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乳がん治療・手術の基本方針−温存と全摘はどのように選択するの?
日本において、1975年以降、乳がんの罹患率は増加し続けています。乳がんに対する治療基本的な方針は、手術でがんを切除し、根治を目指すことですが、近年では、患者さんの身体的な負担が少ない手術を選択...
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乳がん治療・手術の基本方針−温存と全摘はどのように選択するの?

公開日 2019 年 01 月 11 日 | 更新日 2019 年 01 月 23 日

乳がん治療・手術の基本方針−温存と全摘はどのように選択するの?
服部 裕昭 先生

国家公務員共済組合連合会 立川病院 乳腺外科 部長

服部 裕昭 先生

的場 恵理 先生

国家公務員共済組合連合会 立川病院 形成外科 医長

的場 恵理 先生

目次

日本において、1975年以降、乳がんの罹患率は増加し続けています。乳がんに対する治療基本的な方針は、手術でがんを切除し、根治を目指すことですが、近年では、患者さんの身体的な負担が少ない手術を選択するという考え方が浸透してきました。

乳がんの手術において、乳房の温存と全摘はどのように選択するのでしょうか。国家公務員共済組合連合会 立川病院の服部裕昭先生と、的場恵理先生にお話を伺いました。

乳がんのステージ

しこりの大きさや広がりなどによって分類される

乳がんのステージ(病期)は、腫瘍の大きさや乳房内における広がりの度合い、リンパ節への転移状況、他臓器への転移の有無により分類されます。

しこりの大きさ

乳がんのステージに関してご注意いただきたいことがあります。

Ⅰ〜Ⅲ期は主に腫瘍の大きさでリスクが定められていることから、0期についても同様に「I期よりも軽いがんだから、乳房温存できる」と認識されている方も多い現状です。

しかし、0期は「病理検査の結果、ほかの臓器に転移しないと判断された非浸潤がん」を指しており、腫瘍の大きさはさまざまです。そのため、乳房を温存できるか否かは、ケースによります。このことを、ぜひ知っていただけたら嬉しいです。

乳がんの治療における基本方針とは?

基本的には手術によって根治を目指す

乳がんの治療は、基本的に外科的治療(手術)が中心になります。

これまで乳がんの手術は、広く切除することで根治を目指す方法が主流でした。しかし、広範囲な切除が必ずしも予後をよくするわけではなく、また、広範囲な切除によるデメリット(上肢の運動障害、むくみなど)が術後の生活に大きく影響するという課題がありました。

近年は、手術によって根治を目指しながらも、低侵襲(身体的な負担が少ない)な手術を選択するという考え方が浸透してきました。さらに手術の前後には、個々のリスクに応じて、薬物治療(抗がん剤治療、ホルモン療法、分子標的治療など)や放射線治療を組み合わせて、乳がんの根治を目指します。

審美的な面にも配慮して治療方針を計画する

乳がんの治療では、審美的な面にも配慮する必要があります。

患者さんは、手術によって自身の乳房や体がどのように変化するのか、日常生活にどのような影響が出るのかといった不安を抱えていらっしゃいます。そして、がんの根治を目指すためにできるだけ広い範囲で切除したいけれども、乳房を失うのは怖い、という気持ちのせめぎ合いが起こるのです。

このような側面を考慮し、乳がんの治療選択の際には、患者さんの希望を汲み取りながら、実際に治療の選択肢を提示し、一緒に方針を立てています。

手術で乳房を切除した場合には、乳房再建という選択肢もあります。(乳房再建について、詳しくは記事3『乳房再建はどのように行うの?−インプラント(人工乳房)・自家組織による再建』でご説明します。)

乳がんの手術−温存と全摘はどのように選択するの?

乳がんの手術とは、主に、乳房の手術+リンパ節の手術を指します。手術の種類は、乳房温存と乳房全摘の2つに大別できます。

乳房温存手術は、乳がん自体の広がりが3cm以下で、患者さんが乳房温存を希望される場合に選択することがあります。温存を選択した場合、術後の残存乳房への放射線照射と組み合わせて温存手術を行います。術後の放射線照射を省略すると、病理学的にがんは取りきれたとしても、乳房内の局所再発の確率が上がるといわれています。そのため放射線照射ができない以下のようなケースでは、全摘を選択することがあります。

  • 過去に放射線照射歴がある
  • 放射線照射を拒否する
  • 膠原病である

などがあります。

また、リンパ節にも転移がある場合には腋窩のリンパ節を広範囲に切除します。一方、術前の検査で転移がないと診断された場合には、センチネルリンパ節注1生検を行うことで、腋窩リンパ節に関しても縮小手術を選択し、患者さんの身体的な負担をできるだけ抑えるよう配慮します。

やむをえず全摘を選択する場合には、患者さんの希望に応じて、乳房再建を検討します。(乳房再建については、こちらの記事をご覧ください。)

注1 センチネルリンパ節・・・乳房内から乳がん細胞が最初にたどりつくリンパ節

乳がん患者さんの診療において心がけていること

患者さんの社会的背景や大切にされている考え方を考慮する

立川病院 先生

乳がんは40〜60歳代で発症することが多く、仕事や子育てをしながら手術に臨むケースも少なくありません。そのような場合、仕事を継続できるのか、子育てをどう調整するのかといった社会的な影響を考慮して、治療を進める必要があります。

乳がんは、ほかのがんに比べて診断されてから手術までの期間が短い傾向にあります。そのため、患者さんは手術までの短い期間でさまざまなことを考えなくてはなりません。たとえば、乳がん自体のこと、余命、手術、仕事や家族のことなどがありますが、患者さん一人ひとりお悩みは異なります。そのため、診療における会話のなかから、その方が大切にされている考え方を汲み取り、希望に沿う形で治療できるよう心がけています。

積極的にご家族にもかかわっていただく

手術前後の診察には、ご家族にも同席していただくようにしています。ご家族にも積極的にかかわっていただくことで、治療への理解を深め、また、患者さんがひとりで悩みや不安を抱え込むことを避けるためです。

このような取り組みによって、患者さんの心理的な負担をなるべく減らし、ご家族を含めて一緒に病気を乗り越えることができれば理想的だと考えています。

 

乳房再建 (服部先生・的場先生)の連載記事

東海大学医学部を卒業後、慶應義塾大学病院外科、東京歯科大学市川総合病院外科などを経て、2001年より国家公務員共済組合連合会立川病院 外科へ。2017年より同院 乳腺外科部長を務める。日本乳癌検診制度管理中央機構において、教育・研修委員会マンモグラフィ部門読影委員や教育・研修委員会教材ワーキンググループ委員会委員などを歴任し、マンモグラフィ読影教材「mhFiles®」の開発を主導するなど、教育にも力を注ぐ。

慶應義塾大学形成外科学教室入局後各大学病院、センター病院、がんセンターでの臨床経験を経て平成26年4月より現職。マイクロサージャリーの技術を持ち、小腫瘍、外傷治療から再建外科まで幅広く診療を行っている。特に再建外科においては、生命を救われた患者さんのその後の人生を豊かに過ごすお手伝いをするための手術と位置づけ、一人ひとりに応じた機能的、整容的再建を提案している。現在一児の母。子育て世代にも寄り添う医療を心がけている。

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