院長インタビュー

地域医療のニーズを汲み取り、地域医療連携を推進―さぬき市民病院

地域医療のニーズを汲み取り、地域医療連携を推進―さぬき市民病院
德田 道昭 先生

さぬき市民病院 院長

德田 道昭 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年01月22日です。

香川県さぬき市にある「さぬき市民病院」は、救急搬送の受け入れから訪問診療まで、地域に必要とされる医療を幅広く提供しています。今回は、さぬき市民病院の診療科や、地域包括ケアシステムの取り組み、そして同院が考える「かかりつけ医」の重要性について、事業管理者と院長を兼任されている德田 道昭先生にお伺いしました。

さぬき市民病院 外観

さぬき市民病院 外観

当院は1951年に、大川病院として開院しました。開院当時の診療科は、内科、外科、放射線科のみでしたが、地域の医療のニーズに応えることができるように増科を行うなど、病院としての機能を徐々に拡充していき、現在に至ります。2002年には、町の合併によってさぬき市が誕生し、名称を「大川病院」から「さぬき市民病院」へ変更しました。その後、かねてから改築を求める声が院内外からあがっていたことや、病院の老朽化が進んだこともあり、2011年に改築工事を行い、新病院となりました。

私は2006年に、当院の院長として就任しました。就任後は、旧病院にあった精神科病床の廃止、職員の大量退職、回復期リハビリテーションを促進するための病床の設置、病院の改築、地域包括ケア病棟の設置など、さまざまな問題に直面しましたが、その都度、職員と共に知恵を出し、試⾏錯誤を繰り返しながら困難に⽴ち向かってきました。逆に、このような経験を通じて、強固になった職員たちの団結⼒をいかし、現在ではさまざまな場⾯でチーム医療を展開しています。

特に、当院では、地域医療連携室や在宅療養支援室などを備え、地域医療の促進に取り組んでいます。この取り組みによって、さらに周辺医療機関や福祉施設との連携が効率化され、より充実したものになればと考えています。

糖尿病センターの診療の様子
糖尿病センターの診療の様子

当院では、地域に必要とされる医療を幅広く提供できるよう、内科、外科、眼科、産婦人科、脳神経外科など、幅広い診療科を備えています。そのなかでも、特に大川医療圏といわれる二次保健医療圏でニーズがあると感じている診療科をご紹介します。

整形外科では、骨折捻挫などのけが、腰痛、関節痛、脊椎の病気などの診療を行っています。また、リウマチ科も設立しています。リウマチの治療法は近年進化を遂げており、生物学的製剤や白血球除去療法などの治療法を積極的に取り入れています。整形外科とリウマチ科は、診療科のなかでも、この地域の高齢者の方々からのニーズが特に高いと感じていたので、スタッフを増員するなどの取り組みを行っています。

香川県は2014年に、糖尿病受療率が全国2位となった、糖尿病患者さんが多い県です。当院の内科にある糖尿病センターでは、この状況を重く捉え、糖尿病に関する知識を持ったスタッフでチームを組み、一人ひとりに合わせた治療方針にそって、診療を行っています。このチームには、日本糖尿病学会認定糖尿病専門医、看護師、薬剤師、管理栄養士など、多職種が属しています。

また、糖尿病関連の学会や研究会にも積極的に参加しています。

褥瘡(じょくそう)回診の様子
褥瘡(じょくそう)回診の様子

地域包括ケアシステムとは、高齢者の方が住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを全うすることができるように、地域で包括的な支援やサービスを行うことです。

当院では、地域包括ケアシステムに取り組むために、地域包括ケア病棟を開設しました。地域包括ケア病棟とは、急性期病棟で治療を受けたあと、在宅療養に移行するまでの期間を過ごす病棟です。患者さんがご自宅に戻るまでに、術後の不安などを取り除けるよう、リハビリテーションを行い、体力をつけていただいています。

また、訪問診療、訪問看護、訪問リハビリテーションも行っています。具体的には、けがや病気によって通院が困難な方のご自宅へ、医師や訪問看護スタッフが定期的に訪問して、診療、治療、リハビリテーションなどを行っています。これらを円滑に行えるように、在宅療養支援室を当院のなかに設置しています。在宅療養支援室には訪問専従の看護師を配属しており、患者さんの容体など、さまざまな情報を集約して管理しています。訪問専従の看護師がいることによって、医師や訪問看護スタッフに患者さんの情報が共有しやすくなり、急変時にもスムーズな対応が可能となりました。

皆さんには、ぜひご自宅付近の診療所やクリニックで、「かかりつけ医」をもっていただきたいと考えています。

かかりつけ医とは、病気になったときや、体の調子がおかしいな、と思ったときに気軽に通えて相談できる医師のことです。病状によっては、かかりつけ医から適切な医療機関の診療科を紹介することもあり、心強い存在といえます。

当院は、地域の医療をさらに効率化し、よりよいものにするためにも、地域医療連携が必要だと考えています。たとえば、体調を崩してしまったら、まずかかりつけ医を受診していただき、病気や初期症状などに関する診察を受けます。CTやMRIなどの画像検査が必要だと考えられる場合には、かかりつけ医が検査設備のある病院に紹介や予約を入れ、患者さんは紹介された医療機関を受診します。検査や入院治療などを行ったあと、医療機関からかかりつけ医のもとへと患者さんを逆紹介することもあります。このような地域医療連携を目指しています。

当院は救急医療、在宅医療も行っており、医師や職員は潤沢ではない状況です。しかし、地域の皆さんがかかりつけ医を持ち、風邪などの日常的な病気の診療はかかりつけ医のもとで受けていただければ、人手不足という問題も避けられると考えています。このように、地域医療の役割をしっかりと分担していくことには多くのメリットがあります。体調を崩したときのためにも、健康に関することを何でも気軽に相談できるかかりつけ医を見つけておきましょう。

さぬき病院 院長写真

以前の当院は寝たきりのお年寄りの患者さんがたくさん入院されているような病院であり、今もそのようなイメージをお持ちの方がいらっしゃるのではないかと思います。しかし現在の当院は、救急搬送の受け入れから在宅療養まで、幅広い医療を提供する病院となりました。この記事を通して、皆さまにはぜひ現在の当院を知っていただけたら幸いです。

これまで私たちは職員一丸となり、一生懸命走ってきましたが、公立病院とは、私たちだけではなく、地域の方々も一緒になって育てるものだと考えています。この地域にとって、当院はどうあってほしいのかなどを、皆さんの間で議論していただいたり、声を掛けたりしてくださると嬉しいです。

当院は引き続き、この地域の方々の医療と健康を支えてまいりますので、今後も何卒よろしくお願いいたします。

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