疾患啓発(スポンサード)

乳がんの治療の種類-治療後の注意点とは?

乳がんの治療の種類-治療後の注意点とは?

日本鋼管福山病院 乳腺外科 専門部長

藤井 清香 先生

日本鋼管福山病院 乳腺外科 部長 椎木 滋雄 先生

日本鋼管福山病院 乳腺外科 部長

椎木 滋雄 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

乳がんの治療には、主に手術、放射線療法、薬物療法(化学療法・ホルモン療法・分子標的治療)があります。このうち、どの治療を行うかは、どのように決定されるのでしょうか。また、治療後に、患者さんはどのようなことに注意すべきなのでしょうか。

今回は、日本鋼管福山病院の藤井 清香先生に、乳がんの治療の種類や治療後の注意点などについてお話しいただきました。

乳がんの治療の種類とは?

乳がんが確定した場合にはがんの性質や広がりを確認していく

乳がんであることが確定した場合には、がんの乳房内での広がりを確認する広がり診断を行ったり、全身状態のチェックや他臓器への転移の有無を調べます。乳がんの性質を調べるための検査も行っていきます。これらの診断を行いながら、患者さんのご希望にも配慮し、治療方針を決めていきます。

広がり診断は、乳房を可能な限り残す温存手術を行うときに、切除範囲を明らかにするために行います。また、画像検査によって肺や肝臓、骨などの遠隔臓器に転移がなければ、乳がんの根治を目指し、初期治療を行います。

初期治療では手術・放射線療法・薬物療法を組み合わせた治療を

乳がんの初期治療には、主に手術、放射線療法、薬物療法(化学療法・ホルモン療法・分子標的治療)があります。これらを組み合わせながら治療を行っていきます。

遠隔転移を認める場合には薬物療法中心の治療を行う

乳がんが進行し、肺や肝臓、骨などへの遠隔転移を認める場合には、がんの根治を目指すのではなく、がんの進行を抑えたり和らげたりする治療を行います。具体的には、生活の質を保ちながらがんと共存することを目的として、薬物療法中心の治療を行います。また、必要に応じて手術や放射線療法を行うこともあります。

乳がんの手術の種類

乳房部分切除術と乳房全切除術がある

乳がんの手術には、大きく分けて乳房部分切除術と乳房全切除術があります。

乳房部分切除術とは、病変部分を中心に、部分的に乳房を切除する手術方法です。一方、乳房全切除術とは、病変を含め、乳房をすべて切除する手術方法です。

手術

乳房全切除術が選択される場合

2つ以上のがんのしこりが同じ側の乳房の離れた場所にある場合や、がんが広範囲に広がっている場合、放射線療法が行えない場合には、原則として部分切除の適応にはなりません。そのため、上記のようなケースでは、乳房全切除術を行います。

また、患者さんの中には、乳房部分切除術の適応があったとしても、乳房全切除術を希望される方もいらっしゃいます。そのような場合にも、乳房全切除術を行います。

リンパ節へ転移がある場合にはリンパ節郭清も

また、リンパ節への転移が認められる場合には、リンパ節を切除するリンパ節郭清を行うこともあります。

乳房再建とは?

乳房再建とは、手術によって失った乳房を再建する手術です。当院では、乳房の再建をご希望の方には、乳房再建のメリット、デメリットをお伝えした上で、乳房再建手術を行う病院へとご紹介させていただきます。

再建手術のメリットは、見た目で乳房の膨らみを実感できる点であると思います。一方、デメリットのひとつとして、手術を複数回行わなくてはいけないことが挙げられます。

当院では、これらをきちんとお伝えした上で、再建手術を行う病院と連携するようにしています。

乳がんの手術後の注意点

郭清手術後にはリンパ浮腫が起こる可能性がある

乳がんの手術のなかでも、がんが転移したリンパ節を切除する郭清手術の術後には、リンパ浮腫が起こる可能性があります。リンパ浮腫とは、リンパの流れが滞ることで生じるむくみのことです。このリンパ浮腫を予防するためには、体重のコントロールが大切です。

ただし、リンパ浮腫が起こらなければ、郭清手術後であっても特に制限はありません。運動もしていただいて構いません。筋力をあまり落とさないことも大切なので、無理のない範囲で運動していただきたいと思います。

ただし、郭清手術を行った方の腕が赤く腫れて発熱するようなことがあれば受診を検討してください。

乳がんの薬物療法とは?

根治を目指す場合と、延命や生活の質の向上を目指す場合がある

薬

乳がんの薬物療法には、手術の前にがんを小さくしたり、手術やほかの治療を行った後に再発・転移を防いだりする目的があります。また、根治目的の手術が困難な進行がんに対して、延命および生活の質を向上させる目的もあります。

薬をどのように組み合わせるかは、がんの広がりや性質、病理検査の結果などによって検討されます。

なお、根治を目指して行う術前術後の初期治療の化学療法と、生活の質の向上と延命を目的に行う転移・再発時の化学療法では、使用する薬剤の投与量、投与間隔が異なる場合があり、個別の状況に合わせて検討します。

当院の乳がんに対する薬物治療は、化学療法に特化した薬剤師とともに、効果が証明されているエビデンスにもとづき行っています。

乳がんの薬物療法の種類

乳がんの薬物療法の種類には、主に、化学療法、ホルモン療法、分子標的療法があります。

化学療法

いわゆる「抗がん剤」を用いた化学療法は、ほぼすべての乳がん患者さんに効果が期待できます。

ホルモン療法

ホルモン療法は、乳がんの中でも、女性ホルモンの影響を受けてがんが増殖するホルモン受容体陽性の乳がんの患者さんに効果が期待できます。なお、ホルモン療法の対象となる患者さんは、乳がん患者さん全体の約70〜80%です。

分子標的療法

分子標的療法は、がん細胞特有の分子を抑える効果があり、副作用が比較的少なくがんを抑制することができます。たとえば、HER2タンパクやHER2遺伝子を過剰にもつHER2陽性乳がんに対しては、効果が期待できる分子標的療法の薬がすでに登場しているため、この薬による治療が有効となるでしょう。

乳がんの薬物療法による副作用と対策

髪が抜ける、皮膚の色が変化する、吐き気など

乳がんの薬物療法による副作用には、脱毛、皮膚の色の変化、爪の変化、吐き気などがあります。

脱毛に関してお話すると、特に初期治療で抗がん剤を使用すると、髪が抜けることが多いです。このような場合には、ウイッグを検討していただきたいと思います。現状、さまざまなウイッグがでているので、自分にあったものを見つけていただくのがよいでしょう。

また、皮膚の色が変化することによって、顔色が黒ずんだりシミのようなものができたりすることもあります。看護師がそれらを隠すメイクの仕方をお伝えできることもあるので、気になる場合には、看護師にご相談いただくのがよいでしょう。

吐き気は、効果の高い吐き気止めの薬が登場しているので、薬の服用によって症状の軽減が期待できます。

乳がんの治療後に心がけてほしいこと

肥満は乳がん再発のリスクとなるので注意を

肥満は、乳がんの再発のリスク因子になるといわれています。そのため、当院では、乳がんの治療後には、生活習慣や栄養の指導によって、肥満をコントロールするようお伝えしています。

術後の再発・転移を調べる検査も負担のかからないものを

当院は、術前の検査と同様、術後もなるべく体にも経済的にも負担のかからない検査を目指しています。病状等を考慮して、より負担が少なく有効な検査を行っています。

先生からのメッセージ

科学的なデータを考慮しながら患者さんとともに治療に取り組む

乳がんと診断されると、さまざまな不安が押し寄せてくると思います。また、治療について疑問をもつこともあるでしょう。ひとりで考えこむことなく、ご家族や私たち医療スタッフに話してほしいと思います。話すだけで気持ちが軽くなることもありますし、不安の原因がわかることもあるからです。

当院は、患者さんのご希望や価値観などを考慮し、患者さんと一緒に治療法を検討していく姿勢を大切にしています。科学的なデータを最大限尊重しながら、患者さんそれぞれに適した治療を実践していきますので、不安を感じることなく来院いただきたいと思います。