院長インタビュー

和歌山県の医療提供と臨床研究の中心的存在、和歌山県立医科大学附属病院

和歌山県の医療提供と臨床研究の中心的存在、和歌山県立医科大学附属病院
山上 裕機 先生

和歌山県立医科大学 特別顧問・探索的がん免疫学講座教授、医療法人南労会 紀和病院 院長 兼 腹...

山上 裕機 先生

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和歌山県北部にある和歌山県立医科大学附属病院について、病院長を務める山上裕機先生は、特定機能病院としてがん診療や救急医療などより高度な医療を提供する病院、和歌山県に住む方のために開かれている病院、医療人育成や臨床研究を行う機関、という3つの特徴を有していると言います。同院の沿革、診療体制、教育体制についてお話を伺いました。

病院外観
病院外観

当院の歴史は、和歌山県立医学専門学校附属医院として1945年2月に開院したことから始まります。1949年8月に和歌山県立医学専門学校附属病院へと病院名称を変更した後、病棟改築と機能拡充を繰り返してきました。

院内の入院センターの様子
院内の入院センターの様子

大きな転機となったのは、1999年3月の新病院竣工と5月に新病院での診療を開始したことです。2000年6月に救命救急センター設置、2003年1月にドクターヘリ就航、2007年10月に化学療法センター設置、2011年4月には高度救命救急センター指定など、医療設備の充実と提供可能な医療の幅を広げてきました。

当院の3つの特徴の形成には、大学病院としての使命を負っていることと地理的要因が関係しています。

当院には大学病院として、医学教育と研修を実施する使命と責務があります。医学部生や看護学生に対する医学教育のみでなく、研修医など若手医師に対する指導を実施しています。臨床研究センターでは、臨床研究や治験の実施と一連のサポートを実施することで、地域だけでなく日本全体の臨床および研究をリードできるような人材の育成に努めています。

地理的要因ですが、和歌山県は南北に長く、また県内には一般診療を主とする県立病院とがんセンターがありません。当院は県内唯一の特定機能病院として、また都道府県がん診療連携拠点病院として承認を受けていることから、和歌山県全体や大阪府南部地域からも患者さんを受け入れています。そのため、緊急かつより高度な対応が必要となる超急性期医療の提供と、公立病院として地域に開かれた病院であることが当院に求められています。

手術風景
手術風景

がんは和歌山県内における死亡原因の上位を占めています。県全体でがん診療体制のさらなる充実を目指し、当院は都道府県がん診療連携拠点病院としてがん診療の質向上と連携協力体制の整備を進めています。

当院では特に、県内での死亡率が高い胃がん肺がん大腸がんと、進行性のものが多いすい臓がん治療に注力しています。がん診療では、がん診療に特化した腫瘍センターを中心に複数の部門が連携する方法を採用しており、患者さん中心のがん診療を実現しています。

当院のがん診療では、該当する臓器を扱う診療科と腫瘍センターが中核的存在として活動しています。腫瘍センターは、薬物療法部門・放射線治療部門・緩和ケアセンター・がんゲノム医療部門・がん登録室で構成され、治療に関する部署やがん相談支援センターと連携しています。

2019年9月には膵がんセンターを開設予定です。開設後は治療や病理診断などのすい臓がん診療にかかわる機能、将来的には基礎研究や臨床研究などの事業も集約予定で、日本における膵がん診療と研究を牽引する一大拠点になることを期待しています。

2018年4月にがんゲノム医療連携病院に選定され、がんゲノム医療中核拠点病院である京都大学医学部附属病院との連携のもと、当院でもがん遺伝子検査外来でがんゲノム医療を開始しました。

同じ臓器のがんでも患者さんによって遺伝子の変化の程度や治療薬の効き方などは異なります。外来では、がん遺伝子パネル検査という検査により、がんに関連する遺伝子の変化の状態を調べることで、がんの診断や治療に役立てています。

2019年6月1日にがん遺伝子パネル検査が保険収載されましたが、現在は対応に向けての準備中のため、がんゲノム診療は自由診療で行われており、費用のおおよその目安は39万円程度です。検査内容などの詳細については、当院のがん相談支援センターまでお問い合わせください。

2003年から同院で活躍するドクターヘリ
2003年から同院で活躍するドクターヘリ

当院の救急科は高度救命救急センターとして指定を受けており、和歌山県および近隣地域の救急医療に対応しています。

特に当院のセンターは大学病院に併設されていることから、学内の各診療科に所属するスタッフを取りやすいことが特徴として挙げられます。そのため、ショック状態・交通事故など外因性疾患のほか脳梗塞など内因性疾患のように、一刻を争う患者さんを24時間体制で受け入れ治療しています。

和歌山県は南北に長く当院は県北部に位置していることから、県南部など遠方で発生した重篤患者への対応が長年の課題でした。

この問題を解消すべく、当院ではドクターヘリを導入して2003年から就航しています。医療機器を搭載しており出動時には医師と看護師を搭乗して現場に急行、搬送しながら治療開始するため、ドクターヘリは「空飛ぶ救命室」と呼ばれることもあります。

ドクターヘリ導入により、当院から100km圏内は約30分で到着できるようになったことから、搬送時間と治療開始までの時間を短縮することに成功しました。

山上裕機先生

大学病院として、医学の発展に欠かすことのできない臨床研究のさらなる発展を目指し、臨床研究センターを2014年に発足しました。臨床研究センターは、治験管理部門・データ管理部門・臨床研究支援部門・臨床研究教育部門・臨床研究管理部門の5部門で組織されていて、本学および他医療機関での臨床研究実施のほか、治験事業のサポート、臨床研究に関する教育などを業務としています。

医療の進歩は日進月歩であるといわれています。日々進化し続ける最新・最高の医療を1人でも多くの患者さんへと提供するためにも、私たち医療者には日々の学びと研究思考が欠かせません。医療に対する精神の涵養、基礎研究の充実、臨床研究などを通じた現場への応用、そしてこれらを実現する医療人を育成することの重要性を痛感しており、特にこれらは大学病院である当院の果たすべき使命であると考えています。

都市部と地域との間での医療格差が叫ばれて久しいです。そうしたなか、各地にある医療機関が危機意識を持ち解決策を考え実行できれば、地域全体ひいては国全体の医療提供体制は改善され、提供可能な医療の質はよくなっていくと信じています。

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  • 和歌山県立医科大学 特別顧問・探索的がん免疫学講座教授、医療法人南労会 紀和病院 院長 兼 腹腔鏡手術センター(ラパロ・センター)長 兼 膵臓・胆のうセンター長

    山上 裕機 先生

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