新型コロナウイルス感染症特設サイトはこちら
疾患啓発(スポンサード)

がんの脳転移の約半数は肺がんから——肺がんの脳転移のリスク因子や症状、余命について

がんの脳転移の約半数は肺がんから——肺がんの脳転移のリスク因子や症状、余命について
長谷川 俊典 先生

小牧市民病院 医務局長 医療の質・安全管理室長 脳神経外科 部長 ガンマナイフ科部長

長谷川 俊典 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

他の臓器にできたがんが脳に転移したものを、転移性脳腫瘍といいます。特に肺がんから転移することが多く、転移性脳腫瘍の約半数は肺がんからの転移といわれています。今回は肺がんからの転移性脳腫瘍における症状やリスク因子、余命など、基礎的な情報について、小牧市民病院の副院長兼脳神経外科部長の長谷川(はせがわ) 俊典( としのり)()先生にお話を伺いました。

転移性脳腫瘍(てんいせいのうしゅよう)とは、頭蓋(ずがい)内以外の臓器に発生したがんが、脳をはじめとする頭蓋内に転移したものを指します。この転移性脳腫瘍の発生が、いわゆる“がんの脳転移”です。がんを発症した患者さんのうち、約10%の方は脳転移を起こすといわれています。がんの脳転移は、平均寿命が延びたことやがん治療の成績が向上していることから、増加傾向にあります。

がんの脳転移(転移性脳腫瘍)のなかでは、肺がんから転移するケースがもっとも多く、がんの脳転移のうち、約半数が肺がんからというデータもあります。ではなぜ、肺がんから脳転移が起こることが多いのでしょうか。

2020年3月現在、日本におけるがんの部位別罹患率(     りかんりつ)(*において、肺がんの順位は第3位です。肺がんを発症した患者さんの約40%が脳転移を発症するというデータを踏まえると、肺がんからの脳転移が多い理由のひとつは、肺がん患者の母数の多さにあるといえます。

*罹患率:一定期間に、どの程度病気にかかった人が発生したかを表す指標

がんの転移は、がんが発生した部位からがん細胞が血管に侵入して血液などの流れにのって移動し、別の部位で増殖することによって起こります。肺や脳はどちらも血流量が豊富な場所といえるため、肺で発生したがん細胞が血液にのって脳に到達する可能性も高まるのです。

がん細胞は、最初に発生した部位ごとに、それぞれ特定の部位に転移しやすいという特徴があります。これは、血液やリンパの流れといった、人間の循環系が影響しているといわれています。

たとえば、大腸がんは肝臓に転移しやすいという特徴を持ちます。これは、大腸から流れ出た血液が初めに到達する臓器が肝臓であるためです。同様に、肺から送り出された血液は、心臓*を経由し、脳に到達します。そのため、肺がんは特に脳に転移する可能性が高いとされています。

*悪性腫瘍は上皮性細胞といわれる性質をもつものをがんという。心臓には上皮性細胞はないため、がんができることはない。

がん細胞が最初に発生した部位と転移先の“相性”によっても、転移のしやすさが左右されます。これは、がん細胞が持つ物質と、転移先の組織が分泌する特定の物質とが相互にはたらくことで引き寄せ合い、特定のがん細胞が特定の組織に転移しやすくなるという仕組みがあるためです。このことは、植物がそれぞれに適した土地でよく育つことになぞらえて、“種と土壌説”とよばれています。この“相性”の面から見ても、肺がんは脳に転移しやすいということが分かっています。

続いて、肺がんによる脳転移のリスクを高める原因(リスク因子)について解説します。

肺がんは、がんの組織によって、非小細胞肺がんと小細胞肺がんの二つのタイプに分けられます。

がん組織による肺がんの分類と特徴
がん組織による肺がんの分類と特徴

非小細胞肺がんの患者さんの場合、17~25%程度に脳転移が見られるといわれています。一方で、小細胞肺がんの患者さんの場合は、40%以上に脳転移が見られるというデータもあり、非小細胞肺がんに比べて脳転移しやすいといえます。そのため、小細胞肺がんの患者さんの場合は特に、脳転移の有無を定期的に確認することが重要です。

非小細胞肺がんの細胞には、EGFR(イージーエフアール)といわれるたんぱく質が存在します。このEGFRを構成する遺伝子に変異がある場合(以下、EGFR遺伝子変異)、脳転移のリスクが高まります。EGFR遺伝子変異を持つ人は、特に東アジアに多く、日本においては非小細胞肺がん患者さんのうちの33%程度の人が該当するといわれています。

がんが脳に転移したときの症状は、腫瘍の大きさや発生部位によってさまざまであり、共通する特徴的な症状はありません。腫瘍が大きくなった場合や脳に腫れが生じた場合、頭蓋内の圧が高まり、頭痛や吐き気を引き起こすことがあります。また、腫瘍が脳を圧迫することによって、傷ついた部分がつかさどっている機能に障害を起こします。具体的には、運動麻痺や感覚障害、歩行時のふらつき、言葉のしゃべりづらさなど、さまざまです。

一方で、がんが脳に転移していても、症状が出ない場合もあります。

肺がんが脳転移した患者さんにおいて、肺がんの治療開始から脳転移までの期間は、平均して7か月程度です。しかし、肺がんであることが発覚した際、同時に脳転移が発見される方もおり、そのスピードには個人差があります。脳転移が認められた場合には、その腫瘍の大きさや数にかかわらず、ステージ4となります。

肺がん脳転移時の余命は、肺がんそのものの治療状況や転移した腫瘍の数、大きさに左右されます。脳に転移した腫瘍の数が4個以下でいずれも大きさが3cm程度という条件のもと、脳の腫瘍に対して放射線治療を行った場合、余命の中央値は8~15か月程度だというデータがあります。ただし、この数字は脳に転移した腫瘍ではなく、肺がんそのものの予後が不良であったことも原因に含まれています。

近年、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬など、肺がんの薬物治療も進歩しており、脳転移を生じた肺がんであっても、余命や生存率は改善されつつあります。

ガンマナイフなどの放射線治療機器の誕生と、それによる放射線治療技術の進歩により、脳に転移した腫瘍をコントロールできるようになってきました。また、肺がん患者さんの余命が延伸傾向にあることに伴い、脳に転移した腫瘍の放射線治療に対する考え方も少しずつ変化し始めています。

そのため、転移性脳腫瘍を治療する大きな目的は、以下の二つであるといえます。

  1. 肺がんの脳転移が原因で命を落とさないようにすること
  2. 肺がんの脳転移が原因で起こる種々の症状を改善および予防し、QOL(生活の質)を向上させること

肺がんが脳転移した際でも決して悲観的にならず、必要に応じてセカンドオピニオンなども検討しながら、治療にあたることが重要です。

次ページでは、肺がんが脳転移した際の治療について、解説していきます。

受診について相談する
  • 小牧市民病院 副院長兼医務局長 脳神経外科部長 医療の質・安全管理室長

    長谷川 俊典 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

「転移性脳腫瘍」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。