院長インタビュー

地域の高度急性期医療を支え続ける明石医療センター

地域の高度急性期医療を支え続ける明石医療センター
戸部 智 先生

明石医療センター 心臓血管外科 院長

戸部 智 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年11月20日です。

兵庫県明石市に位置する社会医療法人愛仁会 明石医療センター(以下明石医療センター)は、1923年に陸軍病院として開設されました。戦後、国立明石病院となり、現在に至るまで、生命を維持することに欠かせない重要臓器の治療を中心とした、地域の高度急性期医療に貢献されています。

明石医療センターの取り組みについて、院長である戸部智先生にお話を伺いました。

明石医療センター 外観

当院は2001年3月に明石市医師会へと移譲され、明石医療センターとして病床数247床で新たなスタートを切りました。私は開設直後に心臓血管外科医として赴任しましたが、当時はまだ手術において重要な役割を担う麻酔科医も在籍しておらず、ゼロからの出発という状況でした。

2008年1月、建て替えを行い、新築移転と同時に電子カルテシステムを導入しました。その後、病床稼働率が上昇し、2009年3月には兵庫県で3番目の地域医療支援病院に認定されました。満床状態が続いたため兵庫県より40床の増床の許可をいただき、近隣の田畑胃腸病院(95床)と合併、2013年8月に南館を増築し、病床数は382床、1.5倍の規模まで拡大しました。高度急性期病院として邁進し、主に明石市内から多くの患者さまが受診されています。

1階エントランスホール

当院では、生命の維持に欠かせない臓器である循環器・呼吸器・消化器の診療を中心に行っています。それに加えて、小児周産期、総合内科医を中心とした救急医療といった領域を柱として、地域に密着した医療の提供に努めています。

循環器疾患に関しては「できることは何でもする」という姿勢で、臓器移植以外の診療には一通り対応しています。また、新しい医療機器を積極的に導入しており、今冬では急性心不全の治療に用いるIMPELLA補助循環用ポンプカテーテルの導入を予定しています(2018年8月時点)。

近年、循環器疾患の中でも、超高齢社会に向けて増え続けると予想されている心不全パンデミックへの対応が課題となっています。心不全の手術やCRT(心臓再同期療法)など、できる限りの対応を行った患者さまの治療を今後はどのように進めていくのかという問題については、一病院ではなく医療圏の中で解決していく必要があります。当院では、在宅医療を含めた地域連携を重視して対策を講じています。

明石医療センター 病棟

明石市の地域連携は歴史が長く、医師会を中心に、がんセンター、明石市民病院、明石医療センターといった地域の病院や診療所との医療連携を推進しています。

先にお話ししたように、たとえば慢性疾患のパンデミックの対策として、在宅医療を含めた地域連携が重要となります。明石市では、明石医療センターも含めた公的病院がチームをつくり在宅医療を支援しています。在宅療養している患者さまが急性疾患を合併した場合は地域包括ケア病棟で治療するなど、高度急性期、在宅医療、ポストアキュートといった医療を、地域連携を通じて実施します。

ポストアキュート…急性期治療を終え継続的な治療やリハビリテーションを要する状態。

医療職の教育として、当院は附属看護専門学校を有しています。そのため、今後の取り組みとなりますが、近隣の連携病院の研修を当院で引き受け、医療安全や病院感染対策などの研修を看護師に受けていただこうと考えています。看護師の入職時教育は、単科病院や小さな民間病院だけでは難しく、地域で連携して行うことが大切です。このように教育的な面における連携についても、外部の施設に参加していただけるように情報発信していきたいと考えています。

一般病棟病室(1床室)

2025年問題などといわれているように、日本では超高齢化社会への突入が見込まれています。明石市は全国平均と比べると高齢化率に若干の遅れがみられ、今後10年弱は急性期疾患が増え続けると予想されています。一方、臓器別にはもっと早く患者数が減少する領域もあるといった、相反する状況が想定されており、一部の病床の空きや極端な平均在院日数の低下が懸念されます。こうした時代の流れや地域のニーズに応じて、病床管理、病棟の機能変更などを行っていきたいと考えています。

病床管理をする際、一般的には病床数を抑えてサイズダウンする病院が多いのですが、当院では病床数を拡張するという判断をしたことが結果として地域のためになったと考えています。これまでの機能の維持と地域のさらなる発展に貢献し、地域完結型の病院を目指して取り組んでまいります。

カンファレンスの様子

当院では研修医の教育に力を注いでおり、特に総合内科医の採用を積極的に行っています。総合内科医を採用したことで内科の診療に幅と奥行きが出て、密度が上がってきたという印象があります。救急の対応や各専門診療科間の連携を強化する存在としても期待しています。また、医師の働き方改革の影響を受けて、研修先として専門診療科が選ばれにくい兆候がみられるため、総合内科医の採用により人材の確保につなげたいという狙いもあります。

当院に在籍する医師の多くは神戸大学の医局から派遣されています。総合内科医を目指す医師も集まり、医局からの派遣と独自採用の人数比はおよそ2:1となっています。

医師の採用にあたって、医学部学生や初期研修医などを対象とする勉強会「ホスピタリストカフェ」を開催しています。病院の訪問や見学率を活性化し、病院の情報や教育体制をできるかぎり提示していきたいと考えています。

1階ホスピタルモール

明石医療センターは、生命に直結する循環器、呼吸器、消化器疾患、小児周産期医療を中心に地域の急性期医療を担っています。そのためには24時間、365日体制の「断らない」医療が必要となります。昨今の医師の「しんどい」科離れは顕著ですが、当院では、全職種におけるタスクシフト、シェアーによる働き方改革を推進しています。社会の要請に応える医療職の育成が当院の使命です。

明石医療センターには、1923年に加古川第一陸軍病院が発足して以来の長い歴史があります。職員の中には国立病院だった頃から勤め続けている人もいますし、地域には当院で研修を受けられた開業医の先生方もいます。地域の方々も、当院のことを身近に感じて来られたのではないでしょうか。

明石で生まれ育ち生活している方が、健康と生命を預ける医療機関としてこの病院にかかったとき、「明石に住んでよかった」と言っていただけるような存在であり続けたいと思っています。

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  • 明石医療センター 心臓血管外科 院長

    戸部 智 先生

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