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発達障害の対策、子どもへの関わり方で大切なこと

発達障害の対策、子どもへの関わり方で大切なこと
本間 博彰 先生

星総合病院 精神科 部長

本間 博彰 先生

目次
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発達障害の子どもと接するときには、本人の特性に合わせて接し方を工夫することや、子どもが置かれている環境に配慮することが大切です。星総合病院では、子どもの話しやすい環境をつくって対話することをはじめ、子どもが安心して診療を受けられるようにさまざまな工夫を行っています。

今回は、発達障害の子どもへの対策や関わり方、病院の取り組みなどについて、同院精神科部長の本間博彰先生にお話を伺いました。

 

発達障害のひとつであるADHDは、不注意、多動性、衝動性が特徴です。記事1『子どもの発達障害とは? その特徴について』でもお話ししたように、集中できなくて動き回ったり、思いついたことをその場で実行したりする傾向があります。

ADHDの薬物療法では、衝動性を抑える作用のある薬剤を用います。水面の波が静まるように、ざわざわと揺れ動いていた気持ちが、ぴたっと静かな状態になるというくらいに、気持ちを落ち着かせるような薬剤もあります。脳の報酬系*と呼ばれる回路にはたらきかける作用があるため、脳の神経細胞の興奮の伝達に関わるドーパミンのはたらきが強まり、気持ちが穏やかになったり、頑張ろうと思えたりするようになります。

*報酬系…人が達成感を得るときに神経伝達物質のドーパミンを放出する脳内回路。

ADHDの子どもの場合、本人の行動を少しでも制御できるようにサポートすることが治療のテーマです。そのため、薬物療法だけでなく、子どもを褒めて評価してあげることが重要です。人はご褒美があると、それを励みにしてさらに頑張ることができるためです。

ただし、「これができたら〇〇を買ってあげる」といった物との交換条件は、子どもの自尊心をはぐくむことにはつながりません。子どもは徐々に並外れた要求をしてきて、トラブルになる可能性もあります。「頑張ったね」「よくやったね」といった言葉による評価が大切です。

子どものどんなところを褒めたらいいの?

日常生活の中で、子どものよいところを探しましょう。たとえば、いつも落ち着かない子どもでも、下の兄弟がいる場合には、兄弟の面倒を見る瞬間というものがあるはずです。ちょっかいを出していじめてばかりだったとしても、きょうだいが泣いていたら、頭を撫でてあげたりするのではないでしょうか。そのとき、子どもに対して「ありがとうね!助かったよ」と心から伝えてあげたら、子どもは誇らしく思うでしょう。親としては、子どもの悪いところほど気になってしまうかもしれませんが、よいところを見逃さないことが大切です。

 

自閉症スペクトラム障害の子どもは、コミュニケーションをとることが苦手です。よりうまくコミュニケーションをとるためには、「共通基盤」がどれだけあるかということがポイントになります。共通基盤とは、お互いの認識の中で共通している前提部分のことです。共通基盤があれば、さまざまなことが相手に通じやすくなります。

たとえば、医師と看護師の間には、専門分野という具体的な共通基盤があります。とくに、外科などの体を扱う診療科では、医師が手を差し出したら看護師がメスを渡すというように、言葉を省略してもいろいろなことが伝わります。

学校では、子どもたちのやるべきことは常に変化していきます。基盤よりも変化のほうが多くなると、自閉症スペクトラム障害の傾向がある子どもは混乱し、苦しくなって教室を出てしまうこともあります。

こういった行動を防ぐためには、教える側にも工夫が必要です。子どもがどれくらい授業を理解しているかよく確認することや、生徒が授業中にやるべきことは何なのか常に明らかにすること、授業1コマの中でも勉強を教えていく順序を工夫することなどによって、発達障害の傾向がある子どもとのコミュニケーションがスムーズになるのではないかと考えています。

 

私が診療していたことのある、自閉症スペクトラム障害の子どもについてお話しします。その子は、小学校低学年の頃に祖父を亡くし、続けて父親を亡くしていました。母親の悲しみは大きく、生活の面でも不安があり、それが子どもに影響していたのでしょうか。その子は学校で、ある女の子に対して「食べたい」と言うようになりました。

診察を通して、私は、その子が言葉の意味の通り「人を食べたい」と言ったわけではないと思いました。発達障害の子どもは強いこだわりを持つことがあり、その子も、女の子の鼻が気になっているようだったからです。また、男の子にとっては、母親との関係が密であるほどマイナスな面が出てくる場合があることから、健やかな成長のために遊びの支援をすることがよいだろうと考えました。

そこで私は、子どもを支援する大学生を定期的に派遣する「フレンドリーパートナー」という事業をつくって、大学生の男性に、2週間に1回その子のところに通ってもらうようにしました。若い男性が体を使って自分と一所懸命遊んでくれたという体験を経て、その子はやがて元気になっていき、「食べたい」と言うことはなくなりました。成長してからも、問題なく生活することができています。

発達障害の傾向は、その人の特性ですから、生涯にわたって続くものかもしれません。しかし、環境や人との関係によっては、早く不安を処理したり、健全な生活を送ったりすることができるようになります。その子にとって何が必要なのか、何をすれば明るく自信を持って生きていけるのかという点において支援をすべきだと考えています。

基本的には、子どもにもっと目を向けていくことが大切です。関心を向けられている子どもは、大人の期待に応えてくれます。悪い期待ではなくて良い期待をする、「よいことをしたね」「スポーツが得意だね」といったことを伝えてあげるとよいでしょう。

 

子どもに適切な支援をするためには、しっかりと話を聞いて、子どもの状況を知ることが大切です。その際、子どもとどれくらい対話できるかということがポイントになります。

子どもと話をするときは、できるだけ穏やかに話しましょう。赤ちゃんをあやすときのように、目と口を大きく開けて子どもを見ながら、ゆっくり、はっきりと喋ります。このように対話することで、子どもは緊張がほぐれ、初回の面接でもいろいろなことを話してくれます。

また、私が診察するときは、私のことを気に入ってもらえる努力をするように心がけています。少しでも気に入ってもらえれば、子どもは私の話をよく聞いてくれるようになるからです。そして、「この2週間の学校生活を教えてね」「家でどんなことをしているか教えてね」などと質問して、子どもにたくさんのことを話してもらいます。話せば話すほど自分の頭の中を整理することができますから、子どもの不安を処理することにもつながります。

他者の細かな行動を観察し、リスニングにつなげる「マイクロカウンセリング」という技術があります。人は、自分が喋るスピードよりも相手のほうが早口で喋ったり、大きい声で喋ったりしたら、うまく話せなくなるものです。そのため、子どもの喋り方よりも、少しゆっくり、トーンを落として喋ることが大切です。返事をするときも、相手がしゃべり終わってからわずかに遅れるくらいがよいといわれています。

子どもと対話するスキルを磨くことで、子どもたちもうまくコミュニケーションがとれるようになっていきます。発達障害の子どもと接する機会が多い方は、リスニングスキルや、マイクロカウンセリング技法を覚えると、よりスムーズに対話をすることができるでしょう。

親御さんをはじめ、医師や教員など、発達障害の子どもと接する人に求められることは我慢強さです。発達障害の子どもと長く接してきた方なら、子どもの言動によって心が動揺させられた経験を持っていることと思います。腹立たしいときもあるかと思いますが、それを抑えることが大切です。一方、子どもたちのほうも、そういう状況を経験してきているはずです。そのため、我慢強くて動じない人と接するときは、子どもたちも安心できるのではないかと思います。

 

発達障害の子どもが病院を訪れるときは、親に連れてこられたり、先生に受診をすすめられて来たりします。そのため、まずは、なぜ精神科を受診することになったのかということを確認します。誰がどんなことに困っているのか、誰の考えで受診したのか、子ども本人にも尋ねます。なかには、「ぼくも少し問題があると思ってるから来たんだ」と言う子どももいますが、気をつけなくてはならないのは、本人が困っていないのに問題があるかのように扱ってしまうということです。子ども自身の困り事は必ずあるはずですから、それを引き出すのが初回の仕事となります。

初診では、ある程度は標準化したインテーク(面接)が必要だと考えています。私の場合、質問する内容は決めてあり、それをもとにインテークを行っています。また、当院では、私が担当する初回の面接は約1時間かけて行います。ほかの職員が話を聞いてまとめるのではなく、医師自身が情報を集めたうえで診断することが重要だと考えています。

子どもの診察では、本人を尊重することがとても大切です。面接は、親子で一緒に行いますが、子どもが中学生くらいであれば、本人はどうしたいのか希望を確認することもあります。ひとりで話したいということなら、その通りにして、子どもを尊重したいという気持ちが伝わるように心がけています。

また、なかには、困っていることを尋ねても答えない子どももいますが、「お母さんはなぜ君をここに連れてきたの?」「お母さんはこう言っていたよ。君はどう思う?」などと質問し、私とのコミュニケーションだけでなく、子どもと親の間でもコミュニケーションをとってもらうようにしています。面接を通して「診察室ではコミュニケーションがうまくいく」ということが分かってくると、子どもは楽しそうに、いろいろなことを話してくれます。

 

本間先生

子どもにとって、親は最大の理解者です。ぜひ、発達障害に関するさまざまなことを勉強していただければと思います。しっかりと学ぶほど、親自身も落ち着くことができますし、子どもに接するときの対応についてもよいヒントが浮かぶようになるはずです。

また、困っているときはひとりで悩んだりせず、誰かに相談することが大切です。自分の中にたまった不安やストレスは、外に出すことが大事です。親が安定していて前向きな気持ちを持っていれば、それは子どもにとってもプラスに影響します。思うようにならないと感じても悲観的にならないで、ひとりで悩むことはやめましょう。困ったことや気になることがあれば、遠慮なくご相談ください。

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