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弁膜症の治療には、薬で心不全などの症状をコントロールする内科的治療と、心臓の弁を根本的に治療する外科的治療(手術)があります。手術の方法は主に「弁形成術」と「弁置換術」に分けられます。メリットとデメリット、合併症など、気になることがあれば主治医とよく相談することが大切です。
今回は、弁膜症の治療の選択肢、手術の合併症と対策について、湘南厚木病院の山本信行先生にお伺いしました。
弁膜症の治療の選択肢は大きく分けて2つあります。薬を使用する内科的治療と、手術で根本的な治療を行う外科的治療です。
薬でうまく病気をコントロールできれば、場合によっては心不全を起こすことなく、これまでと変わらない生活を続けられる患者さんもいらっしゃいます。そのため、心臓の弁に異常が発見されたからといって、すべての方が手術をするわけではありません。内科的な治療を行う場合は、手術しなくても済むように、弁の異常によって起こる症状をどれだけ抑えられるかが重要になります。
内科的治療では、心臓のはたらきを助けるために、基本的には利尿剤を使用します。心不全になると、体内に水分やナトリウムが溜まって、息切れや足のむくみなどの症状が現れます。利尿剤を使用することで、溜まった水分やナトリウムを排出し、心不全の症状を軽減することができます。
薬を飲み続けている患者さんでも、ある程度症状が進行すると手術が必要になってきます。薬で症状をコントロールすることはできますが、弁の動きが改善するわけではなく、根本的な治療にはならないためです。人によって経過に差はありますが、投薬で症状が抑えられたとしても、弁の状態は徐々に悪くなっていきます。薬を飲むことで弁そのものが治る、あるいは手術しなくてもよいのだと思われる患者さんも多いのですが、そうではないということに注意が必要です。
ただし、手術は体への負担が大きいため、高齢の患者さんの場合、薬で症状を抑えられればそのまま様子をみることもあります。
心臓の壊れた弁を根本的に治すためには、投薬ではなく手術が必要です。手術の種類は大きく分けて「弁形成術」と「弁置換術」の2種類があります。患者さんの症状や、血液の逆流の程度、心機能の程度などから、手術すべきかどうかを検討します。
弁形成術は、自分が元々持っている弁をできる限り残し、修復する形で治療する方法です。症状が軽い段階では弁形成術を選択することが多いです。自分の弁を残す方法であることから、弁の状態が再び悪くなってくる可能性はあるため、その場合は再手術が必要になります。
弁置換術は、自分の弁を切り取って人工弁に置き換える方法です。人工弁には「生体弁」と「機械弁」があります。
生体弁は、動物の心臓などの材料を用いて作られた人工弁です。血のかたまり(血栓)ができにくいという長所がある一方、機械弁に比べ耐久性は低く、10~15年で弁の状態が悪くなってきます。その場合は再手術が必要になります。若い方の場合、生体弁を使用すると、将来的に再手術することになるため、別の方法をおすすめする場合があります。
機械弁は、プラスチックなどの材料を用いて作られた人工弁です。耐久性が高く、ほとんど再手術しなくて済むという長所がある一方、血栓ができやすく、血栓予防薬のワルファリンを毎日欠かさず飲み続けなければなりません。
次の項目では、ワルファリンの注意事項についてお話しします。