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膵臓がんなど膵臓の腫瘍に対する“膵切除”の具体的な方法について

膵臓がんなど膵臓の腫瘍に対する“膵切除”の具体的な方法について
野家 環 先生

NTT東日本関東病院 外科部長

野家 環 先生

目次
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膵臓(すいぞう)は腹部上方、胃の後ろ側に位置する臓器で、膵液という消化酵素を作ったり、血糖や消化液の量を調節するホルモンを分泌したりする機能を持ちます。この膵臓に悪性の腫瘍ができた場合は、手術で膵臓を摘出する“膵切除”を行う必要があります。切除する位置や範囲によってさまざまな術式があり、腫瘍の発生場所や病気の進行度によって治療方針を決定していきます。今回は、膵臓がんに対する膵切除の具体的な方法を中心に解説します。NTT東日本関東病院 外科 部長の野家 環(のいえ たまき)先生にお話しいただきました。

膵臓の代表的な病気は、大きく腫瘍と膵炎外傷に分けられます。さらに細かく分類すると、以下の通りです。

【膵充実性腫瘍】

・膵がん(膵頭部(すいとうぶ)がん、膵体尾部(すいたいびぶ)がん)

・膵神経内分泌腫瘍(すいしんけいないぶんぴつしゅよう)(P-NET)

【膵嚢胞性腫瘍】

・膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんないにゅうとうねんえきせいしゅよう)(IPMN)

・粘液性嚢胞腫瘍(ねんえきせいのうほうしゅよう)(MCN)

【その他の膵腫瘍】

・充実性偽乳頭状腫瘍(じゅうじつせいぎにゅうとうじょうしゅよう)(solid-pseudopapillary neoplasm:SPN)

・漿液性嚢胞性腫瘍(しょうえきせいのうほうせいしゅよう)(SCN)

【膵炎】

慢性膵炎

急性膵炎

【その他】

まれな膵腫瘍、転移性膵腫瘍、外傷によるもの

膵切除が対象となる主な病気は、膵臓の病気としては、原則ステージ2以下の膵臓がん、膵神経内分泌腫瘍、悪性の膵嚢胞性腫瘍です。また、膵頭部と共に切除しなければ切除が不可能な(遠位)胆管がん、十二指腸乳頭部がん、十二指腸がんなども膵切除の対象となる病気です。

このほか、胆嚢がん、大腸がん胃がん腎臓がんなど、膵臓に隣接する臓器に発生した腫瘍が膵臓や十二指腸に浸潤・転移している場合も、病変のある臓器の手術と併せて膵臓の切除が必要です。

膵臓と周辺血管
膵臓と周辺血管

膵切除には、膵頭十二指腸切除、膵体尾部切除、膵中央切除、核出術などの方法があります。今回はそのなかから、膵頭十二指腸切除術と膵体尾部切除術、膵全摘について解説します。

膵頭十二指腸切除

膵頭十二指腸切除は、膵頭部(膵臓の右側)にできた腫瘍に対して適応される術式で、全身麻酔下で行います。膵頭部、遠位胆管、胆嚢、十二指腸、胃の幽門側、および空腸初部といった臓器を、周囲のリンパ節や神経、脂肪組織とともに切除します。切除後は、膵臓と空腸・胆管と空腸・胃と腸の3か所を吻合して消化液の通り道を作り直します(消化管再建)。

膵体尾部切除

膵体尾部切除は膵体部・膵尾部(膵臓の左側)の腫瘍に対して適応される手術で、膵頭十二指腸切除術と同様に全身麻酔をかけて行います。膵体尾部または膵尾部を、脾臓とその栄養血管、周囲のリンパ節、神経、脂肪組織などとともに切除します(脾臓を温存する方法もあります)。また、周囲の臓器にがんが浸潤しているときはそれらの臓器も併せて切除が必要です。

通常、膵体尾部切除の場合は胃や腸を切除しないため、再建は行いません。

膵頭十二指腸切除術と膵体尾部切除術、術式選択の基準は?

基本的には、腫瘍が膵頭部にあるか、膵体尾部にあるかで、術式が決まります。

ただし、膵頭十二指腸切除でも膵体尾部切除でも根治的な切除が可能な症例であれば、通常は膵体尾部切除を選択します。この理由は、膵頭十二指腸切除のほうが、患者さんの体に与えるダメージ(侵襲性)が高いと考えられるためです。

腹腔鏡手術について

腹腔鏡下膵頭十二指腸切除の適応は、2020年1月時点では、周辺に浸潤しておらずリンパ節郭清(かくせい)*が不要な膵頭部腫瘍など、低悪性度の膵腫瘍に限られています。また、腹腔鏡下膵体尾部切除術の適応は、周辺臓器や脈管を切除せずに治療可能な症例とされています。このように、膵切除で腹腔鏡手術が適応されるケースは絞られています。

*リンパ節郭清:手術の際にがんの周辺にあるリンパ節を併せて切除すること

膵臓を全て摘出する方法で、広範囲に及んだがんに対して適応されることがあります。膵臓がなくなることで、インスリンをまったく分泌できなくなってしまうため、術後はインスリンを注射して体内に補充する必要があります。このように、膵全摘は代謝や消化機能に影響が及んで患者さんのQOL(生活の質)が低下することが予測されるため、全摘で治癒や明らかな延命が期待できない場合は適応されません。

膵切除の術後合併症には、比較的頻度の多いものから、腹腔内膿瘍、膵液瘻、胃内容排出遅延、胆管炎、腹腔内出血などがあります。また、慢性的に消化吸収障害(下痢、体重減少)、糖尿病脂肪肝などの合併症を伴う可能性もあります。

中でも、特に注意を要する合併症は以下の通りです。

膵切除において特に注意が必要な合併症は、吻合部や膵の断端から膵液が漏れ出す膵液瘻です。膵液瘻が起こると、膵液中の酵素が腸液や胆汁と混ざり合って活性化し、周辺の臓器や組織を消化してしまいます。体外へのドレナージ(排出)が不良な場合には、膿瘍化して敗血症を起こしたり、膵液瘻によって血管が溶かされ腹腔内大出血をきたしたりすることがあります。そのような状態に進行すると入院期間が延びるだけでなく、命に危険が及ぶリスクが出てきます。

上腸間膜動脈周囲から腸へと走る神経を切除した場合、手術後に、消化吸収障害や難治性下痢、体重減少などを引き起こすことがあります。下痢の症状が重い場合は、アヘンチンキなどの強い薬を服用することもあります。下痢症状は患者さんのQOLを著しく低下させる要因となるため、根治性に変わりがなければ、できる限り神経を温存して術後のQOLの低下を最低限に抑える方針で切除範囲を決定しています。

手術直後、または術後しばらく経過してから糖尿病を発症することがあります。この理由は明白で、膵臓の一部または全部が摘出されることで、膵臓からのインスリン分泌量が通常よりも少なくなるためです。インスリン注射が必要になる可能性もあるため、膵切除を行った患者さんに対しては、術後も継続的にフォローアップを行い、定期的に耐糖能*を調べることが重要です。膵臓がんが原因で糖尿病になっていた方が、膵切除によりがんがなくなると、糖尿病が治ってしまうこともまれにあります。

*耐糖能:高くなった血糖値を正常値まで下げる能力

膵臓とともに神経を切除した場合には、できるだけ下痢の症状が悪化しないように食事を工夫する必要があり、消化・吸収のよいものを選んで食べていただくことが非常に重要になります。

一方、神経を温存する形で手術を行い、術後ある程度の期間が過ぎて、重篤な下痢や消化吸収障害が見られず十分な量を食べられるようになった場合には、食事に関する大きな注意点はなくなります。

また、体力をできるだけ落とさないような工夫も大切です。散歩などの軽い運動を適宜取り入れていただくことをおすすめします。

膵臓がんは、切除可能膵がん・切除可能境界膵がん・切除不能膵がんという三つのタイプに分けられます。最近の研究により、切除可能膵がんに対して術前化学療法や化学放射線療法などの補助療法を行ってから手術をすることで、術後の成績(生存率など)が良好になる可能性が高いことが分かってきました。そのため当院でも、外科と消化器内科が連携し、切除可能膵がんに対する術前抗がん剤治療を実施しています。今後も消化器内科との連携をよりいっそう強化して、膵切除における良好な治療成績を作り上げていくことを目指していきます。

また、膵臓がんなどで膵切除の治療を受ける際は、できる限り消化器外科・消化器内科の専門医がそろった施設で治療を受けることを推奨します。

膵臓がんは、あらゆるがんのなかでも生存率が不良ながんで知られています。かつては手術をしてもほとんどの方が再発し、長く生きることが難しいとされていました。しかし、長期生存成績は徐々に改善しており、2010年~2011年に治療を受けた患者さんの統計では、手術が可能なステージ1、2の患者さんの5年生存率はそれぞれ45.5%、18.4%にまで到達しています*。もしも膵臓がんと診断されても、希望を失わずに手術を受けていただき、病気と最後まで闘う気持ちを持っていただければと思います。私たちも、患者さんが病気を克服できることを目指して、全力で支えていきます。

*出典:国立がん研究センター がん情報サービス「がん登録・統計」

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