【疾患啓発(スポンサード)】

クリップする
URLを入力して
記事をクリップしましょう
指定された URL のページが見つかりません
S664x430 170fa051 b05c 4380 ac1f 9c5a8d3f6521
三叉神経痛と片側顔面けいれんの治療の特徴、北野病院の取り組みについて
三叉神経痛と片側顔面けいれんは発症の仕組みが同じであり、顔に症状が現れるという共通点のある病気です。治療法については、どちらの病気でも行える「微小血管減圧術」をはじめ、専門医とよく相談して決める...
クリップに失敗しました
クリップ とは
記事にコメントをつけて保存することが出来ます。検索機能であとで検索しやすいキーワードをつけたり、読み返し用のメモを入れておくと便利です。
また、記事を読んで疑問に思ったこと、わからないことなどをコメントに書き、「医療チームのコメントを許可する」を選んで頂いた場合は、医師や看護師が解説をメールにてお送りする場合があります。
※ クリップ内容は外部に公開されません

三叉神経痛と片側顔面けいれんの治療の特徴、北野病院の取り組みについて

公開日 2019 年 01 月 31 日 | 更新日 2019 年 01 月 31 日

三叉神経痛と片側顔面けいれんの治療の特徴、北野病院の取り組みについて
岩崎 孝一 先生

田附興風会北野病院 脳神経外科主任部長(脳卒中センター長併任)  京都大学医学部臨床教授

岩崎 孝一 先生

目次

三叉神経痛片側顔面けいれんは発症の仕組みが同じであり、顔に症状が現れるという共通点のある病気です。治療法については、どちらの病気でも行える「微小血管減圧術」をはじめ、専門医とよく相談して決めることが大切です。

今回は、微小血管減圧術を中心に、治療の選択肢とそれぞれの特徴や病院の取り組みなどについて、北野病院・脳神経外科の岩崎孝一先生にお話を伺いました。

三叉神経痛の治療法と特徴

薬物療法

三叉神経痛の薬物治療には、まずカルバマゼピンを使用します。この薬は本来てんかんの治療薬ですが、脳神経の興奮を抑える作用があるため三叉神経痛の痛みをとることができます。注射や手術ではないので、初めに選択しやすい治療法です。しかし、薬剤の効果が切れれば痛みが戻ってくることや、長期間使用すると薬剤に耐性ができて効きにくくなってくるので完治はできません。また、初めは小量で効果があっても、徐々に量を増やせば副作用のリスクも高くなります。カルバマゼピンの副作用としては、眠気、薬剤性の肝機能障害、じんましんなどが挙げられます。

神経ブロック療法

神経ブロック療法は、神経に直接針を刺して神経を麻痺させて痛みをとる方法で、手術の必要がなく外来で実施できます。麻酔剤を使用したり、神経に熱をあてて固めたりする治療(高周波熱凝固)になるため、治療後は顔にしびれが現れることがあります。

手術療法「微小血管減圧術」

微小血管減圧術は、病気の原因を取り除くという根治治療です。手術には入院が必要で、他の治療法と比べて体には負担がかかります(微小血管減圧術の詳細は後述)。

放射線療法

放射線療法は、神経に高線量の放射線をあてて神経の一部を弱らせる方法で、ガンマナイフという放射線照射装置を用いて行います。2015年7月に「薬物療法による疼痛管理が困難な三叉神経痛」が保険適用になったため、健康保険で治療を受けることができます。手術療法に比べて体への負担は少なく行える治療法ですが短期間の入院が必要です。また、放射線の効果が現れるまでには一定の時間を要します。

治療法は総合的に判断

日本で受けられる三叉神経痛の治療法は以上の4種類ですが、患者さんの症状、年齢や身体的な背景、ご本人の希望、ライフスタイルなどを踏まえて、よく相談したうえで治療法を決めることが重要です。

軽症の場合は薬で症状をコントロールできる場合がありますが、重症で完治の希望があれば手術をすすめます。一般的に若い方の場合は、日常生活や仕事に支障が出やすいことから手術療法を、ご高齢の方の場合は手術療法以外の体への負担が軽い治療法を中心に考えます。

三叉神経痛の発症を予防することは難しい

三叉神経痛を引き起こす原因となる動脈硬化は、加齢に伴って血管が硬くなった状態です。進行した動脈硬化を改善させることは難しいため、いったん発症した三叉神経痛の自然治癒は期待できません。しかし、生活習慣病を予防できれば動脈硬化の進行も抑えられて、間接的には三叉神経痛の予防につながる可能性があります。

片側顔面けいれんの治療法と特徴

薬物療法

片側顔面けいれんの薬物治療としては、ストレスを緩和することでけいれんの発症を抑える目的で抗不安薬などを使用することがありますが、大きな効果は期待できません。

ボツリヌス療法

ボツリヌス療法は、外来で短時間に実施できる治療法です。ボツリヌス毒素を顔の筋肉に注射して、神経を麻痺させてけいれんを目立たなくすることを目的として行います。

ボツリヌス療法の効果の持続期間は通常2~3か月であるため、定期的に治療を続けていく必要があります。また、けいれんそのものを止めるのではなく、顔の筋肉を麻痺させてけいれんを目立たなくするだけで完治には至りません。

手術療法「微小血管減圧術」

三叉神経痛と同じく、片側顔面けいれんでも微小血管減圧術を実施します(微小血管減圧術の詳細は後述)。

片側顔面けいれんの発症を予防することは難しい

片側顔面けいれんは三叉神経痛と同じく、これといった予防法はありません。ストレスや疲労との関連が考えられていますが、日常生活で完全にストレスを避けることは困難です。また、三叉神経痛と同じように、生活習慣病の予防が動脈硬化の進行を抑え、間接的に発症の予防につながる可能性はあります。

手術療法「微小血管減圧術」について

三叉神経痛と片側顔面けいれんのどちらにも行われる手術

微小血管減圧術は、神経に接触している血管を離して固定することにより、圧迫されていた神経を自由にする手術です。三叉神経痛と片側顔面けいれんのどちらにも効果があり、痛みやけいれんを止めることができます。実際の手術は、全身麻酔で耳の後ろに100円玉ほどの小開頭を設けて行います。手術用顕微鏡や内視鏡を用いて血管が神経に触れている部分を確認し、血管を神経から離して固定します。

頭蓋骨の穴は最後に元通りに戻し、手術の傷は髪の毛で隠れますのでほとんど目立たず美容上もほぼ問題ありません。

微小血管減圧術

北野病院では「転移法」を実施

北野病院で取り入れている方法は「転移法」といって、移動した血管を周囲の組織に医療用接着剤などを用いて固定する方法です。

神経と血管の間に人工の詰め物を入れる「挿入法」という方法もありますが、当院では可能な限り挿入法を避けています。その理由は、詰め物などの異物を使用する挿入法では、術後しばらく経過してから詰め物による異物反応により癒着(ゆちゃく)が生じて、血管と神経とが再び接触することがあるからです。

微小血管減圧術の実際
転移法による微小血管減圧術の実際 血管による圧迫を受けた神経が挿入物を使用せずに移動されている

北野病院では微小血管減圧術の手術器具を独自に考案

血管や神経は構造が繊細で強く触れると損傷してしまう恐れがあるため、手術ではこれらを傷めないようにする技術が必要です。また、脳の深部での操作をするために精巧な手術器具も必要になります。北野病院ではより安全な手術のため、脳の深部の血管を移動・固定するための手術器具などを考案し用いています。

微小血管減圧術の手術時間と費用について

微小血管減圧術の手術では、全身麻酔をかける時間を含めて数時間を要することが一般的です。費用については健康保険が使用でき、手術費は3割負担で146,400円です(平成30年診療報酬点数より)。しかし、治療にかかる実際の費用は、入院の日数や個室料などによって異なります。また、微小血管減圧術は高額療養費の対象になるため、社会保険や国民保険に加入している方は、一定の金額以上の医療費については後日払い戻しが受けられます。

三叉神経痛、片側顔面けいれんの手術後に起こる可能性がある障害

聴力障害、顔面麻痺など

手術の際、顔面神経の近くを走っている聴神経の機能が損なわれることによって、片側の聴力障害が起こる危険性があります。聴力を完全に失うことはまれですが、術後に耳が塞がった感じがすると言われる方がいます。北野病院では、手術中に聴力を計測するモニターを使用して、音が聞こえているかどうかを確かめることで、聴力障害の予防に努めています。

神経に触れることで起こる可能性がある顔のしびれや麻痺にも、十分に注意して手術を行います。

聴神経…聴覚と平衡感覚をつかさどる神経。内耳神経。

三叉神経痛、片側顔面けいれんの再発

微小血管減圧術で神経と血管を離すことに成功しても、しばらくして癒着(ゆちゃく)や別の血管で動脈硬化が起これば痛みやけいれんが再発することがあります。また、手術をしても症状が残り、治癒には至らない場合もあります。

三叉神経痛、片側顔面けいれんの手術後の生活

退院直後から普段の生活に戻れる

通常は退院後にすぐに仕事や家庭生活に復帰することができます。この手術は臓器を切除する方法ではないため、手術の傷跡は残りますが手術前の体とほとんど変わりないと思っていただいて差し支えありません。手術では全身麻酔を使用するため、退院後しばらく療養される方もいますが、基本的には退院直後から普段の生活を送ることができます。

術後経過が良好であれば外来診療を約2回受診して終了

北野病院では、退院後およそ2週間から1か月後に、外来診療の受診をお願いしています。傷や頭の中の治癒状態を確認するために頭部のCTスキャンを撮ったり、全身麻酔の影響、たとえば肝臓の数値に異常かないかどうかを確認するために血液検査を行ったりします。特に異常がなく症状も安定していれば、3か月後にもう一度同じ検査をして、治療は終了です。症状が残っていたり、体に異常がみられたりしたら、しばらく通院していただくこともあります。

三叉神経痛、片側顔面けいれんの手術に注力する北野病院の取り組み

北野病院 外観
北野病院の外観

日々の診療で工夫を重ね、連携を強化

北野病院では三叉神経痛や片側顔面けいれんの治療に注力し、多数の手術件数を重ねてきました。担当医だけでなく、麻酔科医、手術場や病棟の看護師など各方面のエキスパートが連携することで、患者さん一人ひとりに適した医療の提供に努めています。また、新たな手術器具を考案するなど、この手術が安全でスムーズに行えるよう日々努力しています。

脳の手術であるため、患者さんにとっては大きな決心が必要になると思われます。

手術を受ける際は、病院が治療数や治療成績を公表しているかどうか確認するなど情報収集が大切です。尚、北野病院では年間70~100例以上の患者さんに微小血管減圧術を施行しています。

麻酔科標榜医:足立健彦先生

 

過去7年間の北野病院での三叉神経痛や片側顔面に対する微小血管減圧術件数
過去7年間の北野病院での三叉神経痛や片側顔面けいれんに対する微小血管減圧術件数

正しい情報を見極めることが大切─岩崎孝一先生の思い

三叉神経痛と片側顔面けいれんはいずれも、症状が顔に生じるため他人には計り知れない精神的苦痛が強いられます。正しい診断がつかないまま複数の病院にかかりながらも、適切な治療を受けられず悩んでいる方も少なくありません。

これらの病気については多くの情報が発信されていますが、その中でも何が正しいのか、どの治療が自分に適しているのかを見極め、治癒につなげていただければと思います。

 

三叉神経痛と片側顔面けいれん(岩崎 孝一先生)の連載記事

特に脳腫瘍外科、脊椎・脊髄外科、微小血管減圧術を専門としており、多数の手術を手掛けている。大学病院以外では数少ない日本脳神経外科学会認定の基幹研修病院の主任部長を務める。