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顔に堪えがたい痛みが起こる─三叉神経痛とはどんな病気?

顔に堪えがたい痛みが起こる─三叉神経痛とはどんな病気?
田附興風会北野病院 脳神経外科主任部長(脳卒中センター長併任)  京都大学医学部臨床教授 岩崎 孝一 先生

田附興風会北野病院 脳神経外科主任部長(脳卒中センター長併任)  京都大学医学部臨床教授

岩崎 孝一 先生

目次
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三叉神経痛は、顔の感覚をつかさどる「三叉神経」が血管などによって圧迫されることで、突発的に顔面や口の中に激痛が起こる病気です。虫歯や頭痛などの痛みと間違えられやすい病気ですが、症状の特徴やMRI検査の結果などから正しく診断することが可能です。

今回は三叉神経痛の原因や症状、診断の要点や治療法などについて、北野病院・脳神経外科の岩崎孝一先生にお話を伺いました。

三叉神経痛とはどんな病気?

顔の表面に激痛が走る病気

三叉神経痛とは、左右どちらかの顔面や口の中などに、突発的に鋭い痛みが走る病気です。重症になると、たとえば口の中に食物を入れたり顔にエアコンや扇風機の風が当たったりするだけでも電撃痛が走るため、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

50代以降の女性に多い

三叉神経痛を発症しやすい体質などは特にありませんが、発症しやすい年齢のピークは50代以降で小児や若い方には少ない病気です。また、性別では、女性が男性に比べておよそ1.5倍~2倍多いといわれています。

三叉神経痛の原因について

三叉神経痛の原因

三叉神経に血管が接触、圧迫して痛み「三叉神経痛」が起こる

痛みの原因は、顔の表面の痛む所ではなく脳の深いところにあることが分かっています。三叉神経は顔の感覚をつかさどる神経で、脳の中心部にある脳幹から分かれて顔面に出てきます。この脳幹から分かれる部位で、神経と脳の表面の血管が接触することで三叉神経痛が起こります。

原因は血管の動脈硬化

三叉神経のそばを走る血管は通常の場合、三叉神経に接触しても強い圧迫を引き起こすことはありません。しかし、加齢に伴い血管に動脈硬化が始まると、血管は硬くなり蛇行します。蛇行により血管の触れた部分が強く圧迫されると、神経に脱髄(だつずい)という変化が起こり異常な電気の回路ができて、三叉神経痛が発症するとされています。

動脈硬化…血管の内側にコレステロールなどが付着して血管が狭く硬くなり、血液の流れが悪くなった状態。

発症にはさまざまな要因が関わる

血管や神経の位置には個人差があります。それに加えて、加齢、遺伝、高血圧、環境の変化といった、さまざまな要因が重なって初めて三叉神経痛が発症します。

なお、血管が神経に接触、圧迫して症状が起こる病気には、三叉神経痛のほかに片側顔面けいれんがあります。(この病気については、記事2「顔の表面がぴくぴく引きつる─片側顔面けいれんとはどんな病気?」をご覧ください。)

三叉神経痛の症状について

顔の片側でみられる、おでこ・頬・下あごの痛み

三叉神経は()(また)に分かれていることがその名前の由来で、一番上の枝(第一枝)は額のあたり、2番目の枝(第二枝)は頬のあたり、3番目の枝(第三枝)は下あごのあたりに伸びています。第一枝から第三枝のどの部分に血管が触れても痛みが起こるため、顔の一部だけでなく複数箇所が同時に痛むことがありますが、頬や下あごのあたりに痛みが現れることがほとんどです。

また、三叉神経は左右に一本ずつある神経ですが、両側の三叉神経に血管との接触や圧迫が同時に起こることはまれで、ほとんどの場合は顔の片側だけに痛みが現れます。

日常生活に影響を及ぼす痛み

三叉神経痛の特徴は、突発的な刺すような痛みです。この痛みは、人間の3大疼痛のひとつに数えられる発作的な電撃痛として知られ、海外では痛みのために自殺をしてしまうという意味で自殺病(Suicide Disease)と呼ばれることもあります。命にかかわる病気ではありませんが、痛みは日常生活に大きな影響があるため強い精神的苦痛を伴います。

三叉神経痛と間違えやすい病気、見分け方について

虫歯、顎関節症、副鼻腔炎などと混同されやすい

三叉神経痛では、顔の表面だけではなく口の中にも痛みを感じることがあるため、歯の痛みと混同されることがあります。また、あごのかみ合わせの異常による(がく)関節症や、鼻の奥に(うみ)がたまる副鼻腔炎の刺激痛も、三叉神経痛と間違えられることがあります。

そのほか、症状をよく確認すれば違いが分かるのですが、片頭痛や重度の肩こりなどでも似たような症状が出ることがあるため注意が必要です。

最初は歯科・口腔外科や内科を受診することも─よく相談することが大切

三叉神経痛の痛みは頭痛や歯痛と勘違いされることがあるため、最初に内科や歯科・口腔外科を受診することが多いようです。しかし、内科や歯科で治療しても痛みがとれず、複数の病院を経由してから脳神経外科や神経内科にたどり着き三叉神経痛と判明する可能性もあります。

歯科医の中には三叉神経痛のことをよく理解している方もいますが、虫歯だと誤解して健康な歯を抜かれてしまう患者さんも少なくありません。しかし、専門的な知識をもつ医師が診れば三叉神経痛の診断は可能ですので、気になる症状がある場合は脳外科、神経内科、ペインクリニックなどの専門医とよく相談することが大切です。

三叉神経痛の特徴は「顔の片側に起こる」「突発的で短時間の」「決まった場所の電撃痛」

三叉神経痛の可能性があるときは、痛みの状態を詳しく把握することが重要です。まず、痛みの起こる時間は数秒から数分ほどで、刺すような、突発的な電撃痛であることが特徴です。また、痛みの程度は常に一定ではなく痛みが出ないときもあり、昼間は痛むが夜は全く痛まないという方もいます。痛みが起こるタイミングや痛みの程度は千差万別ですが、痛みの起こる場所(トリガーゾーン)はおおむね決まっています。

じわーっと長く続く鈍い痛み、昼夜を問わず一日中続く痛み、場所が特定できない痛みなどがある場合は、三叉神経痛ではないことが多いです。

三叉神経痛の検査、診断について

三叉神経痛で必須の検査はMRI検査

三叉神経痛の可能性がある場合、必須となる検査は頭部のMRI検査です。MRI検査にはさまざまな撮り方がありますが、全体的に撮影するだけでは三叉神経と血管の触れている部分を確認できないため、三叉神経の出口にターゲットをしぼって撮影します。症状から三叉神経痛が疑われ、MRI検査で神経と血管の接触が確認できれば三叉神経痛の診断がつきます。

三叉神経痛の患者さんのMRI 血管による神経の圧迫が見られる

カルバマゼピンが効くことが診断基準のひとつ

三叉神経痛の診断の要点は、典型的な三叉神経痛の症状があること、MRI検査で神経と血管の接触が確認できること、そしてカルバマゼピンという薬剤が効くことです。

カルバマゼピンは、三叉神経痛の第一選択薬として用いられる有効な薬剤です。たとえば、市販の鎮痛薬などでは効果がなく、カルバマゼピンは効くという場合は診断のひとつの手掛かりとなります。