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前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、腎盂尿管がん——それぞれの概要を解説

前立腺がん、腎臓がん、膀胱がん、腎盂尿管がん——それぞれの概要を解説
平川 和志 先生

恵佑会札幌病院 泌尿器科 副理事長

平川 和志 先生

目次
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泌尿器は尿を作り体外に排出するための器官で、腎臓、尿管、膀胱、尿道などがあります。これらの泌尿器系や前立腺・精巣などの生殖器系にできた病気やがんの診療や診断、手術までを一貫して行う診療科が、泌尿器科です。今回は、泌尿器科で診療を行う代表的な四つのがん(前立腺がん腎臓がん膀胱がん腎盂尿管がん)について、恵佑会札幌病院 副理事長 平川(ひらかわ) 和志(かずし)先生にお話しいただきました。

前立腺がんの発症リスクを高める要因のひとつに、食生活を中心とした生活習慣が挙げられます。過去の研究では、アメリカに移住した日本人の前立腺がん罹患率は、日本在住の日本人とアメリカ在住のアメリカ人の中間になることが知られており、このことからも環境因子が前立腺がんの発症リスクを高めると推測されます。そのほか、肥満糖尿病メタボリックシンドロームなども前立腺がんの発症に関係していると考えられています。

また、家族歴や一部の遺伝子の変異といった先天的・遺伝的要因も前立腺がんの罹患リスクを高めることが知られています。

早期の前立腺がんには通常、目立った自覚症状はみられません。ただし、前立腺肥大症にみられるような症状(尿が出にくい、排尿回数が多い、尿漏れ、残尿感など)が起こる場合があります。さらに進行すると、がんが大きくなって尿道が閉塞し排尿できなくなったり(尿閉)、がんが尿道に露出して血尿がみられたり、がんが骨に転移することで起こる疼痛などの症状が起こります。

PSA検査(PSA検診)

PSA検査は、前立腺特異抗原(Prostate-Specific Antigen)というたんぱく質が多いかどうかを測定する検査で、早期段階の前立腺がんを発見するためにも重要です。過去の研究で、PSA検診の実施により前立腺がんの死亡率が低下することが証明されており、本邦においても日本泌尿器科学会が定期的なPSA検診の受診の重要性に言及しています。

ただし、前立腺がんには悪性度が低く無治療でも余命に影響しないタイプのものも存在します。そのため、PSA検診ではそのような“臨床上意義のない前立腺がん”を検出してしまい(過剰診断)、その結果過剰な治療をしてしまうリスクがあります。そのようなタイプの前立腺がんに対しては、PSAを定期的に測りながら経過観察を継続する監視療法などを行います。

直腸診、経直腸的前立腺超音波検査

指または超音波機器を用いて前立腺の状態を調べます。

MRI検査

前立腺がんの位置や浸潤・リンパ節転移の有無を調べます。2020年現在、前立腺がんの画像診断の中ではMRIがもっとも優れており、当院では前立腺がんが疑われる患者さんのほぼ全例に行っています。

前立腺生検

前立腺がんの確定診断には、10~20か所に細い針を刺して組織を採取する前立腺生検が必要です。生検には会陰(えいん)からアプローチする方法と直腸からアプローチする方法があり、直腸からのアプローチは出血や感染のリスクが高いため、当院では会陰からのアプローチで生検を実施しています。

当院では通常の生検のほか、先進医療としてMRIと超音波の融合画像を用いた“リアルタイムガイド下前立腺生検”(MRI-TRUS融合画像ガイド下前立腺生検:BioJetシステム)を行っています。生検を行う前に撮影したMRI画像を、生検の際に映す超音波画像(超音波のみでは病変の特定が難しい)に重ねることで、がんが疑われる部位をより正確に狙って生検を行うことができます。通常の前立腺生検よりも診断精度が高くなります。

リアルタイムガイド下前立腺生検の自己負担額は保険診療分+104,000円です。また、当院でこの検査を受ける場合は1泊2日の入院が必要となります。

生検を行う際は腰椎麻酔をかけるため、麻酔による一般的な副作用(頭痛、吐き気、アレルギー反応など)が生じる可能性があります。

治療法は、がんの進行の程度やリスク分類、悪性度(グリーソンスコア)、PSA値、患者さんの年齢・全身状態・希望などにより総合的に判断します。主な治療法は以下のとおりです。

監視療法

主に“臨床上意義のない前立腺がん”に適応される治療法で、定期的にPSA検査や前立腺生検を行い、がんが進行していないかを観察します。監視療法中にがんが進行したとみられる場合は手術や放射線などの治療開始を検討します。

手術、放射線治療

がんがリンパ節転移や他臓器への転移のない段階であれば、根治的治療として手術や放射線療法が適応となります。局所浸潤がんではホルモン療法を併用する場合もあります。この段階では手術と放射線治療のいずれの選択も可能となるため、どちらの治療法を選択するかは、患者さんご本人の希望を伺ったうえで両者のメリットとデメリットを説明し、最終的には患者さんに決定していただきます。

ホルモン療法、化学療法

転移のある前立腺がんにはホルモン療法や化学療法が適応されます。手術や放射線治療と併用する場合もあります。

腎臓がんの発症要因はよく分かっていませんが、喫煙肥満は関係があるとされています。

腎臓がんはかなり進行しても痛みや特徴的症状が出ないため、がんが非常に大きくなってから発見される場合も少なくありません。早期がんを発見するケースとしては、検診や地域の医療機関でスクリーニングとして腹部超音波検査を受けたときに偶然みつかるというパターンが多いです。

超音波検査で腎細胞がんが疑われた場合は、CT検査を行い、転移の有無や腫瘍の大きさ・位置を確認し、また手術を前提として腎臓の動脈・静脈の状態などを確認します。

がんが非常に大きくなってから発見され、骨転移の可能性が疑われる場合は、骨シンチグラフィーを行う場合もあります。

治療には、腎部分切除術、根治的腎摘除術、経皮的凍結療法などがあります。一般的には、腫瘍が4cm以下であれば腎部分切除術による治療を選択します。また近年では、4cm~7cmであっても患者さんの状態によっては部分切除を実施することもあります。当院では、腎部分切除術をロボット手術にて行います。ただし、部分切除が難しい位置にできたがんに対しては、がんの大きさにかかわらず、腎臓を全て摘出する根治的腎摘除術を選択せざるを得ない場合もあります。また、肺やリンパ節に転移がある場合、あるいはがんが周囲臓器まで広がっており手術での腫瘍摘出が困難な場合は、分子標的治療薬などを用いた術前補助薬物療法を行ってから手術を行う場合もあります。

膀胱がんの発症には、喫煙が大きく関与することが分かっています。また、芳香族アミン類への暴露が膀胱がんの発症に関係することが知られており、かつてはナフチルアミンやベンジジン、アミノビフェニルなど特定の化学物質を取り扱う職に就いている方に膀胱がんが多いことが指摘され、現在の日本では芳香族アミン類の製造や使用、輸入が禁止されています。そのため、現代における膀胱がんの一般的な要因は喫煙といってよいでしょう。

主な症状は肉眼的血尿(目で見て明らかに分かる血尿)で、ある程度進行してから見られることが多いとされますが、早期段階から血尿が出る場合もあります。そのほか、頻尿、排尿痛などの膀胱炎の症状も生じます。また、血尿や痛みなどの症状はずっと続かないで一過性のこともよくあります。「止まったから病院に行かなくても大丈夫だろう」と放置せず、一度でも血尿が出た場合は泌尿器科への受診をおすすめします。

膀胱がんの検査では、膀胱鏡検査(内視鏡検査)、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)、CT検査、骨シンチグラフィなどを行います。

膀胱鏡検査では、尿道を通じて内視鏡を膀胱へ挿入し、がんの部位や大きさ、数、形などを調べます。尿道に内視鏡を入れる際に痛みを伴うことがありますが、近年では柔らかい素材を用いた内視鏡(軟性膀胱内視鏡)が開発されており、金属製の内視鏡を使っていた過去に比べると、検査に伴う痛みは軽減されてきています。

経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)は治療ではありますが、膀胱がんの病期や悪性度を診断するための検査的な側面もあり、切除した腫瘍を病理学的に調べます。表在がんの場合はTUR-BTのみで治療が終了し、その後は再発の有無をチェックする定期検査となります。

CT検査は、腎盂尿管がんなどの別のがんを合併していないか、リンパ節転移や遠隔転移がないかを調べる目的で行います。骨転移が疑われる場合は骨シンチグラフィーを行うことがあります。

膀胱がんの進行度
膀胱がんの進行度

治療には、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR-BT)、膀胱全摘術、化学療法、放射線療法、膀胱内注入療法などがあります。

粘膜下結合組織までにとどまり筋層に浸潤していない表在がんであれば、経尿道的膀胱腫瘍切除術で外科的処置は終了します。その後、再発リスクによっては膀胱内注入療法(抗がん剤注入療法、BCG注入療法)を行い、再発を繰り返す場合は膀胱全摘術を検討します。

筋層浸潤があるケースや一部の上皮内がんには、基本的に膀胱全摘術および尿路変向変更術と化学療法を組み合わせた治療が適応されます。

リンパ節転移や遠隔転移がみられる場合や膀胱摘出を患者さんが希望されない場合は、放射線療法や化学療法などによる治療を行います。

また、最近は術前に化学療法を行ってから膀胱全摘術をしたほうが治療成績がよいと報告されており、化学療法を先行することが推奨されています。

腎盂・尿管の位置と構造
腎盂・尿管の位置と構造

腎盂尿管がんのリスク要因は膀胱がんと同じく喫煙や、芳香族アミンなどの化学物質です。膀胱がんとリスク要因が同じである理由は、腎盂尿管がんと膀胱がんのほとんどは尿路上皮がんに分類され、発生母地が共に“尿路上皮”にあることです。尿路上皮がんは尿路全体に多発するという特徴があるため、腎盂尿管がんの治療後または同時に膀胱がんが発生するケースもあります。

主な症状は肉眼的血尿(目で見て明らかに分かる血尿)です。尿管の部分にがんができた場合は、尿の通過性が悪くなり水腎症(腎臓内に尿が蓄積した状態)になる場合もあります。尿管が詰まったり、がんが浸潤したりした場合は腰、背中、わき腹が痛いと感じる方もいます。腎盂尿管がんによる痛みは尿管結石の症状と類似していますが、一般的に、尿管結石では急に尿管が詰まることにより急速に激しい痛みが起こる一方で、腎盂尿管がんは腫瘍が徐々に大きくなって尿管が詰まるため、尿管結石ほど急激に強い痛みが起こるケースは少ないと考えられています。

主な検査は以下のとおりです。

  • 腹部超音波(エコー)検査
  • 膀胱鏡検査・腎盂尿管鏡検査
  • 逆行性腎盂尿管造影
  • CT検査
  • 骨シンチグラフィー

など

腎盂尿管がんは、腎臓がんと同じく偶然受けた超音波検査をきっかけに見つかることが多いといわれています。超音波検査では、腎盂内の腫瘍を発見できるとともに、水腎症の発症やリンパ節転移なども調べることが可能です。

超音波検査などからがんが疑われる場合は膀胱鏡検査を行い、膀胱内にがんがあるかどうかを調べます。この理由は、腎盂尿管がんに比べて膀胱がんの発生頻度が高いためです。

また、同時に細いカテーテルを腎盂に挿入して腎盂・尿管の造影を行うこともあります。診断が難しい場合には、非常に細い特殊な内視鏡(腎盂尿管鏡)検査を行うこともあります。

腎盂尿管がんと診断されたら、ステージの正確な把握のためにCT検査を行います。骨などの臓器に転移していないかどうかを診るために骨シンチグラフィーを行う場合もあります。

転移がない場合は外科手術が原則的に適応されます。腎盂尿管がんに対する手術の方法は腎尿管全摘術で、部分切除は基本的に行いません。この理由は、尿路上皮がんは多中心性(たちゅうしんせい)(同時に複数か所にがんが発生すること)であるためです。

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