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転移性脳腫瘍の治療の選択肢となるサイバーナイフの特徴

転移性脳腫瘍の治療の選択肢となるサイバーナイフの特徴
社会医療法人若竹会 つくばセントラル病院 サイバーナイフセンター長 土田 幸広 先生

社会医療法人若竹会 つくばセントラル病院 サイバーナイフセンター長

土田 幸広 先生

目次
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脳腫瘍は、脳から発生する原発性脳腫瘍と、肺がんや乳がんなど別の場所で発生したがんが脳に転移する転移性脳腫瘍の2種類に大別されます。このうち、悪性である転移性脳腫瘍や一部の原発性脳腫瘍には、定位放射線照射という患者さんの身体的負担が少ない治療法が適応されることがあります。

つくばセントラル病院では、転移性脳腫瘍や原発性脳腫瘍はもちろん、脊椎などへの骨転移、肝臓がん、肺がんなどに対してもサイバーナイフを用いた定位放射線照射を行っています。同院サイバーナイフセンター長の土田幸広先生に、サイバーナイフの仕組みや脳腫瘍に対するサイバーナイフ治療の特徴についてお話しいただきました。

サイバーナイフとは?

サイバーナイフは、脳、頭頸部、肺、肝臓などに発生した腫瘍や骨転移に主に適応される放射線照射機器です。当院では、脳腫瘍におけるサイバーナイフは私が診察を行い、体幹部疾患におけるサイバーナイフについては、筑波大学医学部附属病院所属の放射線腫瘍医(非常勤、毎週水曜日午前、金曜日午前・午後勤務)が診察を行っています。

つくばセントラル病院におけるサイバーナイフ適応疾患の一例

頭蓋内疾患

  • 原発性脳腫瘍(良性・悪性)
  • 転移性脳腫瘍
  • 脳血管疾患(脳動静脈奇形など)

頭頚部疾患

  • 副鼻腔がん
  • 口腔がん
  • 咽頭がん
  • 唾液腺がん
  • 頸部リンパ節転移

眼窩腫瘍

  • 神経鞘腫
  • 血管腫

脊椎疾患

  • 転移性脊椎腫瘍
  • 脊髄腫瘍
  • 脊髄動静脈奇形

肺がん

肝臓がん

このうち、私が担当している脳腫瘍に対するサイバーナイフの特徴や外科手術との違いについて、転移性脳腫瘍に対するアプローチを中心に、詳しくご説明していきます。

サイバーナイフが適応にならない腫瘍もあります。

脳腫瘍の治療法―外科手術と放射線治療

脳腫瘍の治療法には、大きく外科手術(開頭手術)と放射線治療の2つの方法があります。

外科手術(開頭手術)

外科手術では、開頭して直接脳腫瘍を摘出します。良性脳腫瘍の場合、腫瘍を完全に摘出できれば手術のみで治療が完了します。開頭手術が適応できる良性脳腫瘍で、なおかつ患者さんに手術に耐えうる体力がある場合、開頭手術は脳腫瘍における治療の第一選択になると私は考えています。

放射線治療

脳腫瘍における放射線治療では、体の外から脳腫瘍に向けて放射線を照射し、腫瘍細胞を縮小・消失させます。放射線治療には、全脳照射(WBRT:whole brain radiation therapy)と定位放射線照射(STI:Stereotactic Irradiation)があります。定位放射線照射とは、さまざまな方向から1か所に向けて放射線を集中的に照射する方法です。

また、定位放射線照射は、1回で治療が終了する定位手術的照射(SRS:Stereotactic Radiosurgery)と、数回に分けて放射線を照射する定位放射線治療(SRT:Stereotactic Radiotherapy)に大別されます。

転移性脳腫瘍の治療選択―原則的な考え方

脳腫瘍の種類や容体に応じて適切な治療法を選択し、組み合わせる場合もある

一般的に、転移性脳腫瘍の患者さんに対しては放射線治療が選択されます。ただし、放射線治療は即効性の治療ではなく、効果が出るまでに時間を要します。そのため、腫瘍の数が少なく患者さんの容体が安定している場合であれば、手術を行うこともあります。

放射線治療を行う場合は、状況に応じて定位放射線照射や全脳照射を使い分けます。一人ひとりの患者さんに適切な治療はそれぞれ異なるため、患者さんの容体や腫瘍の数などから適切な治療法を選択することが大事です。

また、外科手術と放射線治療を組み合わせることもあります。たとえば、脳の奥深い部分に発生した脳腫瘍は、たとえば良性のものであっても手術による完全な切除は難しいといえます。このようなケースでは、まず手術で大部分を摘出して、術後に取り切れなかった部分に定位放射線治療を行うことがあります。

転移性脳腫瘍における治療選択の際の注意点

当センターでは、放射線は正常な組織にも影響を及ぼす可能性があることを念頭に置いて、慎重に治療法を選択しています。一度放射線を照射した部分を、照射しなかったことにはできないためです。手術では本当にその患者さんの脳腫瘍を切除できないのかをしっかりと考えたうえで、放射線治療がより望ましいと判断できる場合、放射線治療を患者さんに提案します。

転移性脳腫瘍治療の選択肢「サイバーナイフ」の特徴・仕組み

サイバーナイフは定位放射線照射を行う放射線照射装置

転移性脳腫瘍に対する放射線治療には、脳全体に放射線をあてる全脳照射と、多方向から腫瘍に向かって放射線を集中的にあてる定位放射線照射があります。サイバーナイフ(Cyberknife)は、定位放射線照射を行うための医療装置です。

放射線には脳腫瘍細胞を死滅させたり、細胞分裂能力を消失させたりする効果がありますが、正常組織にも作用してしまいます。ですから、正常組織には極力放射線をあてずに、なおかつ腫瘍のある部分にはある程度強く放射線をあてなければなりません。

定位放射線照射では多方向から放射線をあてるので、正常組織への照射を避けながら、腫瘍だけに的確に作用します。

多方向からの照射で正常組織への影響が少ない

転移性脳腫瘍における放射線治療の場合、放射線は体の外側から照射(外照射)します。高エネルギーの放射線を1か所から強く照射すると、腫瘍に至るまでの通り道、すなわち正常組織にも放射線が強くあたってしまいます。

たとえば、1つの転移性脳腫瘍を治療するために100のエネルギーが必要だとします。100のエネルギーを持つ放射線をそのまま転移性脳腫瘍にあてると、確かに転移性脳腫瘍には100のエネルギーが加わりますが、放射線照射装置から転移性脳腫瘍までの通り道に存在する正常組織にも、100のエネルギーが加わってしまうことになります。

サイバーナイフの場合は、1のエネルギーを持つ放射線を100方向から100本打つことができます。単純な放射線照射が大剣で腫瘍を貫くイメージだとすれば、サイバーナイフは細い槍で腫瘍を100回刺すようなイメージです。1本あたりのエネルギー量が小さいので、その通り道にはほとんど放射線の影響がありません。

このように、サイバーナイフでは、極力正常組織に放射線をあてずに転移性脳腫瘍を治療することができます。

自動位置補正で照射位置がずれない

つくばセントラル病院 サイバーナイフ治療室
つくばセントラル病院 サイバーナイフ治療室

サイバーナイフには、治療中に患者さんの体が動いて転移性脳腫瘍の位置がずれた場合にも自動的に位置補正を行う機能が備わっています。照射中のわずかな動きにも反応して照射位置を補正するので、正常組織に照射するリスクがほとんどありません。

分割照射機能―脳腫瘍が大きい場合も治療できる

脳腫瘍に対する定位放射線照射の適応は、基本的には3cm以下・単発あるいは少数個に限定されます。

サイバーナイフの場合は分割照射(数日間にわたり、複数回に分けて放射線を照射する方法)が可能なため、3cmより大きな腫瘍にも適応できます*。また、手術だけでは取り切れなかった脳腫瘍に対して、手術と組み合わせてサイバーナイフによる照射を行うこともあります。

非常に大きな脳腫瘍に対しては適応できないことがあります。

局所麻酔を用いた固定具の装着が不要

ガンマナイフなどの従来の定位放射線照射を行う際は、多くの場合局所麻酔を用いて患者さんの頭部に金属製のフレームをピンで固定する必要があります。一方、サイバーナイフでは自動位置補正機能が備わっているので、この固定具を装着する必要がありません。

サイバーナイフに用いる「シェル」とは?

サイバーナイフによる治療を行う場合は、金属製の固定具を使用しない代わりに、シェルと呼ばれる着脱可能なメッシュ状のマスクで患者さんの頭部を固定します。シェルは麻酔を使わずに装着できるので、従来の固定具に比べて侵襲性が低いことが特徴です。

サイバーナイフなどの定位放射線照射を行うにあたっては、あらかじめ放射線を照射する方向・強さ・位置などを決めておく必要があります。この作業を、医療従事者の間では治療計画と呼んでいます。

治療計画を立てるにあたり、治療前にCT・MRI検査を行います。シェルは、このCT検査を行うタイミングに合わせて作成します。

サイバーナイフのメリット・デメリット

サイバーナイフのメリットは、やはり侵襲性の低さです。ピンポイントで照射するので、がん以外の正常組織の被ばくを極力抑えることができます。

治療に伴う苦痛が少ないこともサイバーナイフのメリットです。体を切らずに治療を行うため、サイバーナイフ治療室で横になっている間に治療が終了します。治療の際に熱さや痛み、痒み、不快感を味わうことはほとんどありません。

デメリットは、適応に限界があることです。サイバーナイフはすべての転移性脳腫瘍に適応できるわけではありません。腫瘍の大きさや数、患者さんの年齢や容体によっては、別の治療法を提案することがあります。

脳腫瘍でサイバーナイフが適応になるケース

当センターでは、以下の患者さんに対してサイバーナイフによる治療の適応を検討します。

  • 脳転移脳腫瘍で、原則的に初診時腫瘍の数が10個以下の患者さん
  • 良性脳腫瘍だが、脳底部など手術による摘出が困難な場所に脳腫瘍がみられる患者さん
  • 開頭手術で腫瘍をすべて摘出できず、残存した腫瘍に対する治療が必要な患者さん
  • 高齢で、手術に耐えうる体力がないと見込まれる患者さん

脳腫瘍でサイバーナイフが適応にならないケース

以下のケースでは、定位放射線照射によって脳浮腫を引き起こすリスクが高いため、サイバーナイフが適応されないことがあります。

  • 腫瘍の数が多い*
  • 腫瘍が極端に大きい
  • 麻痺など腫瘍による症状が出ている

つくばセントラル病院では、転移性脳腫瘍の数が10を超える場合には全脳照射を推奨しています。

また、サイバーナイフではメッシュマスクを装着した状態で一定時間寝ていただく必要があるので、長時間同じ姿勢を取ることが難しい方には治療できない可能性があります。