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聴神経腫瘍の治療——経過観察、手術、ガンマナイフ(放射線)治療

聴神経腫瘍の治療——経過観察、手術、ガンマナイフ(放射線)治療
長谷川 俊典 先生

小牧市民病院 医務局長 医療の質・安全管理室長 脳神経外科 部長 ガンマナイフ科部長

長谷川 俊典 先生

加藤 丈典 先生

小牧市民病院 脳神経外科 部長 医療情報システム室 室長

加藤 丈典 先生

目次
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聴神経腫瘍のほとんどが良性であり、それにより命を落とす可能性は低いといえます。そのため、治療に際しては、その後のQOL(生活の質)に焦点を当てて治療選択を行う必要があります。前ページでは、聴神経腫瘍の症状や原因、検査方法についてご説明しました。本記事では聴神経腫瘍の治療について、小牧市民病院の脳神経外科部長兼ガンマナイフ科部長の長谷川(はせがわ) 俊典(としのり)先生と、脳神経外科部長の加藤(かとう) 丈典(たけのり)先生にお話を伺いました。

聴神経腫瘍の治療については、大きく分けて4つの選択肢があります。

腫瘍が1cm以下と小さく、聴力低下などの症状が出ていない場合には、定期的にMRI画像を撮りながら外来で経過を見るという選択肢があります。当院の場合、経過観察となった際には最初は半年に1度、それ以降は1年に1度来院していただき、頭部MRI撮影を実施します。腫瘍が大きくなるペースには個人差がありますので、経過観察でしばらく腫瘍の大きさに変化がなかったからといって、定期受診を怠らないよう注意してください。

腫瘍が生命維持(呼吸や意識、循環の調節)に関与する脳幹を強く圧迫している場合には、手術が選択されます。また、腫瘍が比較的大きく、三叉(さんさ)神経症状(顔面の知覚低下や痛み)を伴う場合にも、手術を推奨しています。術後に聴力が低下する可能性もあります。

腫瘍がそれほど大きくなく、脳幹への圧迫が見られない場合は、ガンマナイフ(放射線)治療が適応となります。外科手術と比較して、顔面神経麻痺の発生リスクが極めて低い一方で、ガンマナイフ治療においても、聴力が低下する可能性はあります。すでに有効聴力を失っている(腫瘍発生側の耳では、電話で会話ができない程度の)場合には、顔面神経麻痺の発生リスクの低いガンマナイフ治療を推奨しています。

大きな腫瘍の場合には外科手術が適応となりますが、聴神経腫瘍においては、腫瘍のすぐ近くを聴神経や顔面神経が通っています。そのため、腫瘍の摘出を試みた際にそれらの神経を傷つけ、顔面麻痺などの合併症を引き起こしてしまう可能性もゼロではありません。

腫瘍の大きさや位置などから、摘出に際して神経を傷つけるリスクが高いと判断された場合には、腫瘍の全摘出を目的とするのではなく、腫瘍の一部を摘出してサイズを小さくすることを目的とします。外科手術によって腫瘍のサイズを小さくすることで、ガンマナイフ治療の適応とし、両者を併用するという選択肢です。

ここまで、聴神経腫瘍の治療法について解説してきましたが、そもそも“ガンマナイフ治療”とはいったい何を行う治療なのか、ご存じない方も多いと思います。以下では、ガンマナイフ治療の基礎的な情報について、解説します。

ガンマナイフとは、1968年に開発された定位放射線治療装置の名称です。ガンマ線(放射線)を、体内で異変が起きている部位(病巣)に集中して当てることで、その部位をナイフで切り取ったかのように治療することができます。脳腫瘍脳動静脈奇形などの治療に用いられています。

日本においては1990年に初めて導入されました。2019年12月現在では、日本全国の約50施設でガンマナイフ治療を受けることができます。当院でも、1991年5月より、ガンマナイフ治療を行っています。

ガンマナイフ治療では、頭部をフレームで固定してCT撮影やMRI撮影を行い、ガンマ線を当てるターゲットの位置を三次元的に定めます。そのうえで、コンピューターで治療計画を立てます。こうした設定を行うことで、病巣だけにガンマ線を当て、そのほかの正常な部位には極力ガンマ線を当てないようにしながら、治療を行うことができます。また、ガンマナイフを用いることで、開頭手術を行わなくても脳深部にある病巣を治療することが可能となります。

頭部を固定するフレームは、頭蓋骨を4か所ピンで留める必要があるため、治療時には局所麻酔を用います。加えて、当院では静脈注射によって麻酔をかける静脈麻酔も併用します。静脈麻酔によって眠った状態での治療となるので、治療時にはほとんど痛みを感じません。

また、2016年に日本で製造販売承認を取得したガンマナイフ治療機器“Icon”では、頭部をフレームではなくマスクと枕を使って固定したり、何回かに分けて放射線を当てたり(分割照射)することもできるため、より非侵襲的かつ、柔軟な治療を行うことができるようになっています。大きな病巣や視神経など放射線に弱い組織の周辺にある病巣では、分割照射をすることで正常な組織の障害を防いだり、悪性腫瘍の場合には腫瘍に対する放射線の効果を高めたりすることができます。

ガンマナイフ治療は病巣の大きさや、ガンマ線の照射線量にもよりますが、基本的には30分から1時間前後の照射が必要です。

ガンマナイフ治療の概要

小牧市民病院のガンマナイフ治療機器
小牧市民病院のガンマナイフ治療機器

外科手術とガンマナイフ治療は、それぞれ一長一短です。以下では、5つの観点から両者の治療方法を比較していきます。

外科手術

外科手術では、腫瘍の大小にかかわらず手術を実施することができます。ただし、手術の際には全身麻酔をかける必要があるため、それに耐えうる健康状態であることが必須条件となります。

ガンマナイフ治療

ガンマナイフ治療は、一般的に3cm以下の腫瘍に適応となります。ただし、脳幹を強く圧迫している場合には、初めに外科手術を行い、圧迫している部分を切除したうえでガンマナイフ治療を行うこともあります。

外科手術

当院で外科手術を行った場合は、10~14日程度の入院を要する方が多いです。開頭手術による傷が治るのに1週間前後かかるため、この程度の入院期間が必要となります。

ガンマナイフ治療

当院でのガンマナイフ治療は2泊3日の入院が必要となります。退院後に活動量などを制限する必要もほとんどありませんので、退院翌日には社会復帰が可能です。

外科手術

腫瘍が聴神経や顔面神経を強く圧迫していたり、神経への張り付き具合が強かったりした場合、手術後に聴力低下や顔面神経麻痺が生じるリスクが高まります。しかし、術中に聴神経の状態を判断したり、顔面神経に刺激を与えて、神経の位置を判断する“神経モニタリング”を用いたりすることで、以前よりも手術成績は向上しているともいわれています。

手術後には、髄液漏(ずいえきろう)が起こる可能性があります。髄液漏とは、脳の周りを循環している脳脊髄液が鼻や耳から漏れてしまうもので、頭痛などの症状が現れます。また、手術では小脳に触れる必要があるため、術後に回転性のめまいや吐き気が生じることもあります。

なお、外科手術を行っていても、腫瘍を全摘出しなかった場合には、再発の可能性が残ります。

ガンマナイフ治療

ガンマナイフ治療は、腫瘍を消し去るのではなく、ガンマ線を当てることによって腫瘍をコントロールする方法です。そのため、再発の可能性はゼロではありません。

また、治療後一時的に腫瘍が大きくなることもあり、その期間は難聴やめまいなどの症状が悪化する場合もあります。

ガンマナイフ治療においても、外科手術と同様に、治療を行うことで聴力低下が生じる場合があります。まれに一過性の顔面神経麻痺が生じることがありますが、永続的に麻痺が残存することは少ないことに加え、その発生率は外科手術よりも低いともいわれています。

外科手術

特に手術後に明らかな神経障害がなければ、リハビリなどは不要です。腫瘍を完全に摘出した場合を除き、再発していないかどうか、定期的に検査をする必要があります。

ガンマナイフ治療

外科手術と同様に、リハビリなどは不要です。ガンマナイフ治療によって画像上、腫瘍が消えてなくなることはありません。腫瘍が完全に壊死(腫瘍細胞が死んだ状態)したとしても、画像上では壊死組織が写り、腫瘍が完全に壊死したかどうかを判断することはできません。そのため、ガンマナイフ治療を選択した場合には、定期的な聴力検査と画像検査が必要となります。

外科手術

聴神経腫瘍の手術に限った話ではありませんが、外科手術の治療成績は、術者や設備によって左右されるといえます。そのため、全国どこでも同じ治療成績が得られるわけではありません。

ガンマナイフ治療

外科手術と比較すると歴史の浅い治療法といえます。そのため長期的な臨床データとしてまだ不十分な部分もあり、今後さらにデータを蓄積し、研究を進めていく必要があるでしょう。

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