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横須賀市立うわまち病院 ICUの取り組み-患者さんやご家族に寄り添ったコミュニケーションを

横須賀市立うわまち病院 ICUの取り組み-患者さんやご家族に寄り添ったコミュニケーションを
牧野 淳 先生

横須賀市立うわまち病院 集中治療部 部長

牧野 淳 先生

目次
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ICU(Intensive Care Unit)とは、救急搬送された最重症の患者さんや急変した入院患者さんの治療、手術後の患者さんの全身管理などに対応する集中治療室です。横須賀市立うわまち病院のICUは、集中治療に関する専門的な知識や技術を有する専属の医師が常駐している点が大きな特徴です。

同病院のICUスタッフは、どのようなことを心がけて、日々の治療にあたっているのでしょうか。また、ICU以外において院内で日頃どのような活動を行っているのでしょうか。

今回は、横須賀市立うわまち病院 集中治療部 科長 牧野 淳先生に、同病院におけるICUの取り組みについてお話しいただきました。

ICUの役割とは?

重症の患者さんの治療を担う集中治療室

ICU(Intensive Care Unit)とは、生命の維持に関わるような重症の患者さんの集学的な治療を担う集中治療室を指します。

ICUでは、このような重症の患者さんの治療や全身管理に対応することができるよう、生命維持装置など高度な医療機器と共に、医師をはじめとする各職種のエキスパートが集まり多職種による診療体制を整備しています。各臓器の専門科が患者さんの主科である場合は、ICUチームがイニシアティブをとり診療各科と連携をしつつ円滑な診療を進めるよう心がけています。

また、高度な医療を提供して救命することだけがICUの役割ではありません。後に述べるように、ICUでは予期せず突然終末期に直面する患者さん、あるいはそのご家族へ接することも多く、こうした方々がよりよい最期を迎えられるようサポートしていくことも我々ICUの重要な役割と考えています。

主科:患者さんがかかえる病気の治療を主として担当する診療科

横須賀市立うわまち病院 ICUの特徴

集中治療の専門的な知識や技術をもつ専属の医師が常駐

私たち横須賀市立うわまち病院のICUには、日本の学会が認定する集中治療医やアメリカの集中治療専門医を取得した医師が働いています。集中治療に関する専門知識と技術をもった医師がICUに常駐している点は、当院のICUの大きな特徴でしょう。

術後の全身管理を数多く担当

当院ICUの2018年度の総入室数は、721名でした。特に手術後の患者さんの全身管理を行うことが多く、心臓血管外科や脳神経外科、外科、整形外科、循環器内科の患者さんの術後管理を数多く担当しています。当院が位置する横須賀市の高齢化が進行していることもあり、高齢の患者さんが多い点も特徴のひとつです。

当院ICUの平均在室日数は、約3日です(2018年実績)。限られた時間の中でできる限りの治療を行い、退室後も主科と連携をとりながら経過を確認し、必要があれば治療に携わっています。

薬剤師・管理栄養士・身体療法士・臨床工学技士などの多職種連携を実現

当院ICUでは、多彩な職種が協力しながら治療にあたる多職種連携を実現しています。具体的には、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、身体療法士、臨床工学技士、ソーシャルワーカー、特定行為看護師*、緩和ケア認定看護師などが連携しながら患者さんの治療や全身管理を行っています。

平日(月~金曜日)の毎朝30分間、全職種が集まり多職種カンファレンスを実施し、すべての患者さんの全身状態、検査や治療の予定、ご家族の状況、主科の状況などについて情報を共有しています。

多職種カンファレンスの様子

多職種カンファレンスの様子

多職種連携によって、迅速かつスムーズに治療を進められるようになったことは、患者さんにとっても大きなメリットであると思います。たとえば、リハビリを行う際にも、どのようにリハビリを進めていくのか、看護師や身体療法士、医師、それぞれの意見を統一することで、スムーズかつ積極的にリハビリを行っていくことができるようになりました。

特定行為看護師:高度かつ専門的な知識や技術が必要とされる行為を行うことができる看護師

横須賀市立うわまち病院 ICUで働くスタッフとは?

患者さんやご家族がハッピーだと思えることを行う

横須賀市立うわまち病院 ICUのスタッフ
横須賀市立うわまち病院 ICUのスタッフ

当院ICUのスタッフは皆、患者さんやご家族のことを第一に考え「患者さんやご家族がハッピーだと思えることをどんどん実践する」ことを目指しています。そのために、患者さんやご家族と密にコミュニケーションをとりながら、患者さんがどのような価値観を持っていて、どのような治療を望んでいるのかをスタッフで話し合いながら治療を行っています。

ICUにおいて、患者さんの回復を目指して高度な医療を提供することはもちろん大切です。しかし、長時間にわたり過度に緊張した状態を継続することは、患者さんやご家族の精神的負担につながると考えています。そのため、当院ICUでは少しでもICU滞在中の緊張感を和らげていただけるよう、病室の環境を整えて好きな音楽を聞いて過ごしていただいたりしています。また、来院できないご家族の写真や音声、動画などを持参していただき、患者さんに共有する取り組みも積極的に取り入れています。

患者さんやご家族に寄り添ったコミュニケーションを

私たちICUは、「急性期の終末期」の患者さんを担当することが数多くあります。急性期の終末期とは、予期せぬ形で急激に重症化してしまうことを指します。中には、突然ICUに運ばれ、命を落としてしまうケースもあります。

突然重症化するため心の準備をする時間がなく、患者さんのご家族が状況を受け入れることができないケースも少なくありません。私たちは、できる限りご家族へ状況を共有しながら、患者さんやご家族に寄り添ったコミュニケーションをとるよう努めています。

ご家族へ患者さんの状態や今後の治療スケジュールなどについて説明するときには、できるだけわかりやすくお伝えするよう心がけています。ご家族から「医療知識が乏しい中で説明されてもよくわからない」というご意見をいただくことがあるからです。ご家族の気持ちに配慮しながら、必要な情報をわかりやすい言葉で共有するようにしています。

ICUスタッフによる院内活動

院内活動によって患者さんの重症化を防ぐ

当院では、ICUスタッフが中心となり、入院中の患者さんの重症化を防ぐためにさまざまな活動を行っています。

CCOT(Critical Care Outreach Team)

CCOTとは、院内で具合が悪くなりそうな患者さんを事前に発見するための活動で、ICUの特定行為看護師あるいは集中ケア認定看護師が毎日1〜2時間かけて各病棟を回診します。急変しそうな患者さんを発見し、必要な処置がある場合には、主科や私たちICUの医師に報告がなされ、医師が適宜介入を行いながら重症化を抑えるために尽力しています。

RRS(Rapid Response System)・MET(Medical Emergency Team)

RRSは、特定行為看護師や集中ケア認定看護師が担当し、具合が悪くなっている患者さんを見つけ、必要な処置を行う活動です。一方、METは、ICU・救急科・内科の医師で構成され、すでに重症化し、緊急で処置を行わなければいけない場合に活動しています。

人工呼吸器ラウンド

人工呼吸器ラウンドでは、人工呼吸器が装着されている患者さんを対象に、呼吸ケアチームが、週に1度回診を行い、人工呼吸器が安全に管理されているかを確認しています。また、人工呼吸器の装着に伴い起こりうる合併症の予防や早期離脱を目指した活動を行っています。

なお、呼吸ケアチームは、ICUの医師、集中ケア認定看護師、臨床工学技士、理学療法士、栄養士から構成されています。

人工呼吸器ラウンドの様子
人工呼吸器ラウンドの様子

栄養カンファレンス

栄養カンファレンスでは、週に2回、医師、看護師、管理栄養士が集まり、ICUの患者さんの栄養状態の評価を行っています。そのうえで、どのような栄養が必要なのか話し合い、患者さんの栄養状態の改善をはかっています。

栄養カンファレンスの様子
栄養カンファレンスの様子

抗菌薬適正使用支援チーム(AST)カンファレンス

抗菌薬適正使用支援チーム(AST)カンファレンスでは、抗菌薬適正使用支援チームが、院内で発生した血液培養陽性症例や、特定抗菌薬の長期使用症例を対象に毎週1〜2回カルテ回診(2019年4月以降は病棟回診も検討中)を行っています。抗菌薬適正使用の推進や重症化の予防を目指すと共に、重症感染症患者さんの把握を目的に活動しています。なお、抗菌薬適正使用支援チームは、抗菌化学療法認定薬剤師を中心に私を含む感染制御チーム(ICT)の医師、感染管理看護師(ICN)、検査技師から構成されています。

牧野 淳先生からのメッセージ

「患者さんが自分の家族だったら」と常に考えて治療にあたっている

牧野先生

当院のICUスタッフは皆、「もしも自分や自分の家族が患者として入院・入室したときに何を望むか」と常に考えながら、治療や全身管理にあたっています。

実は私にも、身内が大病を患った経験があります。一時期、余命宣告を受けたこともあり毎日が地獄のような日々でした。そのときに、医療者から伝えられる一言一句が患者さんやその家族にとっていかに大きなインパクトを与えるかということを痛感させられました。その経験を経て、「患者さんが自分の家族だったらどう思うだろうか」と考えながら治療にあたるようになりました。

今後、当院ICUでは特定の病気や臓器にこだわらず、どんな患者さんでも診ることができる組織にしていきたいと思っています。まだまだ未熟ではありますが、私たちは今後も、地域の皆さまに寄り添いながら回復のお手伝いをしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。