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炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の鑑別方法・検査・診断

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)の鑑別方法・検査・診断
公益財団法人 慈愛会 いづろ今村病院 大井 秀久 先生

公益財団法人 慈愛会 いづろ今村病院

大井 秀久 先生

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非特異性炎症性腸疾患である潰瘍性大腸炎クローン病の特徴的な症状といえば、潰瘍性大腸炎では血便、クローン病ではるい瘦(やせていること)です。診察時には、これらの症状の有無から両者を鑑別します。さらに、大腸内視鏡検査を実施し、その画像によって診断します。クローン病の場合は、大腸内視鏡検査に加えて、小腸造影、血液検査なども行われます。

潰瘍性大腸炎とクローン病の鑑別方法や検査について、いづろ今村病院副院長の大井秀久先生にお話しいただきました。

診察による潰瘍性大腸炎とクローン病の鑑別方法(見分け方)

栄養障害と血便で判断する

小腸に炎症が起きるクローン病では栄養障害を伴うので、ほとんどの患者さんは痩せ型です。クローン病の患者さんの場合、一般的には食後に腹痛や下痢が起こります。食事を摂ればお腹が痛くなるからと、クローン病の患者さんは食事をあまり摂らなくなり、やがて痩せてしまいます。

一方、潰瘍性大腸炎では頻回に下痢が起こりますが、小腸には異常が起こらないので、重篤な栄養障害は起こらず、食欲にも問題がみられないことがほとんどです。潰瘍性大腸炎の患者さんの場合、症状が出ておらず、お腹が痛くなければ、空腹を感じて食事を摂ることができます。吸収能力にも問題がないため、クローン病の患者さんほど痩せている方はあまりいません。

また、血便はクローン病と潰瘍性大腸炎を鑑別する重要な症状です。記事1『炎症性腸疾患(IBD)の分類と特徴―潰瘍性大腸炎・クローン病の予後は?』でご紹介したように、炎症が消化管のあらゆる部分に点々と起こるクローン病では血便が出ません。これに対して大腸の粘膜から徐々に出血をきたす潰瘍性大腸炎では血便が出ます。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)の検査

潰瘍性大腸炎では内視鏡検査が中心

主に*大腸に炎症が起こる潰瘍性大腸炎では、血液検査、便潜血検査のほか、大腸に対する内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。

内視鏡検査では、検査の前に下剤を服用して大腸を空にしていただいた状態で、肛門から内視鏡を挿入します。大腸の粘膜の状態を詳細に観察できるので、潰瘍性大腸炎のタイプ*や重症度を判断できます。

このように内視鏡検査は潰瘍性大腸炎の診断に有効な方法ですが、下剤の投与や肛門からの器具挿入など、腸に出血が起きている患者さんにとっては、相当の負荷がかかる検査でもあります。そのため当院では、大腸内視鏡検査に使用するカメラはもっとも柔らかいタイプのものを、下剤は非刺激性のものを使用して、できる限り患者さんに苦痛を与えないようにしています。

また、痛みを与えずに検査を行うには経験と技術が必要ですので、基本的に当院の大腸内視鏡検査は、炎症性腸疾患診療を専門的に行う「IBDチーム」のメンバーが専任で行います。

胃や食道にも炎症が起こることがあります。

潰瘍性大腸炎は、直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型および右側・区域性大腸炎型の4種類に大別されます。

クローン病では胃や小腸、大腸などすべてを検査する

クローン病の検査では、血液検査、内視鏡検査、造影検査、CT・MRIなどの画像診断などが行われます。クローン病は大腸だけではなく、小腸、胃、食道といった消化管の全範囲に病気が起こる可能性があるので、大腸以外の消化管も検査対象になります。

小腸の検査法―内視鏡、造影、画像診断など

小腸を調べるための検査法には、内視鏡検査、造影検査、CT・MRIなどがあります。

近年ではカプセル内視鏡検査(カプセルほどの大きさの内視鏡を経口投与して腸まで運び、小腸内部を観察する方法)が登場し、クローン病に対してカプセル内視鏡を実施している施設があります。カプセル内視鏡は、患者さんの体の負担が少なく、小腸内の小さな病変の観察には適しています。しかし、クローン病のように小腸狭窄(小腸が狭くなっている状態)を伴う病気の場合、カプセルが狭窄部で詰まってしまう恐れがあります。また、大きな病変の観察には適していません。そのため、当院では、従来法とも呼ばれる小腸造影検査を主に実施しています。

小腸造影検査は、口から硫酸バリウム製剤(またはアミドトリゾ酸ナトリウムメグルミン液)を飲んでいただく方法と鼻から十二指腸に管を挿入して硫酸バリウム製剤と空気を経管投与し、X線で小腸の状態を撮影する方法があります。後者の方法は、しばしば患者さんの苦しみを伴い、検査者の技術が求められますが、小腸全体をくまなく見渡すことができるので、大小さまざまな病変を精密に調べることができます。

また、施設によってはCTやMRIによる画像診断を行うこともあります。CTやMRIは侵襲の少ない検査で、腸管壁や腹腔内も観察することができます。消化管の炎症の程度や腹腔内の膿瘍(のうよう)(組織内に膿がたまること)、瘻孔(ろうこう)(管状の欠損)などの評価も可能です。一方で、画像診断では粘膜を鮮明に映し出すことが難しいというデメリットもあります。

いづろ今村病院における炎症性腸疾患の診療

IBDチームの役割とは

当院では、炎症性腸疾患の検査・診断・治療を専門的に行うIBDチームが、炎症性腸疾患の患者さんの診療にあたっています。IBDチームの役割は、炎症性腸疾患の患者さんに安心して治療を受けていただくために、力を尽くすことです。本記事でご説明した造影検査や内視鏡検査は、炎症性腸疾患の検査の経験を積んだIBDチームの医師や技師のみが行い、診断の差が生じないようにしています。

また、炎症性腸疾患における検査で、IBDチームの中でも非常に大きな役割を果たしているのは、検査の説明をする看護師です。元来クローン病や潰瘍性大腸炎は若い方に多い病気で、大きな検査を受けるのは今回が初めてという方も少なくありません。重大な病気にかかっていることが判明するかもしれない検査を控えて、患者さんは不安な気持ちを抱えています。患者さんの不安を和らげるために、IBDチームの看護師は、患者さんが納得するまで検査の流れについて説明するだけでなく、検査に対する患者さんの悩みや不安を聞き、IBDチームに共有します。このように、心身ともに患者さんが楽に検査を受けられるよう、チームで取り組みを進めています。

IBDチームカンファレンスの様子
IBDチームカンファレンスの様子

IBDチームのリーダーは私ではなく、看護師や管理栄養士などのコメディカルスタッフです。看護師やコメディカルの方々がそれぞれ役割分担をして、患者さんの服薬管理や生活指導、検査説明、治療補助はもちろん、薬や機器に関するメーカーとの交渉、広報活動、会議の開催スケジュールなども行っています。トップダウン型ではなく、各自がそれぞれの役割に責任を持って自発的に行動することで、一人ひとりの知識と経験を高めると共に、チーム意識を強固にできていると考えています。

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