院長インタビュー

地域医療を支え医療の発展に貢献する─岡山大学病院の取り組み

地域医療を支え医療の発展に貢献する─岡山大学病院の取り組み
金澤 右 先生

岡山大学病院 病院長/放射線科 科長、岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科 放射線医学教授

金澤 右 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

岡山県岡山市に位置する岡山大学病院は、1870年の創設以来、医療や学問の伝統を受け継ぎながら中国・四国地方の医療を支え、リーディングホスピタルであるべきというミッションのもと医療の発展にも貢献されています。

岡山大学病院の院長である金澤右先生にお話を伺いました。

岡山大学病院外観

1870年、現在の岡山市に医学館(医学校)が創設されました。当時は日本の有力藩が医学教育の西洋化を進めていたことから多くの医学館が設置されていましたが、なかでも岡山藩医学館は、オランダ人教師ロイトルを常勤講師として雇い入れるなど、熱心に西洋化に取り組んでいました。その後、中国・四国地方における医師養成機関としての役割も担ってきました。

また、岡山県では蘭学が非常に盛んで、膵臓の「膵」や脾臓の「脾」といった言葉を考えた宇田川榕菴(ようあん)をはじめ有名な蘭学者が多数輩出されており、岡山県全体によい影響をもたらしてきたという古い歴史があります。

こうした歴史的な背景を踏まえて、歴代の院長や現場の医師たちは、岡山大学病院は日本のリーディングホスピタルのひとつであるべきだというミッションを掲げて邁進してきました。

手術室

岡山大学病院の外科診療では、深い知識と技術をもつ医師たちが手術を行うことによって地域医療を支えてきました。また、出身大学を問わず優れた外科の医師が集まる環境を整えていることから、優れた医師の育成にもつながり、当院からは世界でも大いに注目されるような医師が輩出されてきました。

たとえば、日本初の肺移植を成功させた伊達洋至先生は、肺移植の成功を実現させるために留学して技術を学んでこられた医師です。戦略的に新しい治療に取り組んでいくということは岡山大学病院の特徴でもあります。

外科専門医を育てるプログラムの実施

手術支援ロボット「ダヴィンチ」を用いた治療

 

岡山大学病院が培ってきた外科の技術は若い世代にも引き継がれており、外科を目指す多くの医師が当院を志望しています。当院では、消化器外科(旧第一外科)、呼吸器・乳腺内分泌外科(旧第二外科)、心臓血管外科が合同で教育を行う「外科マネジメントセンター」を設置するなど、外科的環境をよりよくすることで、外科を志望する若い医師をバックアップしています。

当院の放射線科は、中国・四国地方で唯一の陽子線治療施設を有する津山中央病院と提携して診療を行っています(2018年9月時点)。放射線治療はデータベースで実施される領域ということもあり、遠隔地にいる医師であっても連携して診療を行えるような関係の構築に取り組んでいます。今後は、陽子線治療を受けている患者さんの画像診断を遠隔で行うといった遠隔診療の導入も計画しています。

CT(コンピューター断層撮影)で体内の病変を確認

2013年にIVRセンターを開設し、放射線科、循環器内科、脳外科、小児科といった複数の診療科でIVR(インターベンショナルラジオロジー)を盛んに行っています。こちらでは腎臓がんの凍結治療などの特殊な医療を提供していることもあり、関東地方や大阪から受診される患者さんが多くいらっしゃいます。

IVR…画像診断装置をみながら、カテーテルや針などの特殊な器具を挿入して行う治療。画像下治療。

総合受付窓口(岡山大学病院よりご提供)

各診療科に在籍するスタッフが充分に活躍できるよう、職場環境の整備に努めています。取り組みのひとつとして、2013年4月のIVRセンターの開設が挙げられます。

センター化することによって、当院の医師が充分に活躍できる環境が整い、各科の優れたスタッフが集まって岡山大学病院の強みを生かすことができるのではないかと考えて、当時の病院長と検討を重ね、開設に踏み切りました。さらに手術室も一気に20室増設しました。手術件数は飛躍的に増加し、現場の診療チームに参加するスタッフたちの意欲を引き出すことができたと実感しています。

特定機能病院に指定されている当院では、医療の発展に貢献することもミッションのひとつだと考えています。2018年9月現在では、岡山県内の6病院と連携して、研修医の教育や臨床研究のネットワーク化など、医療の効率化を目指した取り組みを進めています。

また、医療を発展させるためには、医師だけではなく優秀なPhD.(医学博士)を育てることも重要だと考えています。当院では、実習や講義などを通して臨床の現場を学生に知ってもらうといった学生教育に力を入れています。岡山大学大学院でも、2018年4月に「ヘルスシステム統合科学研究科」が新設され、医学と工学の連携(医工連携)の実体化を目指した取り組みが行われています。

特定機能病院…高度の医療の提供、高度の医療技術の開発及び高度の医療に関する研修を実施する能力などを備えた厚生労働省の指定する病院。

病院外観(岡山大学病院よりご提供)

私自身の体験からお話しすると、医学生時代の過ごし方は医師としてのキャリアにはあまり関係ないのではないかと思います。医学生時代の6年間は、医師として充実した時間を過ごすための準備期間のようなものです。もし進路に迷っていたとしても、実際に医師になってから自分が本当にやりたいことを見つければ、道は開けるのではないでしょうか。

大事であるのは、卒業後10年経ってからの10年間、つまり35歳からの10年間です。気力体力が充実しており、リーダーとして活躍していく時期になります。人生で一番よいときですから、それを踏まえて人生設計について考えてみてください。

私が病院長として求める人材は「腕のいい医者」です。深い知識と技術をもっていれば患者さんを助けることができますし、病院の発展にも欠かせない存在となります。

腕のいい医者になるためには、先にお話ししたように、ガツガツ勉強し過ぎて余裕をなくすよりも、学生時代にどこか抜けていたとしても「何だかこれ面白いな」と思えるものを見つけられればよいのではないでしょうか。私自身、初めから放射線科の医師を志していたわけではありません。しかし、IVRと出会ったことで、手術の実施が困難な肝細胞がんの治療を成功させ、それが契機となって大きなやりがいを感じるようになりました。

もちろん、初めから高い志をもって順調にキャリアを積む方も多いのですが、いったん面白い物を発見すると集中して打ち込めるような方もいます。後者のような人物こそ、かえってポテンシャルが高いのかもしれません。

岡山大学病院は、中国・四国地方の中核を担う病院として、また日本のリーディングホスピタルとして、地域の皆さまに医療を提供することがミッションであると考えてきました。患者さんには、「重い病気にかかったときは、もう一度岡山大学病院に診てもらいたい」と思っていただけるような病院を目指しています。ぜひ、これからも岡山大学病院を信頼していただければと思います。