
口腔がんの標準治療は手術で、かかっている人の状態に合わせて放射線治療や化学療法(抗がん剤など)を行うこともあります。口腔がんの手術では、小さい範囲の切除であっても見た目や機能面が損なわれることがあるため、手術の範囲が広くなる場合にはQOLに影響を及ぼさないよう、手術後に再建手術が行われることもあります。では、手術後の見た目や機能面はどのように変わり、どのようなリハビリテーション(以下リハビリ)や再建手術が行われるのでしょうか。
本記事では口腔がんの手術後について詳しく解説します。
口腔がんの治療は主に手術です。口腔がんの手術では、がんがある部分を周囲の正常組織と共に切除することが一般的です。そのため食べる、飲み込む、発声など口に関わる機能が損なわれることがあります。
たとえば、舌がんの手術では切除する箇所が小さい順に舌部分切除、舌半側切除、舌(亜)全摘の手術方法があり、がんの状態によって選択されます。舌(亜)全摘の場合は舌の広範囲を切除するため、食べ物を噛む、飲み込む、味わう、思いどおりに発声することが困難になります。
また、歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がんなどでは顎の骨を切除することがあります。顎の骨を切除した場合には、構音機能や摂食・嚥下機能に障害が残ると同時に歯も喪失するため、手術後に食べ物が噛めなくなってしまいます。
手術後には機能回復を目的にリハビリが行われることがあります。飲み込みのリハビリでは舌を動かす訓練や、舌が動かなくても飲み込む訓練をし、すすって飲んだり頭の位置や首の傾きを利用したりして飲み込みができるようにします。
また、発声のリハビリでは出したい音を出すために唇や舌を動かすリハビリのほか、残った唇、舌、頬のどこを使えばよいのかを鏡を見ながら練習します。手術で舌の大部分を切除した場合は、舌接触補助床(PAP)という舌と上顎の間を埋める装置を使って飲み込みや発声のリハビリをすることもあります。
なお、リハビリを行っても手術前と同様の状態に戻らないこともありますが、リハビリの内容によって機能が改善するまでの期間が短縮するというデータが存在しています。具体的には、バイオフィードバック訓練(カメラで飲み込みの様子をチェックしながら行うリハビリ)と一般的な飲み込みのリハビリを比べると、バイオフィードバック訓練のほうが訓練40日目の飲み込み成功率が高いという報告がされています。また、発声の訓練では舌を半分切除した場合でも半年ほどで比較的はっきりと発声ができるようになるとされています。
口腔がんの手術では舌や顎の骨などを切除することもあるため、見た目が変化する可能性があります。また、リンパ節に転移がある場合、頸部郭清術(首のリンパ節と周囲の組織を切除する手術)が行われることがあり、その場合は頸部の形態の変化や顔のむくみなど、見た目が損なわれてしまうリスクがあります。
口腔がんの手術後は見た目や機能面の改善のために、口腔・咽頭・頸部などの再建手術が行われることがあります。たとえば口腔内の再建手術を行う場合は、その人の腕の皮膚・お腹の皮膚・筋肉などを移植することによって再建手術が行われます。また、顎の骨を切除した場合には、足の皮膚と骨や金属のプレートなどを用いて再建手術を行います。このように再建手術の方法はさまざなあるので手術の内容や時期など詳しいことは担当医に相談するとよいでしょう。
口腔がんの治療には手術以外にも放射線治療や化学療法などがあります。放射線治療や化学療法では、手術のように機能面や見た目が損なわれることは少ないとされています。また、近年では臓器を温存するための優れた治療方法が多く開発されています。しかし、治療の選択はがんの状態に大きく左右されるため、治療方法については事前に担当医とよく相談する必要があるでしょう。
なお、いずれの治療も副作用を伴う可能性があります。放射線治療の場合は照射した部位の炎症や味覚の低下などを及ぼす場合があり、治療終了後も唾液分泌低下による口内の乾燥、顎の骨の壊死、筋肉が硬くなって口を開きづらくなるなどのリスクがあります。化学療法の場合は治療中に食欲の低下、吐き気、口内炎、下痢、だるさ、脱毛、皮膚炎、免疫力の低下などが起こることがあります。
口腔がんの手術後の合併症には、前述のとおり食べる、飲み込むなどの摂食・嚥下機能や声を出すなどの発声機能の低下があります。そのほか、頸部郭清術を行った場合は顔のむくみ、首のこわばり、肩があがりにくくなるなどの合併症が起こることもあります。
これらを改善するために手術後にはリハビリを実施するのがよいとされています。そのため、手術後は担当医の指示に従いリハビリを行うとよいでしょう。なお、前述のとおり口に関わる見た目や機能の改善のためには、切除した部分をほかの組織で補う再建手術を行う選択肢もあります。再建手術を行うことにより見た目の違和感が改善される可能性があるほか、食べる、飲み込む、声を出すなどの口の機能の改善が期待できるので、担当医とよく相談をして治療方針を決めていくようにしょう。
口腔がんは手術によって口周辺の機能や見た目が損なわれる場合があり、今後の生活に影響を及ぼすこともあります。しかし、それらは手術後のリハビリや再建手術によって改善することが可能です。そのため、手術後の不安や治療方針などについては担当医とよく話し合いを行ったうえで決めていくようにしましょう。
横浜市立大学附属市民総合医療センター 歯科・口腔外科・矯正歯科 部長/准教授
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