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糖尿病による目の合併症に対する検査と治療——糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の検査と治療について解説

糖尿病による目の合併症に対する検査と治療——糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の検査と治療について解説
田口 朗 先生

医療法人社団 育生會 山口医院 院長

田口 朗 先生

目次
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自覚症状を伴わないまま、病気が進行していることもある糖尿病網膜症。本記事では、糖尿病網膜症の検査と治療および、見えづらさに直結する糖尿病黄斑浮腫の治療について、医療法人社団 育生會 山口医院の院長である眼科医の田口 朗(たぐち ほがら)先生にお話を伺いました。

糖尿病網膜症についてはこちらをご覧ください。

はじめに、眼底検査を実施します。眼底を医師が診て、黄斑部も調べたほうがよい場合に光干渉断層計(Optical Coherence Tomography:OCT)検査を、血管を撮影したほうがよい場合に光干渉断層血管撮影(Optical Coherence Tomography Angiography:OCTA)検査や蛍光眼底造影検査を行います。

眼底検査

眼底検査は、網膜や網膜の血管の状態を確認するために行います。目に光を当てて、瞳の奥をのぞく検査であるため、瞳孔が縮まらないように瞳孔を広げる目薬(散瞳剤)を使用します。散瞳剤を点眼すると、4~5時間はまぶしく見え、手元にピントが合いにくい状態となるので、運転や書類の読み書きなどはできなくなります。そのため、受診の際は、可能であれば検査後に予定のない日を選んでいただき、車や自転車の運転をしないようにお伝えしています。

OCT画像
 

OCTを用いた検査は、網膜の中心部分である黄斑部を詳しく調べるために実施します。具体的には、網膜の断層撮影をすることによって、網膜組織を断面として捉えることができ、特にむくみの程度、増殖膜の有無や牽引の程度、病変が網膜のどの層にあるのかなど、より正確な状態を把握することができます。検査の実際は眼底カメラによる検査とほぼ同じ要領で目の中に弱い光を当ててのぞくだけです(眼底カメラによる検査よりまぶしくありません)。

OCT検査によって、網膜の状態を可視化し、定量的に評価できるようになりました。治療効果を判断しやすく、患者さんに説明しやすくなった点も、OCTの有用性のひとつであると考えています。

OCTA画像
OCTA画像

OCTA検査は、OCTを用いて、網膜血管を描写する検査方法です。従来、血管を見るためには造影剤を用いた蛍光眼底造影検査が必要でした。しかし、造影剤には、アレルギーによるアナフィラキシーショックを引き起こす危険性や、特に腎疾患のある方には腎障害を増悪させる副作用の可能性がありました。

OCTAでは、糖尿病網膜症の重要な所見である毛細血管瘤や閉塞、新生血管の状態を、造影剤を注射せずに描出することが可能です。OCTA検査は、糖尿病の合併症である腎症を患う方に対しても体への負担の少ない検査といえます。ただし、蛍光眼底造影検査のほうが診断に有用な場合もありますので、どちらの検査を行うかは症例によって異なります。

糖尿病網膜症は自覚症状がないままに進行することが多い病気ですので、糖尿病と診断されたら、できるだけ早く眼科を受診し、検査を受けていただきたいと思います。その後は、病状に応じて定期的に眼底検査を受けていただき、早期発見や適切な治療開始に努めます。以下にそれぞれの病期で、受診を推奨する目安を記します。

<眼科を受診すべき頻度の目安>
・糖尿病患者さんで、糖尿病網膜症を発症していないと診断された方
半年~1年の頻度での受診を推奨

・単純糖尿病網膜症と診断された方
3~6か月の頻度での受診を推奨

・前増殖糖尿病網膜症と診断された方
1~2か月の頻度での受診を推奨

・増殖糖尿病網膜症と診断された方
2週間~1か月の頻度での受診を推奨

・黄斑部に症状の出ている方
1か月ごとの頻度での受診を推奨

糖尿病網膜症は、自覚症状がないままに進行していることもある病気です。それに加えて、血糖値や血圧のコントロール状況がよかったとしても、糖尿病網膜症の症状は改善しないこともあります。ですから、自覚症状や内科での血糖値や血圧のコントロールのみで判断することなく、眼科で定期検査を必ず受けるようにしていただきたいと思います。

糖尿病網膜症は高血糖状態が続くことで起こる病気であるため、その原因である糖尿病を進行させないことが大切です。内科的に血糖値や血圧などをしっかり管理していただくことは治療の大原則です。眼科では網膜症の状態に応じて、レーザー(網膜光凝固)治療や硝子体手術、硝子体注射を実施します。

山口医院 手術室の様子
山口医院 手術室の様子

網膜光凝固術、特に汎網膜光凝固術(はんもうまくひかりぎょうこじゅつ)は、新生血管や増殖膜などの増殖性変化を予防する目的で、毛細血管が詰まって虚血に陥った網膜にレーザー光線を照射する治療です。病状の悪化や進行を予防するための治療であり、見え方を改善させる治療ではない点に注意が必要です(後述する、黄斑浮腫に対する網膜光凝固術では視機能改善が得られることがあります)。広い範囲に網膜光凝固術を施行した場合は、治療後に視野が狭くなったり、暗いところで見えにくくなったりする場合もあります。両目を治療する場合、日にちを空けて何回かに分けて治療が必要になる場合もあります。見え方がよくならないからと諦めず、根気強く治療を継続、完成させることが重要です。効果が自覚されにくい治療ですから、治療中の経過など疑問が生じたら気兼ねなく主治医に相談してみてください。

増殖糖尿病網膜症に硝子体出血や牽引性網膜剥離が合併すると、著しい視力低下や視野欠損が起こります。放置すると失明に至る危険が高い病態です。

硝子体手術は、硝子体出血や牽引性網膜剥離に対して行われる治療です。出血や新生血管や増殖膜を取り除き、網膜剥離があれば網膜を元の位置に戻します。以前は時間もかかり侵襲の大きい手術でしたが、最近は手術器具の改良などによって、侵襲の少ない手術へと変わってきています。

ここで、先ほどお話しした、見えづらさに直結する病気である、糖尿病黄斑浮腫について詳しくご説明いたします。

糖尿病黄斑浮腫に対する治療

糖尿病黄斑浮腫とは、糖尿病によって傷んだ毛細血管から水分が漏れ出すことによって、黄斑部にむくみが生じた状態です。黄斑部はものを見る中心部分であるため、黄斑浮腫を生じると、ものがゆがんで見えたり、視力低下を引き起こしたりします。

また、糖尿病網膜症の重症度にかかわらず黄斑浮腫は起こりうるため、注意が必要です。

糖尿病黄斑浮腫に対しては、硝子体注射を行います。硝子体注射は、黄斑部に生じたむくみを緩和させるために、VEGF阻害薬や副腎皮質ステロイド薬を硝子体に注入するものです。どの薬剤を使用し、投与回数を何回にするかについては、患者さんの症状や全身状態などから総合的に判断しています。また、糖尿病黄斑浮腫の状態によっては、網膜光凝固術や硝子体手術を行ったほうがよい場合もあります。

糖尿病網膜症は、糖尿病による目の合併症といっても画一的なものではなく、患者さんによって病態は異なります。そのため、医師が患者さんに対して、それぞれの治療法の効果とリスクをきちんとご説明したうえで、一人ひとりの患者さんに応じた治療方針を決定することが大切であると考えています。

糖尿病網膜症に対する治療は近年めざましく進歩しており、失明に至るケースは減少してきていると思います。しかし、どんなに治療経過が良好であったとしても、糖尿病網膜症を完全に治して元に戻すことは困難であり、特に進行した症例では、ある程度の視力低下や視野狭窄などは免れないのが現実です。そのため、“いかに早期に発見して、早期治療に取り組むか”が重要です。早期発見につなげるために、糖尿病と診断されたら、まずは早めに一度眼科を受診し眼底検査を受けていただきたいです。そして、見え方が改善したとしても通院を中断してしまうことなく、根気強く定期検査や治療を続けていただきたいと思います。

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    日本眼科学会 眼科専門医日本網膜硝子体学会・眼科PDT研究会 PDT認定医日本神経眼科学会 神経眼科相談医日本眼科手術学会 会員日本緑内障学会 会員日本白内障屈折矯正手術学会 会員

    田口 朗 先生

    1990年から眼科医としてのキャリアをはじめる。京都大学大学院では網膜硝子体の過酸化活性について、ハーバード大学では加齢黄斑変性症に対する新しい治療方法についての研究に取り組む。
    現在は眼科手術の中でも特に網膜硝子体手術と緑内障、白内障手術を専門としながら、神経眼科領域(脳神経や全身の病気によって目が見えなくなったり、物が二重に見えたり、瞼の動きが悪くなったりする病態)にも興味を持ち、正確な診断、適切な治療、そして何より患者さんへの分かりやすい丁寧な説明を心がけて診療に当たっている。

    田口 朗 先生の所属医療機関

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