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乳房再建はどのように行うの?−インプラント(人工乳房)/自家組織による再建

乳房再建はどのように行うの?−インプラント(人工乳房)/自家組織による再建
服部 裕昭 先生

国家公務員共済組合連合会 立川病院 乳腺外科 部長

服部 裕昭 先生

的場 恵理 先生

国家公務員共済組合連合会 立川病院 形成外科 医長

的場 恵理 先生

目次
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近年、乳がんの治療において、患者さんの身体的負担が少ない手術を選択するという考え方が浸透しています。しかし、実際には乳房温存が難しいケースもあり、そのようなときには乳房再建を検討します。2013年には、一部を除くインプラント(人工乳房)による乳房再建が保険適用となり、選択の幅が広がりました。

乳房再建の方法について、国家公務員共済組合連合会 立川病院の服部裕昭先生と、的場恵理先生にお話を伺いました。

乳房再建とは?

治療によって失われた乳房を手術で再び形づくること

乳房再建とは、乳がんなどの治療によって失われた乳房を、手術で再び形づくることを指します。

乳房再建は、整容的な目的で行われます。一方で、機能的な障害がないからといって、患者さんが乳房再建を遠慮する必要はありません。乳房を失い、さらに傷やへこみができることは、女性にとって大きな精神的苦痛を伴い、また、なかには、左右の体幹のバランスの異変を感じられる方もいらっしゃいます。

現在(2018年11月時点)、乳房再建手術は、一部の自由診療を除き、そのほとんどを保険診療で行うことができます。もちろん、再建手術を持ってしても完全に左右対称・元どおりの乳房をつくることは困難ですが、再建方法の工夫は活発に行われています。

乳房再建の名称−再建の時期と回数による違い

乳房再建の方法には、再建を行うタイミング(乳がんの手術と同時に行うか)と、再建手術の回数(何回にわけて再建を行うか)によって、それぞれ名称がついています。

一次再建(乳がんの手術と同時に行う)/二次再建(時期をあらためて行う)

「一次再建」とは、乳がんの手術と同時に再建手術を行う方法です。一方、「二次再建」とは、乳がんの手術をいったん行い、時期をあらためて再建する方法を指します。

このように、一次再建と二次再建は、乳がんの手術と同時に行うかどうかが違います。

再建の時期については、乳腺外科の担当医と相談のうえ判断します。再発の可能性がある方や、術後の放射線治療が予定されている方の場合、まずは乳がんの治療二次再建をおすすめすることがあります。

一期再建(1回で再建する)/二期再建(2回にわけて再建する)

「一期再建」とは、1回の手術で乳房再建を完了する方法です。一方、「二期再建」は、2回にわけて乳房再建の手術を行う方法を指します。

乳房再建はどのように行うの?−インプラント/自家組織

乳房再建には、インプラント(人工乳房)による再建と、自家組織による再建があります。

インプラント(人工乳房)による乳房再建

乳房全摘を行った場合、乳輪乳頭を含む皮膚、皮下組織、乳腺が欠損します。そのため、失った皮膚を拡張してから、インプラントによる再建を行います。

インプラントによる再建についてご説明します。

まず、エキスパンダー(組織拡張器)を大胸筋の下に入れます。エキスパンダーを挿入したあとは、およそ2週間ごとに通院していただき、針を刺して生理食塩水をエキスパンダーに注入することで、徐々に皮膚と大胸筋を拡張します。通常、皮膚を十分に伸ばし終わってから3か月以上経過した段階で、インプラントに入れ替える手術を行います。

このように、インプラントの場合は手術が2回必要になります。通常、再建手術には1〜2時間ほどかかり、術後は1〜2週間ほど入院していただきます。

エキスパンダー

自家組織による乳房再建

自家組織、つまり患者さんの体の一部を使い、乳房を再建する方法です。自家組織のため、乳房の質感(柔らかさ、体温)や形(垂れた感じなど)を再現しやすいというメリットがあります。

前提として、乳房に移植する組織は血が通っている必要があります。あらゆる再建手術で用いられる血の通っている組織の塊を「皮弁」といいます。

再建の方法は、移植した皮弁の血流を取得する方法により、「有茎皮弁(主な栄養血管を切り離さずにA点からB点に移動する)」と「遊離皮弁(主な栄養血管を切り離してA点から遠いB点に移動し、B点付近の別の血管につなげることで血流を確保する)」にわかれます。

乳房再建に用いる皮弁の種類は多岐にわたりますが、本項では一般的な2つの方法についてご説明します。

広背筋皮弁法(有茎皮弁)

広背筋皮弁法とは、背中の筋肉(広背筋)、皮膚、脂肪に血管をつけた状態の組織を胸に移植して、乳房をつくる再建方法です。一般的な手術時間はおよそ5〜6時間、入院期間は2週間ほどです。

乳がん切除

古くからあらゆる再建に用いられる皮弁であり、血流が安定しているというメリットがある一方、有茎であるがゆえに整形に限界があり、背中に長い傷がつく、皮弁をとった部分に違和感が残るといったデメリットもあります。この違和感は「板が入っているような感じ」と表現されることが多いです。

腹直筋皮弁法(有茎皮弁)

腹直筋皮弁法(有茎皮弁)とは、片側のお腹の筋肉の頭側(みぞおちあたり)を軸に、筋肉とその上の皮膚・皮下脂肪を胸に移植して乳房をつくる再建方法です。一般的に、手術時間はおよそ10〜12時間、入院期間は2〜4週間ほどかかります。

乳がん切除・穿通枝皮弁

腹部の傷は30〜40cmと大きいですが下着に隠れやすい位置であり、また、腹部の皮膚・皮下脂肪は質感が再現しやすいです。さらに、広背筋皮弁法に比べて皮弁をとった部分の違和感が少なく、皮膚の色がより乳房に近いというメリットがあります。一方、デメリットとしては、手術時間や入院期間が長い、有茎皮弁であるため整形に限界があること、有茎皮弁だがこの場合の栄養血管である内胸動静脈は血流ややや不安定であること、さらに、広背筋と異なり腹直筋を全幅で採取すると腹壁ヘルニアが起こる可能性が高い、といった点が挙げられます。

穿通枝皮弁法(深下腹壁動脈穿通枝DIEP)(遊離皮弁)

穿通枝皮弁法(遊離皮弁)とは、腹部の皮膚・皮下脂肪とそれを栄養する血管とその周囲にある最低限の筋肉だけを抜き出し、一度栄養血管である深下腹壁動静脈を切り離して胸にある別の血管に血管吻合することで、お腹の組織を胸へ移植して乳房をつくる再建方法です。

皮膚切開法は有茎腹直筋皮弁と同様ですが、一度血管を切り離し、再吻合を顕微鏡下に行う必要があること、腹直筋をできるだけ温存するために1mm前後の穿通枝を抜き出す技術が煩雑であることが特徴です。腹直筋皮弁法より、さらに手術時間は延長します。

腹直筋皮弁法(有茎皮弁)

筋肉組織をとらないため身体機能への影響が少なく(ただし、腹壁ヘルニアの可能性はある)、質感を再現しやすいというメリットがあります。一方、遊離皮弁であるため、術後頻繁なチェックが必要となり、場合によってはやむなく皮弁壊死してしまう可能性もあります。また、手術時間や入院期間が長いことがデメリットといえます。

再建方法はどのように決めるの?

患者さんが重視していることを考慮して検討する

記事1『乳がん治療・手術の基本方針−温存と全摘はどのように選択するの?』でお話ししたように、患者さんのお悩みは人それぞれです。そのため、患者さんが重視されていることを考慮し、再建方法を検討することが大切です。

体への負担をできるだけ少なくしたい、傷を増やしたくない、乳房の質感にこだわりたい、早く社会復帰したい(自宅に戻りたい)といった希望によって、選択する再建方法も変わります。さらに、患者さんが体力的にその手術に耐えうるかを検討し、最終的に方法を決定します。

傾向として、異物を体に入れることに抵抗を感じる方や質感にこだわる方は、インプラントではなく自家組織を希望されることが多いです。

乳房再建のメリット・デメリット

メリット:患者さんの心理的負荷を軽減できる

がんの根治を目指すためには、乳房を温存することが難しいケースがあります。そのようなとき、乳房再建という選択肢があることで、治療を前向きに捉えられる可能性があります。一方、乳房温存は可能だが再発を避けたいと考える患者さんの場合、がんに対する恐怖をできる限り和らげるために、全摘+乳房再建を選択するという方法もあります。

このように、乳房再建は、乳がんの治療で乳房全摘・部分切除を行う患者さんの心理的負荷を軽減し、治療をスムーズに進めることに寄与するという点で、大きなメリットがあります。

デメリット:術後の痛みが強まる可能性がある

乳房再建にはデメリットがほぼないと考えています。強いて挙げるなら、再建のためにエキスパンダーを入れた際、患部が圧迫され、術後の痛みが多少強まる可能性がある点はデメリットといえます。それぞれの術式に対するメリット、デメリットは先に述べた通りです。

乳房再建に関する立川病院の特徴

乳腺外科と形成外科のスムーズな連携

当院は、乳腺外科と形成外科がスムーズな連携を図っています。たとえば、乳房再建が必要になると想定される乳がん患者さんに対して、できるだけ考える時間を設けるために、形成外科から早めに説明を行います。また、乳房温存を予定されている方が選択肢のひとつとして説明を聞きたいと希望された場合にも、説明を行います。

説明を受けることで乳房再建を具体的にイメージできますし、きちんと選択肢を持って治療に臨むことが可能になります。

乳房再建を考えている方へのメッセージ

服部裕昭先生より

 

服部先生

まずは早い段階で説明を受け、乳房再建を治療の選択肢のひとつとして考えていただきたいです。がんの状況をふまえて形成外科できちんと説明を受けることで、ご自身に合った再建方法が選択できるはずです。

的場恵理先生より

的場先生

あらゆる再建のなかで、乳房再建は、審美性のみを追求して行う数少ない手術です。これゆえに乳がん患者さんのなかには、再建を遠慮する方もいらっしゃいます。

しかし、主たる目的が審美性の追求だとしても、乳房再建を遠慮する必要はありません。乳房を失うということは、審美性にとどまらず、日常生活にも支障をきたします。たとえば、大衆浴場(温泉など)を利用しづらい、お孫さんと一緒にお風呂に入れない、前の開いた服を着られない、体のバランスがとりにくくなるなど、さまざまな障害が生じる可能性があります。

そのようなとき、乳房再建を行うことで日常生活を楽しめるとしたら、大きな意義があるでしょう。さらに、過去に乳がんの手術を行った方でも、いつでも乳房再建を検討することができます。がんを治療によって乗り越えた方々が、さらに前向きに生きていくための方法のひとつとして、乳房再建を念頭に置いていただけると嬉しいです。