院長インタビュー

サイバーナイフでの治療と地域医療─つくばセントラル病院のシームレスな取り組み

サイバーナイフでの治療と地域医療─つくばセントラル病院のシームレスな取り組み
竹島 徹 先生

社会医療法人 若竹会 つくばセントラル病院 理事長

竹島 徹 先生

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この記事の最終更新は2018年12月11日です。

茨城県牛久市で地域医療の提供に尽力しているつくばセントラル病院は、2018年12月に開院30年を迎えました。循環器内科や整形外科を有するほか、腎センターでの透析治療を行うなど、地域に欠かせない病院のひとつになっています。また、サイバーナイフを導入したことで低侵襲な放射線治療の提供が可能になり、他県から受診される患者さんも多いと竹島徹先生はおっしゃいます。同院を開設し、理事長を務める竹島先生にお話を伺いました。

 

サイバーナイフ(つくばセントラル病院よりご提供)

当院では、患者さんにとって低侵襲な治療を提供するため、2012年8月にサイバーナイフを導入しました。サイバーナイフは放射線治療を行う医療機器のひとつです。腫瘍に対してピンポイントに放射線を照射できるため、腫瘍以外の組織にダメージを与えることが少なく、患者さんは横になったままリラックスして受けられることが特徴です。

当院では、肺がん肝がんの一部症例にも治療適応としていますが、主に転移性脳腫瘍の患者さんに対してサイバーナイフ治療を実施しています。地域の患者さんだけでなく、北関東にお住いの方々もご紹介という形で受診されることがあり、他県からの患者さんも受け入れられる環境を整えています。

がんを抱える方の高齢化を想定して、患者さんのQOL(生活の質)を考慮したよりよい医療が提供できないだろうかと考えたことが、サイバーナイフを導入したきっかけです。

がんの患者さんでご高齢の方に外科的治療を選択する場合、体力面やご家族のサポートなど、さまざまな配慮が必要になります。もちろん、患者さんのご希望や病状によっては外科的な治療や抗がん剤治療が適していることもあります。しかし、患者さんの負担がなるべく減らせるサイバーナイフによる治療は、幅広い世代の方々へ提供できることが特徴です。

 

つくばセントラル病院外観航空写真(つくばセントラル病院よりご提供)

つくばセントラル病院は、2000年3月に緩和ケア病棟を開設しました。がんの緩和ケアは、患者さんががんと診断されて治療を開始すると共に行います。患者さんは、体の痛みや倦怠感などのほかに、がんと診断されたことによる不安も経験するのではないかと思います。がんそのものに対する治療はもちろん、患者さんやご家族の心に寄り添ったケアの提供に努めています。

緩和ケア病棟の開設により、がん治療を受けている患者さんを心の面でもサポートすることが可能になりました。

当院では、開院当初から透析治療を提供してきました。現在は、院内にある腎センターのほかに、2008年9月に龍ヶ崎市で開設した「セントラル腎クリニック龍ヶ崎」でも、透析治療を行っています。取手や龍ヶ崎にお住いの患者さんが自宅の近くで透析治療を受けられるようにと、腎クリニックを開設しました。また、送迎バスを運行して、ご家族の付き添いが難しい方でも来院しやすくなるようにサポートしています。

当院は開設して間もない頃から、医療と介護の連携が今後はとても重要になると考え、院内でもその考え方が浸透するように話し合いを重ねてきました。たとえば、急性期の治療が一段落して在宅復帰に向けたリハビリテーションを行った後でも、在宅復帰に不安が残ることも考えられます。そういった時は主に介護老人保健施設などに入所して、施設での介護やリハビリテーションを受けてから在宅復帰という流れになると思います。

医療機関同士の連携ももちろん重要ですが、高齢化が進んでいる中で医療と介護の緊密な連携も重要な役割を果たしていくのではないでしょうか。一人ひとりの患者さんに対して、お看取りまでしっかりとサポートしていくことが大切だと思います。

社会医療法人若竹会でと社会福祉法人若竹会からなるセントラルグループは、病院だけでなく、介護老人保健施設や介護老人福祉施設などを複数運営しているため、法人内で急性期医療から回復期リハビリテーション、介護施設までスムーズな連携を取ることが可能です。

 

訪問神慮カンファレンスの様子(つくばセントラル病院よりご提供)

産婦人科では、お産と婦人科疾患に対する診療を行っています。スタッフの拡充により、妊婦さんを今まで以上に受け入れることができるようになりました。地域の妊婦さんだけでなく、生まれ育った牛久市で出産をご希望される方の「里帰り出産」にも対応できる環境を整えています。

出産、急性期医療、回復期リハビリテーション、介護で連携することで、シームレスな医療を地域に提供することが可能になっていると思います。

私がつくばセントラル病院を開院したきっかけは、一人の患者さんに十分な医療の説明をできていないというもどかしい経験からでした。別の病院に所属していた当時は、患者さんにがんであることや余命について、はっきりとは告げない風潮だったのです。そんな時、私が勤めていた病院に、地域の医療機関からのご紹介として知人が来院しました。胃がんが進行している状態で、力を尽くしても完治は難しいと考えられました。私はできる限りの治療を行って、地域の別の病院をご紹介しました。

医師となってから多くの経験を積んでいる最中でしたが、自分にとって身近な人が患者さんとして来院したその時、さまざまなことを考えました。その人が退院した後もできる限りのことをするために、転院先の病院には定期的に足を運びました。痛みに苦しんでいる患者さんに病名を告知できず、とてももどかしい思いばかりが募っていきました。

そのような経験を通して、もっと患者さんの心に寄り添った医療を提供することはできないのだろうか、難しければ自分でやってみればよいのだと思ったことが、つくばセントラル病院の開院のきっかけでした。

 

明るく開放感のある院内(つくばセントラル病院よりご提供)

開院後はさまざまな困難がありましたが、スタッフとよく話し合い、よりよい病院を目指して取り組んできました。とくに病院を支えてくれている看護部とは、これから実施していきたいことや目標を細かく共有しています。

当院がさまざまな指定医療機関の指定を受けることができたのも当院のスタッフが尽力してくれたからです。今後も理想の病院を目指してスタッフ一同で努力を重ねていきます。

 

 

地域の高齢化が始まり、今後は急性期医療から介護の分野まで充実した医療はもちろん、より緊密な連携の必要性が増してきます。当院は急性期医療から回復期リハビリテーションの提供、地域包括ケア病棟での治療、介護までの連携をスムーズに行うことができます。一人ひとりの患者さんと向き合い、優しく丁寧な診療を重ねていくことで、地域の皆さんが安心して生活できる地域づくりに貢献していきたいと思います。

専門性を極めることに重きを置く若手医師が多くみられます。その分野において深い知識と磨かれた技術力を有することも重要ですが、市中病院では自分の専門分野だけの診療を続けていくことが難しい場面も多くなると思います。当院で働いている医師も、自分の専門分野を極めながら、市中病院の医師として風邪や肺炎などの内科診療を行う機会があります。患者さんを総合的に診られるように、さまざまな分野の知識を身に着けていくことも大事であるということを忘れないでください。