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治療と仕事の「両立支援」とは?−熊本労災病院における取り組み

治療と仕事の「両立支援」とは?−熊本労災病院における取り組み
松村 敏幸 先生

熊本労災病院 循環器内科 部長

松村 敏幸 先生

椛谷 豊 さん

独立行政法人労働者健康安全機構 熊本労災病院

椛谷 豊 さん

目次
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病気を抱えても「治療と仕事を両立したい」と希望される方がいる一方で、病気や治療に対する知識/理解の不足や、職場におけるサポート体制不足により、離職に至るケースは少なくありません。 このような状況を受け、2012年8月、厚生労働省は「治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会報告書」を発表。現在、治療と仕事の両立をサポートする「両立支援」の重要性が注目されつつあります。

熊本労災病院では積極的に両立支援に取り組んでおり、循環器内科のスタッフのなかには、実際に心不全の治療と仕事を両立されている方がいらっしゃいます。同院 循環器内科部長の松村敏幸先生、両立支援コーディネーターの椛谷豊さんにお話を伺いました。

治療と仕事の「両立支援」とは?−熊本労災病院における取り組み

治療と仕事の両立を希望する方のためにさまざまな形でサポートする

「両立支援」とは、がんなどの病気に罹患された方に対し、その方が治療をしながら仕事を続けたり、職場へ復帰したりすることを目指して、さまざまな形で介入しサポートすることを指します。たとえば、両立支援コーディネーターが患者さんの代わりに病院と職場との間に立ち、患者さんの病状や治療方針、治療しながら継続できる業務内容などの情報共有を行い、調整を試みます。

両立支援

熊本労災病院では、2014年4月に「治療就労両立支援部」を設置しました。両立支援コーディネーターが、治療と仕事を両立したいと希望する患者さんのためにサポートを行っています。

どのような病気の患者さんが両立支援の対象になるの?

松村敏幸先生

基本的には、どのような病気でも両立支援の対象になる

どのような病気の患者さんであっても、基本的には両立支援の対象となります。なかでも当院の場合は、がん、脳卒中、糖尿病、メンタルヘルスなどの患者さんからの相談が多く寄せられています。

両立支援コーディネーターの役割とは?

患者さんを中心として、病院と職場の間で仲介・調整を行う

両立支援コーディネーターは、患者さんを中心として病院と職場の間に立ち、スムーズな情報の共有と、両立に向けた調整を進める「橋渡し役」を担います。

このときに大切なことは、「患者さんが中心である」という点です。そもそも患者さんが本当に治療と仕事を両立したいと考えているのか、復職するなら以前の職場を希望しているのかという前提の部分からしっかりと話を伺い、サポートの方向性が患者さんの希望にマッチするように心がけています。

熊本労災病院 両立支援コーディネーターの椛谷豊さん
熊本労災病院 両立支援コーディネーターの椛谷豊さん

実際にはどのような相談が寄せられるの?−具体例と対応をもとに解説

病気や治療に関して自分から職場に説明できないという例は多い

両立支援のなかではさまざまな相談に対応しますが、実際に相談の内容として多く寄せられるのは、以下のような例です。

  • 職場のなかで、病気に対する理解を得られにくい
  • 病状の変化や治療による副作用のコントロールを自分から職場に説明できない
  • 職場から、病気や治療の説明を書面で用意してほしいと依頼された

このような相談が寄せられた場合には、主治医やスタッフに同行して一緒に話を聞き、さらに患者さんとも話し合い、職場にうまく情報共有する方法を考えます。また、厚生労働省が発行する両立支援のガイドラインに沿って、書面の様式例をカルテに組み込むといった方法で、職場へのスムーズな情報共有をサポートします。

両立支援の具体的な流れ−脳卒中のケースを例に

脳卒中とは、脳の血管に障害が起こることで生じる病気の総称です。脳卒中には、脳の血管がつまる「脳梗塞」、脳内の細い血管が破れて出血を起こす「脳出血」、脳の表面の血管に発生したこぶ(脳動脈瘤)が破れる「くも膜下出血」などが含まれます。

脳卒中の患者さんが当院で治療を受けられた場合、必ず、入院中にご本人とご家族にお会いする機会を設けます。そこで、両立支援の取り組みをご説明し、実際に困っていることがないかを伺います。そのときにお困りのことがあれば、両立支援コーディネーターが主体となり、すぐに介入を始めます。一方、その時点で特に困っていることがない場合には、必要なときにご連絡いただくようお伝えしています。

松村先生、椛谷さん、山下さん

脳卒中になった場合、一般的には、発症直後の治療期間、機能回復のためのリハビリテーション期間、日常生活に戻るための期間という3つの経過をたどります。治療後すぐにもとの生活に戻れるというケースは少なく、発症から数か月、あるいは1年以上の期間を経て仕事に復帰されるケースが多いです。そのため、患者さんが当院からリハビリテーションの病院に移るときには、両立支援コーディネーターが、治療に関する情報や職業情報などを次の病院に共有し、継続的な支援ができるよう依頼しています。

患者さんがリハビリテーションの病院を退院される前には、その時点の状況を伺います。必要に応じて、両立支援コーディネーターが病院に出向くこともあります。

その時点で、すでに復職されている、あるいは復職のめどが立っていれば、問題がないことを確認したうえで、支援を一旦終結します。一方、復職の希望があるけれども叶っていない場合には、傷病手当金などの保障制度を提示したり、ハローワーク(公共職業安定所)などの外部機関と連携をとって就労支援につなげたりすることがあります。

両立支援にかける思い、これからの展望

全国で両立支援コーディネーターの養成研修を行い、普及活動を進める

労働者健康安全機構」では、両立支援コーディネーターの養成研修を開催しています。熊本県でも、2018年11月に両立支援コーディネーターの養成研修を実施し、全国から受講者が集まりました。

今後もこのような普及活動を継続し、全国各地にいる両立支援コーディネーターが困っている患者さんの相談窓口になることができればと考えています。受け皿が増えれば、そのぶん困っている方をサポートすることができるでしょう。そして、両立支援という概念そのものが、今よりもさらに、社会に浸透していくことを期待しています。

*両立支援コーディネーターの養成研修については、「労働者健康安全機構のHP」をご覧ください。