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子どもの心の診療とは?

子どもの心の診療とは?
鹿島 京子 先生

河北総合病院 小児科 科長

鹿島 京子 先生

目次
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子どもは、日々の生活の中でさまざまなことを経験しながら、心身共に成長しています。しかし、その子の問題解決力を超えた状況や課題に直面し、大きなストレスを抱えると、心や体に症状をきたすことがあります。こういったとき、子どもが1人で問題を抱え込むのではなく、ご家族や医療機関の適切なサポートを受けることが大切です。

河北総合病院は、開設以来90年以上にわたって小児科の診療に力を注ぎ、現在は子どもの心のケアに重点を置いた診療を行って、地域の子どもとご家族の心身を支え続けています。

今回は、河北総合病院小児科科長の鹿島 京子(かしま きょうこ)先生に、同院が取り組んでいる子どもの心の診療について、同院小児科のあゆみとともにお話を伺いました。

子どもの心の診療では、身体的な症状、精神的な症状、行動上の問題を重ね合わせていることが特徴です。子どもがストレスを抱え、心のバランスが崩れても、その問題の本質を相談事として病院にやってくることはまれです。子どもは、自分が何に困っているのか、どうしたいと思っているのかを的確に認識して相手に伝える力がまだまだ未熟なのです。ですから、ときに遠まわしで理解しづらいような、さまざまな表現で苦しさ、つらさを伝えようとしてくるのです。

子どもの特徴として、何か困ったことや対処できないことがあると、体の症状として現れることが多くみられます。たとえば、頭が痛い、お腹が痛い、気持ち悪い、だるい、朝起きられないといった症状はその代表的なものです。

ちょっとしたことでイライラし親や大人に反発したり、涙もろくなったり、不安が強まって今までできていたことができなくなったりします。

自傷行為、親への反抗、友達とのトラブル、不登校、生活の乱れ、反社会的行為などです。

攻撃性を自分自身に向ける子もいれば、親や社会に向ける子もおり、その子らしさが表れてくるところです。

こういったさまざまな症状は、子どもが自分の苦しさ、つらさを表現するうえで、こうすることしかできなかった、こうせざるを得なかった結果です。成長過程にある子どもなりの未熟な対処法とも言えます。

ですから、子ども自身が自分の問題解決能力を高め、自分なりに解決し、乗り越えていけるような力を育んでいくことが、治療的な関わりになると考えています。

当院の小児科では、次のような病気に対応しています。

心身症は基本的に“体の病気”ですが、その発症や経過に“心理、社会的因子”が大きく影響しているものをいいます。幼少期は、繰り返す腹痛、嘔吐などの消化器症状が多くみられます。年齢が上がるほど症状の種類が増えていき、思春期には、起立性調節障害、過敏性腸症候群過換気症候群摂食障害、慢性頭痛、繰り返す体の痛みなどがあります。いずれも、身体面の検査や治療を丁寧に行うと同時に、心理的な問題、ストレスに意識を向けた関わりが欠かせません。

拒食で極端に痩せていくタイプ(神経性やせ症)、過食嘔吐を繰り返すタイプ(神経性過食症)、こだわりなどで食事がとれなくなるタイプなどがあります。いずれも患者さんの数は増え、発症時期が低年齢化しています。

神経性やせ症では、思春期の女性の「痩せたい」という願望からスタートし、体重が十分に減ったあとも、再び太る恐怖や、すでに痩せているのに太っていると思い込むことによって、過度の食事制限を続けて極端な体重減少をきたすケースが少なくありません。体重減少に伴う身体症状(生理が止まってしまう、除脈、低体温、低血圧、立ちくらみなど)や、ダイエットハイ状態での精神や行動面の変化(過活動、気分の浮き沈み、こだわりなど)がみられます。自己肯定感が著しく低下しています。

栄養状態の改善を目指す身体面の治療とともに、心理的支援が欠かせません。その人が摂食障害という形ではなく、より適切な形で自己の抱える問題やストレスに対処していけるような力を育み、自己肯定感を取り戻していくための支援が必要です。

心の問題を抱えて受診される方の中には、さまざまなストレスの要因として、その人が持つ元々の発達障害的特性が影響している場合があります。

発達障害とは何か――​​子どもに必要な治療と支援』でも述べたように、発達障害とは、ADHD自閉スペクトラム症学習障害などを含む幅広い概念のことです。発達障害特性自体は、その人らしさでもあり、長所として受け止められている状況下では特に問題となりません。しかし、その特性が短所として受け止められ、社会生活にうまく適応できずにいると、自信を失い心のバランスを崩してしまいます。

その人の特性を、本人や周囲の人がポジティブに受け止め、適切な生活環境や関わり方を整えていくための支援が必要です。

選択性緘黙は、家では普通に会話をしているのに、幼稚園や学校など不安や緊張が高まる場所や、家族以外の人がいる所へ行くと、話せなくなるのが特徴です。幼稚園や学校に入って、初めて気づかれることが多く、家庭と外での子どもの様子の違いに驚かれる親御さんが多いものです。

緊張や不安が高まっている場で、無理やり話をさせようとする声かけは逆効果です。「話をしないとだめだ」という子どもへのメッセージは、子ども自身に、「話せない自分はだめな子だ」といった不安を与え、より話せない状況を作ってしまいます。その子が安心できる環境、人間関係を築き、「話さなくても大丈夫」といった安心感を与えることが大切です。そのうえで、子どもが自分なりの意思表示ができるような方法を一緒に考えてあげてください。年齢が上がるとともに、信頼する人や友達とは話ができるようになっていく子が多いものです。

チック障害は、自分の意思と関係なく、突発的に運動や発声が反復して起こる病態です。顔や首、手足などの筋肉が収縮し、首振り、まばたきなどが見られる場合を“運動性チック”、咳払いや、「んっ、んっ」といった音を出すような場合を“音声チック”と呼びます。声が出るチックは特に周りから注目されやすく、学校生活などで苦労することもあります。経過を見ているうちに、自然に軽快していく場合もありますが、周囲からの指摘でより症状が強まったり長引いたりすることもあるので、必要に応じて薬による治療を行います。

不登校となる背景はさまざまですが、一般的に低学年の子どもでは、親と離れることの不安が強く、学年が上がるにつれて、友達関係や学習面の課題を抱えている子が増えてきます。

学校に行っていない状態というのは、休んでいるから楽をしているわけではなく、どの子にとっても非常にストレスな状態です。こんな自分はだめだという自責感から、落ち込んだり、イライラしたり、攻撃的になったり、気分や情緒が不安定になります。眠れなくなり、生活リズムが崩れ、入浴や歯磨きといった日常生活がこなせなくなる子もいます。家から出ること、同世代と会うことを避けるようになる場合も多いです。

まずは、子ども自身が自責の念から少しでも解かれ、何を困っているのか、何が問題なのか、自分がどうしたいのかを考えられるようになることが必要です。そのために、家庭が安心して心身を休ませ、心のエネルギーを補充できる場となることが大切です。

ご家族が地域の教育機関や医療、親の会などを利用し、親自身の気持ちを整理し、心の安定を保つことも重要です。

さまざまなストレスを抱えて心の診療にたどり着く子どもたちは、現状の自分をポジティブに捉えることができず、自己肯定感が大きく揺らいでいます。自己肯定感は、生きていくうえで全ての土台となる力であり、何よりも大切なものです。この自己肯定感をどう回復させていくか、育んでいくかが、子どもをサポートする(かなめ)だと考えています。こうすればうまくいくといった有効な方法があるわけではなく、容易なことではありません。支援者が子どもと真摯に向き合い、その子の持つ力を信じて肯定的なまなざしで関わり続けるなかで、「自分なんかだめだ」から「自分もそんなに悪くない……」に変わっていくよう支えていきたいと思っています。また、子ども自身が、支援者と言葉や感情のやり取りをするなかで、自分の抱えている問題に気づき、自分らしい解決法、対処法を見出していけるよう、一緒に考えていきます。

子どもの心が危機的状況に陥っているときは、親や家族にとっても危機的状況といえます。子どもを心配し不安が募ると、親の心も不安定になり、落ち込んだり、怒りっぽくなったり、眠れなくなったり、子どもと同様の症状をきたします。家族があまりにつらくなってしまうと、子どもはそのことでさらにつらくなってしまい、回復から遠のいてしまうかもしれません。ご家族が心身の健康を維持し、家庭が子どもにとって心のエネルギー補充場所になることが必要です。

そのために、診療ではご家族のさまざまな思いを受け止め、子どもの現状を分かりやすくお伝えしていくことを心がけています。多くの子どもたちは、取り返しがつかない病気や問題に陥っているわけではありません。子どもから大人へと心身共に育っていく過程で、成長するための壁にぶつかり葛藤している姿であり必ず変化していくものです。そのように捉えると、目の前の状況が少し違って見えてくるかもしれません。

子どもの生活の場は、家庭だけではありません。幼稚園や学校、そのほか多くの人と関わりがあります。ご本人やご家族の了承が得られれば、必要に応じて学校の先生や地域の支援機関などと連携を取り、よりよい環境作りや支援の方法を相談しています。

河北総合病院 小児科の診察室

河北総合病院 小児科の診察室

当院は、1928年に前身の“河北病院”として開設以来、小児科の診療に力を入れてきました。当時は抗生物質がまだ実用化されていない時代で、疫痢(脱水を伴う小児の感染症)によって多くの子どもたちが亡くなりました。そうした状況を打破すべく、当院の小児科と外科の医師が協力して“静脈内持続点滴注入療法”を1936年に実施し、子どもの疫痢の死亡率を減らすことに貢献しました。その後、1960年頃には、疫痢の死亡率は約20%まで減少しています。

現在、当科では、身体疾患の診療に加えて、子どもの心の診療に力を注いでいます。予約制の専門外来にて、初診は1時間、再診はケースに合わせて時間を調整し、ご本人やご家族としっかり関わることができるよう努めています。一人ひとりの診療時間が長くなるため、多くの方を診ることができず、現在、初診までに数か月の待ち時間をいただいていることが、課題となっています。

現在の日本では、小児の身体疾患に関しては、軽症の風邪から専門的治療を要する希少疾患、重症疾患まで、ご家族がどこに相談してよいか分からない、受診するところがないといった状況に陥ることはなく、医療の窓口が開かれています。

一方で、心の問題を抱える子ども、家族が増えていく社会の中で、子どもの心の健康をサポートできる医療機関はまだまだ少ない状況です。児童精神科は数が少なく、また精神科に行くまでではない、ハードルが高いと感じている方が、身近に相談できる場所は貴重な存在です。

子どもが健やかに育っていくためには、子どもと家族が心身共に健康であることが大切です。子どもの心身の問題について相談できる場を提供することが、90年以上にわたり地域密着の医療を続けてきた当院の重要な使命のひとつと考えています。

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