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脊柱管狭窄症の原因のひとつー高齢者の脊椎圧迫骨折について

脊柱管狭窄症の原因のひとつー高齢者の脊椎圧迫骨折について
伊藤 康信 先生

総合東京病院 院長代行・脊椎脊髄センター長 東京クリニック 脊髄外科

伊藤 康信 先生

目次
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総合東京病院脊椎脊髄センターでは、手足のしびれ、痛み、脱力、腰痛、歩行困難などのさまざまな脊椎脊髄疾患に対応しています。その中でも、脊髄を圧迫する脊柱管狭窄症や、背骨がつぶれたように折れる脊椎圧迫骨折が起こると、高齢者の場合は寝たきりの状態になることも少なくありません。高齢者が元気で生活を送るためには、早期の治療や再発予防が大切です。

今回は、脊柱管狭窄症の原因のひとつとなる高齢者の脊椎圧迫骨折について、総合東京病院脊椎脊髄センターのセンター長である伊藤康信先生にお話を伺いました。

高齢者にとっての脊椎圧迫骨折

背骨

脊椎圧迫骨折とは

脊椎圧迫骨折とは、背骨を構成する椎骨が圧迫されて、つぶれるように折れることをいいます。

骨粗しょう症は脊椎圧迫骨折の原因のひとつ

加齢により骨がもろくなっている方や骨粗しょう症の患者さんの場合、骨の強度が低下して骨折しやすくなっているため、小さな負荷がかかるだけでも圧迫骨折が生じる可能性があるため注意が必要です。また、このような場合、体のすべての骨が圧迫骨折の予備軍ともいえます。

脊椎圧迫骨折は3つの治療方法に加えて手術も重要

脊椎圧迫骨折の治療では、ベッドで安静にすること、痛み止めの薬で痛みを和らげること、コルセットを着用することという3つの方法が基本となります。

ただし、長くベッドで寝ていると認知症や筋力低下などが起こる可能性があるため、必要な場合はなるべく早く手術したほうがその後の予後もよく、またサポートする家族の負担を減らすことも見込めます。

脊椎圧迫骨折の治療

手術 ペイレス

経皮的椎体形成術とは

脊椎圧迫骨折に対する経皮的椎体形成術とは、つぶれた骨に骨セメントを注入して固め、安定化させることで症状の改善を目指す治療です。主に2種類の方法があり、どちらも治療目的は同じです。

BKP治療とPVP治療

バルーン・カイフォプラスティ(バルーン椎体形成術、以下「BKP治療」)は、バルーン(風船)を用いて行う方法です。つぶれた骨の中にバルーンを入れてふくらませ、つぶれた骨の形を元に戻したあとでバルーンを抜き、空いた空間に骨セメントを詰め、固めることで脊椎を安定化させます。

全身麻酔を使用すること、手術室で行うこと、BKP治療の認定資格を取得した脊椎脊髄外科の専門の医師が行うことが定められています。保険内で治療が受けられ、費用は高額療養費制度の対象となります。

BKP治療

PVP治療は、つぶれた骨の中に針を刺して骨セメントを注入する方法です。こちらは、局所麻酔を使用し、主に放射線科の医師が行っています。局所麻酔でも可能であることから高齢者には適していますが、合併症である肺塞栓*の発症率はBKPより約10倍高率です。保険も適用されます。

肺塞栓…肺に血栓が詰まってしまう病気。

BKP治療の特徴

BKP治療では、背骨の外へ漏出する骨セメントの量を抑え、肺に骨セメントが詰まってしまう肺塞栓症が起こる危険性を減らすことができます。また、BKP治療を行うと、それまでは寝返りも打てない状態だった方でも、基本的には術後すぐに症状が改善して痛みがとれる傾向があります。

脳血管、心臓、肺機能などの全身の重篤な機能低下がなければ、BKP治療は高齢者でも実施可能です。

骨粗しょう症予防による脊椎圧迫骨折の再発予防

老人と看護師 ペイレス

テリパラチド製剤で再発予防に努める

総合東京病院脊椎脊髄センターでは、BKP治療のあと、骨粗しょう症の治療に用いるテリパラチド製剤(副甲状腺ホルモン)を皮下注射することにより、圧迫骨折の予防を図ります。これにより、圧迫骨折を起こした部分だけではなく、骨粗しょう症などにより圧迫骨折の予備軍となっている部分も併せて治療できるため、再発を繰り返すことの予防につながります。

テリパラチド製剤(副甲状腺ホルモン)の投与目的

骨の代謝にかかわる副甲状腺ホルモンを、自己注射などにより投与することで、骨粗しょう症が原因となる圧迫骨折の再発リスクを抑えることができます。

テリパラチド製剤(副甲状腺ホルモン)の投与方法

テリパラチド製剤は外来で処方しますので、退院後に開始します。基本的には自己注射による投与となりますが、ご自身での注射が難しい場合には、ご家族に頼むか、病院で注射を受けていただくことも可能です。注射の回数は、自己注射の場合は1日1回、通院の場合は1週間に1回で、約2年間継続して行います。

脊椎圧迫骨折の治療の流れ

老人の歩行訓練 ペイレス

術前に検査を実施

脊椎圧迫骨折は、体を動かしたときなどに背中に強い痛みを伴うため、受診したらまず入院が決まることが多いのが実情です。しかしながら、手術の際は前日に入院し、前もって検査しておくことが理想的です。

検査では、手術の対象になるかどうかを調べる必要があります。採血や心電図検査のほか、レントゲン検査などの画像診断により骨の変化を確認します。MRI検査やCT検査も必要です。とくにMRI検査では脊椎圧迫骨折が古いか、新しいかの鑑別ができます。

入院中はリハビリが重要

手術の際は、約1週間の入院と、リハビリテーション(以下、リハビリ)が必要になります。

手術のあとリハビリを開始したら、ベッドサイドリハビリ、リハビリ室でのリハビリ、歩行へと少しずつ移行していきます。いきなり歩き出すと、治療した箇所とは別のところが骨折してしまう可能性があるためです。

退院後の生活について

退院後は、ご高齢の方には特に転倒や転落に注意していただいています。

また、当センターで実施しているテリパラチド製剤の注射は、約2年間行う必要があり大変ですが、最後までしっかりと続けていきましょう。粘り強く治療を継続することが再発予防につながります。

約2年間が過ぎると今度は維持療法になります。

総合東京病院の取り組みと治療実績

総合東京病院 外観
総合東京病院 外観

多くの脊椎脊髄疾患に対応

総合東京病院の脊椎脊髄センターでは、脊椎圧迫骨折、頸椎変性疾患、腰椎変性疾患、末梢神経障害、脊髄腫瘍、胸椎変性疾患、頭蓋頸椎移行部病変といった、あらゆる脊椎脊髄疾患の診療を行っています。その中でも、2018年は、脊椎圧迫骨折の患者さんが多く受診されました。

治療実績─BKP治療

当センターで2018年に行った脊椎脊髄外科手術455件のうち約4分の1は、経皮的椎体形成術(BKP)でした。BKP治療は、一般的には30分以内という短い時間で実施できる手術です。当センターでは、1日に複数名の患者さんに対してBKP治療を実施することもあります。

「余裕がなくてもお断りしないように」伊藤康信先生の思い

伊藤先生

当院では、余裕がないときでも、患者さんをできる限りお断りしないことをモットーに、いつも前向きな姿勢で診療に取り組んでいます。

たとえば、高齢の脊椎圧迫骨折の患者さんの場合では、痛みが強くて家にいられず救急を受診される方や、普段は寝たきりの状態で、車椅子でようやく病院に到着したという方が多くいらっしゃいます。

どのような場合においても、できる限り患者さんのニーズにお応えしてまいりますので、お困りのことがあればお気軽にご相談ください。