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虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)に対するカテーテル治療と冠動脈バイパス術
虚血性心疾患とは、動脈硬化などを原因として、冠動脈(心臓の筋肉に酸素や栄養を送り込む血管)が狭くなったり閉塞したりして心筋に血液が行き届かなくなり、さまざまな症状を引き起こす病気の総称です。虚血...
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虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)に対するカテーテル治療と冠動脈バイパス術

公開日 2019 年 03 月 20 日 | 更新日 2019 年 03 月 20 日

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)に対するカテーテル治療と冠動脈バイパス術
羽生 道弥 先生

公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 心臓センター長 心臓血管外科主任部長

羽生 道弥 先生

猪子 森明 先生

公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 心臓センター循環器内科主任部長

猪子 森明 先生

山地 雄平 先生

公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 心臓センター循環器内科 副部長

山地 雄平 先生

上坂 建太 さん

公益財団法人田附興風会 医学研究所北野病院 リハビリテーション科 係長

上坂 建太 さん

目次

虚血性心疾患とは、動脈硬化などを原因として、冠動脈(心臓の筋肉に酸素や栄養を送り込む血管)が狭くなったり閉塞したりして心筋に血液が行き届かなくなり、さまざまな症状を引き起こす病気の総称です。虚血性心疾患には、「狭心症」や「心筋梗塞」が含まれます。虚血性心疾患の症状や治療選択について、北野病院の羽生道弥先生、猪子森明先生、山地雄平先生、上坂建太様にお話を伺いました。

虚血性心疾患に対するカテーテル治療

虚血性心疾患に対するカテーテル治療では、現在、PCI(冠動脈インターベンション)が主流で行われています。PCIでは、手首や足の付け根の動脈からカテーテルという細い管を挿入し、バルーンで血管を拡張したのちにステントを留置します。

【PCIの大まかな流れ】

  1. 局所麻酔を行い、シース(カテーテルを挿入するための管)を血管に挿入する
  2. カテーテルを冠動脈の入口まで挿入する
  3. 細いワイヤーで狭窄部位や閉塞部位を通過させる
  4. ワイヤーに沿ってバルーンを挿入し、膨らませる
  5. バルーンで拡張した部分にステントを留置する

冠動脈インターベンション(PCI)

従来、PCIの問題点のひとつとして、再狭窄がありました。この問題を克服するために、近年は、再狭窄の予防効果を持つ「薬剤溶出性ステント」が採用されています。このように、現在、再狭窄を減らすことを目的としたステントが次々と登場しています。

高度の石灰化病変に対してはロータブレータを用いることがある

通常のバルーンやステントでは血管を十分に広げられない高度の石灰化病変(硬い動脈硬化)に対しては、先端にダイヤモンドのチップが埋め込まれた高速回転ドリルで、冠動脈の狭窄病変を削るロータブレータという器具を用いてカテーテル治療を行うことがあります。

ロータブレータ

虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術

虚血性心疾患に対する冠動脈バイパス術では、狭窄が起きている冠動脈の先に内胸動脈や下肢の静脈(大伏在静脈)、胃の動脈(胃大網動脈)などをつないで、血流を増やします。

冠動脈バイパス術

冠動脈バイパス術(CABG)には、大きく分類すると3つの種類があります。まず、人工心肺装置を使って心臓の機能を補助して行う手術(C-CABG)があり、さらに心臓を止めて行う場合と、心臓を拍動させながら行う場合にわかれます。そのほかに、人工心肺装置を使わず心臓を拍動させながら行う手術(OPCAB:off pump CABG)があります。

従来、C-CABGが主流で行われていましたが、人工心肺装置の装着や大動脈遮断による脳梗塞や腎機能障害、炎症による全身の反応などが問題とされていました。そこで、1990年代には人工心肺装置を用いないOPCABが登場し、現在ではより低侵襲(身体的な負担が少ない)な手術を行うという視点で、OPCABが主たる選択肢に組み込まれています。

OPCAB(off pump CABG)のメリット・デメリットとは?

北野病院の先生

メリット:手術中の脳梗塞、急性腎不全の発生率低減が期待される

人工心肺装置を使う場合、動脈硬化のかけら(粥腫)が剥がれて脳血管につまり脳梗塞を引き起こすリスクがあります。しかしOPCABは人工心肺装置を使わないため、手術中の脳梗塞の発生率を低減させる効果が期待されています。

また、手術中の急性腎不全の発生率を低減させる効果も期待されており、最近では、大動脈動脈硬化が強く人工心肺装置の装着が危険な患者さんや、脳梗塞や急性腎不全のリスクが高い患者さんに対してOPCABを行う価値がある、という考え方が浸透しつつあります。

デメリット:手術中の急変時対応に時間がかかる

OPCABは手術中の急変時、人工心肺装置につなげる必要があり、対応に時間がかかる点がデメリットです。急変した場合、死亡率が高くなります。

このデメリットを克服するためには、急変時を想定して手術に臨むことが重要です。まず、急変を起こさないように、術中の血圧などの循環管理や体温管理を適切に行うといった対応が挙げられます。次に急変を起こす前に人工心肺装置の装着した手術に切り替えることも大切です。

OPCABを行うか、人工心肺装置を用いた冠動脈バイパス術を行うかは、個々の患者さんの状況に応じて最善の方法が選択されます。

OPCABを行う場合の一般的な手術時間、入院期間

手術時間は4〜6時間、入院期間は10日間ほど

日本冠動脈外科学会によると、OPCABを行う場合、一般的には手術時間は4〜6時間、入院期間は10日間ほどかかります。当院では心臓リハビリを入念に行うことから、一般的な入院期間よりも少し長く、10日間〜2週間ほど入院していただくことが多いです。

虚血性心疾患に対する手術後のリハビリについては、記事3『心臓リハビリテーションとは?その概要とポイント、北野病院の特徴』をご覧ください。

虚血性心疾患の術後、注意すべきこと

動脈硬化の治療をしっかりと継続する

先生

記事1『虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)とは?−その症状や治療選択について』でもお話ししたように、虚血性心疾患は動脈硬化が原因で起こります。そのため、カテーテル治療や冠動脈バイパス術後にも動脈硬化の治療をしっかりと継続して、再発を予防することが大切です。

動脈硬化に関連する代表的な病気として、高血圧、脂質異常、糖尿病などがあり、また、喫煙や運動不足などの生活習慣も動脈硬化にかかわりを持ちます。そのため、術後、患者さんの予後改善のために、血圧、コレステロール値や血糖値のコントロール、禁煙や運動療法、食事指導といった生活指導を行います。基本的に定期的に病院やかかりつけ医を受診していただきます。外来でリハビリを継続することもあります。

このように、虚血性心疾患の治療は「手術したら終わり」ではないことを認識していただけたらと思います。

 

虚血性心疾患(羽生道弥先生、猪子森明先生、山地雄平先生、上坂建太様)の連載記事

心臓大血管手術全般に対応し、なかでも心拍動下冠動脈バイパス術(OPCAB)、僧帽弁形成術、弓部大動脈瘤置換術は豊富な経験を持っている。また、前任地では大動脈瘤に対するカテーテル治療(TEVAR、EVAR)や、大動脈弁狭窄症に対するカテーテル治療(TAVI)を国内でもいち早く導入し国内有数のチームに育てた経験を有する。

循環器疾患治療、特に虚血性心疾患、心不全の治療を専門としている。専門分野の治療に関しては緊急医療、先進医療を推進する一方、他の診療科とのチーム医療を実践し、全身横断的治療、全人的治療を行うことを心懸けている。

京都大学医学部付属病院、国立病院機構京都医療センターで研修終了後、大阪府済生会野江病院、小倉記念病院で循環器内科医として臨床経験を積む。現在は、北野病院心臓センター循環器内科 副部長としてカテーテルインターベンションを専門に、循環器疾患全般を幅広く手がける。

名古屋大学医学部保健学科を卒業後、亀田総合病院を経て、北野病院へ入職。心臓血管外科、並びに冠動脈疾患や心不全に対する心臓リハビリテーションに従事している。