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肝臓がんはどのようにして発症するの?−原因や治療法について

肝臓がんはどのようにして発症するの?−原因や治療法について
森田 泰弘 先生

東京都立多摩総合医療センター 外科部長

森田 泰弘 先生

目次
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肝臓がんは、日本におけるがんによる死因第5位1)のがんです。原因としては、B型肝炎やC型肝炎ウイルスが多くを占めますが、近年は非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)によるものが増加傾向にあります。

今回は、肝臓がんの種類や原因、症状、治療法について、東京都立多摩総合医療センターの外科部長である森田泰弘先生にお話を伺いました。

肝臓がんとは?その種類について

肝臓は、体の代謝や解毒作用、胆汁(消化液)の分泌などの重要なはたらきを担う臓器です。この肝臓にできたがんを肝臓がんといい、大きく「原発性肝がん」と「転移性肝がん」に分かれます。

原発性肝がん−肝細胞がんや肝内胆管がん

原発性肝がんは、肝臓そのものからできるがんを指します。

原発性肝がんにはいくつかの種類があり、約95%を占めるのが肝臓を構成する肝細胞ががん化する「肝細胞がん」です。そのほか、肝臓の中にある胆管(胆汁の通り道)から発生する「肝内胆管がん」が約4%、残る1%は、細胆管細胞がんや粘液嚢胞(のうほう)腺がんなどのまれながんであるといわれています。2)

転移性肝がん

転移性肝がんは、他の臓器のがんが血流に乗って、肝臓に転移してくることによって起こるがんです。

もっとも多いのは、大腸がんの転移です。そのほか胃がん、すい臓がん、腎臓がん、子宮がん、卵巣がん、肺がん、甲状腺がんなど、さまざまな臓器から転移する可能性があります。

肝臓がんの原因

原発性肝がんの発症原因として、B型肝炎・C型肝炎ウイルスへの持続感染、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などが挙げられます。

B型肝炎・C型肝炎ウイルスの持続感染

肝臓がんの原因の多くを占めるのが、B型肝炎・C型肝炎ウイルスへの持続感染による肝臓の慢性的な炎症です。肝臓がんの約70%がC型肝炎ウイルス、約10%がB型肝炎ウイルスによるものといわれています。3)

B型肝炎・C型肝炎ウイルスに対しては、ウイルスを体から除去する薬物治療を行います。C型肝炎ウイルスは、治療によって完治可能で、B型肝炎ウイルスは完全に除去することは難しいですが、ウイルス量を減少させることは可能です。

しかし、これらのウイルスが体内から完全に消失した、あるいはほとんど消失した場合であっても、その後肝臓がんを発症するリスクはあります。

B型肝炎・C型肝炎ウイルスへの感染経路−「水平感染」と「垂直感染」

B型肝炎・C型肝炎ウイルスへの感染経路は、大きく水平感染と垂直感染に分かれます。

水平感染の原因には、医療現場などでウイルス保有者に使用した注射器を誤って刺してしまう針刺し事故があります。そのほか、ピアスや刺青などに使用した針の使い回し、性行為などによっても感染します。

垂直感染とは、お母さんから子どもへ感染することを指します。近年はワクチンなどによって感染が予防できるようになってきています。

アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

肝臓がんの発症原因の約20%が、アルコール性肝炎や、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:ナッシュ)などです。3)特に近年、NASHの患者さんが増加傾向にあります。

NASHとは、飲酒や肝炎ウイルスへの感染などがないにもかかわらず、肝臓に炎症が起こる病気を指します。NASHは、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧などの生活習慣病が引き金となることがあります。

肝臓がんの症状

初期症状はなく、進行しても特徴的な症状はない

肝臓がんでは、がんの初期にみられる症状はほとんどありません。がんが大きくなってくるにつれて、体のだるさや体重減少、肝臓がある右季肋部(きろくぶ)(肋骨のあたり)の痛みなどを生じることがありますが、ほとんどの場合、進行していても特徴的な症状がみられることはありません。

肝臓がんがみつかるきっかけ

多くは検診でみつかる

肝臓がんは症状からみつけることは難しく、多くの場合、定期検査や健康診断、人間ドックなどで行う腹部超音波検査(エコー検査)や採血検査で肝臓がんを指摘されます。

先ほどお話ししたような、B型肝炎・C型肝炎ウイルスに感染している、あるいは過去に感染歴のある方や、アルコール性肝炎、NASHなどの方は、肝臓がんを発症するリスクが高いといわれているため、定期的に検査を受けることで、肝臓がんの早期発見に努めることが重要です。

肝臓がんの治療法

肝臓がんの治療法は、原発性肝がんか転移性肝がんか、また肝細胞がんか肝内胆管がんかでも、治療の内容が異なります。ここでは、もっとも多くを占める肝細胞がんの治療法についてご紹介します。

肝細胞がんの治療法として、主に以下の5つが挙げられます。

  • 外科的肝切除
  • ラジオ波焼灼療法(RFA)
  • 肝動脈化学塞栓療法(TACE)
  • 化学療法
  • 肝移植

外科的肝切除

外科的肝切除では、肝臓の一部をがんごと取り除く治療を行います。従来は、お腹を大きく開けて行う方法が一般的でしたが、近年は腹腔鏡*を用いて行う方法が広く行われるようになってきています。

基本的には、がんが3個以内の場合に適応となります。ただし3個以上多発している場合でも、がんのサイズが大きく破裂のリスクが高いと考えられる場合には、破裂を防ぐ目的で大きながんを切除することがあります。

(※外科的肝切除に関する詳しい内容は、記事2『肝臓がんに対して行う腹腔鏡下肝切除術−安全性の高い手術を行う工夫について』をご覧ください)

*腹腔鏡…お腹の中を観察するための小型カメラ

ラジオ波焼灼療法(RFA)

ラジオ波焼灼療法(RFA)とは、超音波で確認しながら、皮膚から肝臓にあるがんに向けて電極針を刺し、ラジオ波という高周波を流すことでがんを焼灼する治療法です。

基本的には、がんが3個以内で、大きさが3cm以内のものがRFAの適応となります。

肝動脈化学塞栓療法(TACE)

がんが4個以上ある場合には、肝動脈化学塞栓療法(TACE)が行われます。TACEは、カテーテルと呼ばれる細い管を、足の付け根の大腿(だいたい)動脈から肝動脈に向けて進めていき、カテーテルから抗がん剤を注入したり、肝動脈に塞栓物質を詰めてがんに栄養を供給している血流を遮断したりする治療法です。

通常、根治は難しいとされていますが、なかにはがんが壊死して根治に至ることもあります。

化学療法

がんの数が4個以上であったり、他臓器へ転移していたりする場合には、化学療法が選択されます。主に、分子標的治療薬と呼ばれる、正常細胞を傷つけずにがん細胞だけを狙い撃ちする薬剤が用いられます(副作用がないわけではありませんが、正常な細胞へのダメージを抑えることが期待できる薬剤です)。

肝移植

患者さんのなかには、ここまでお話ししてきた治療に到底耐えられないほど、肝機能が悪い方がいらっしゃいます。そのような方にとって、唯一残された治療法といえるのが肝移植です。

肝移植には、生体肝移植と脳死肝移植がありますが、日本で行われているのは、大部分が健康なドナーから肝臓の一部を移植する生体肝移植です。肝移植は、ミラノ基準によって、3cmかつ3個以下、1個の場合には5cm以下の肝細胞がんの患者さんが適応とされています(2019年9月時点)。

続く、記事2『肝臓がんに対して行う腹腔鏡下肝切除術−安全性の高い手術を行う工夫について』では腹腔鏡を使った外科的肝切除について詳しくお話しします。

【参考】

1)人口動態統計(厚生労働省大臣官房統計情報部編)2017

2)第 19 回 全国原発性肝癌追跡調査報告 2006~2007

3)平成27年度 肝がん白書