフ治療を最大限活用していくことが大切だといえます。

 

転移性脳腫瘍 (芹澤 徹 先生・小口 正彦 先生・矢形 寛 先生)の連載記事

脳神経外科医・放射線腫瘍医として、転移性脳腫瘍、聴神経腫瘍、脳動静脈奇形に対するガンマナイフ治療を専門としている。1997年から、10,000例以上のガンマナイフ治療実績がある。特に転移性脳腫瘍に対する治療に造詣が深く、転移性脳腫瘍を起こした患者さんが安心して治療を受けられるよう、診療・臨床研究に邁進している。

1983年より放射線腫瘍医としてキャリアをはじめる。2009年にはがん研究会有明病院放射線治療部部長に就任。2000年以降、10,000例以上の放射線治療を担当してきた。厚生労働省がん研究助成金:放射線治療における臨床試験の体系化に関する研究主任研究者等を歴任。

1990年より千葉大学にて一般外科医師としてキャリアをスタートする。その後、乳腺外科を専門とし、2004年より聖路加国際病院にて多くの乳がん症例を経験。2015年より埼玉医科大学総合医療センターブレストケア科教授に就任。乳腺外科分野の第一人者として臨床をリードしている。

「転移性脳腫瘍」についての相談が10件あります

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