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前立腺がんにおけるロボット手術——特徴やメリット・デメリットについて

前立腺がんにおけるロボット手術——特徴やメリット・デメリットについて
平川 和志 先生

恵佑会札幌病院 泌尿器科 副理事長

平川 和志 先生

目次
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開腹手術に比べて出血量や精密性に優れているとされるロボット手術は、前立腺がんに対する標準的治療法のひとつとして確立されてきています。前立腺がんにおけるロボット手術の特徴と注意点、今後の展望について、積極的にロボット手術での前立腺がん治療に取り組まれている、恵佑会札幌病院 副理事長 平川(ひらかわ) 和志(かずし)先生にお話しいただきました。

ロボット手術とは、手術用のロボットを操作して、腹腔鏡手術と同様の手技を遠隔操作で行う手術の方法です。ロボット手術では、3Dの拡大視野で術野を見ることできるため解剖学的構造の把握が良好で、手振れが起こらないために腹腔鏡手術よりも精密な手術ができるといった特徴があります。

前立腺がんにおいては、ロボット支援下での手術である“ロボット支援前立腺全摘除術(RALP)”が急速に普及し、現在では標準的治療法のひとつとして確立されてきています。原則としてロボット支援前立腺全摘除術が適応されるのは、限局がん(がんが前立腺内にとどまっているもの)の患者さんです。また、当院では、わずかなリンパ節転移や骨転移の見られる症例や局所進行がん(がんが被膜外や精嚢など周辺臓器に浸潤しているもの)などのハイリスクの前立腺がんに対しても、ホルモン療法などを組み合わせつつ、積極的にロボット支援前立腺全摘除術を行っています。

ロボット手術のメリットとしては以下が挙げられます。

  • 医師は開腹手術に比べて精密な切除ができる
  • 出血が少ない(輸血の必要性が少ない)
  • 尿失禁や痛みの程度を軽減する
  • 合併症のリスクが少ない
  • 入院期間が短い
  • 日常生活への復帰が早い
  • 性機能温存手術を選択した場合、術後の性機能障害からの回復が早い

また、ロボット支援前立腺全摘除術は、通常の腹腔鏡手術に比べて切除断端陽性率が低いとされます。切除断端陽性率とは、手術で切除した組織の切り口にがん細胞が取り残されている確率を示すもので、断端陽性の場合は再発リスクが高くなります。

一方で、ロボット手術では以下のとおり医療機関側のデメリットが挙げられます。

  • 装置が高価で消耗品も多いため、医療機関側のコストがかかる
  • 実際の感触を得られない(触覚がない)ため、操作に細心の注意を払う必要がある

ロボット支援前立腺全摘除術では、前立腺と精嚢を全て摘出し、膀胱と尿道を縫合してつなぎます。全摘除術に加えて、下図のリスク分類でハイリスクに該当する場合は、前立腺の周囲にあるリンパ節を一緒に取り除く“拡大リンパ節郭清”を行います。

手術時間は個々人の容体、術者の熟練度やリンパ節郭清の有無によって異なります。通常、リンパ節郭清をする場合の手術時間はリンパ節郭清をしない場合に比べて長くなります。

NCCN分類

手術はお腹に(きず)をつけて行うため、手術後の痛みを心配される患者さんもいらっしゃるかもしれません。確かに手術後は痛みが生じますが、手術創が小さいため一般的に開腹手術に比べて痛みは軽度です。一人ひとりの痛みの程度に応じて鎮痛剤を投与することで、痛みのコントロールを目指していきます。

当院で前立腺がんに対するロボット支援前立腺全摘除術を行った場合の標準的な入院期間はおよそ10日間です(術後の経過によっては長くなる場合もあります)。手術後に膀胱と尿道がしっかりつながっていることが確認できたら、術中に留置した尿道カテーテルを抜去してそのまま2日間ほど様子を見ます。抜去後に問題がなければ退院していただけます。

手術後、尿失禁の合併症が起こるリスクがあります。ただし、ロボット支援前立腺全摘除術は、開腹手術や腹腔鏡手術に比べて尿禁制の回復(排尿が通常どおりできるようになること)が良好であることが知られています。

術後尿失禁がみられる患者さんに対しては、仰向けまたは四つん這いの姿勢で肛門を締めたり緩めたりする“骨盤底筋体操”というリハビリテーションが有用です。

術後に性機能障害(勃起障害)の合併症が起こる可能性があります。性機能障害からの回復は手術中に性機能を調節する神経の温存をしたかどうかによって異なります。また、ロボット支援前立腺全摘除術の場合は比較的術後の性機能回復が良好となる可能性が高いといわれています。しかし、神経温存をした場合でも性機能障害からの完全回復は難しいのが現状で、必要に応じて経口薬の内服などによるフォローアップを行います。

手術支援ロボットの登場により、開腹手術や通常の腹腔鏡手術に比べて精密な手術をすることが可能となりました。現在も手術支援ロボットの開発と進歩は続いており、今後さらに技術が進歩すれば、今よりもさらに精密な手術が可能となるかもしれません。将来的には、触覚の獲得やAIの導入により危険操作の予防ができるようになり、より安全な手術が可能となるのではないかと思われます。

前立腺がんは、適切な治療を受ければ良好な予後をたどる可能性が高いがんです。比較的ゆっくりと進行することが多く、悪性度が低く無治療でも問題ないタイプも存在するため、「治療しなくてもよい」と思われる方がいるかもしれませんが、悪性度が高い場合や悪性度が高くなくても進行した場合は、放置すると命に危険が及ぶ可能性があります。前立腺がんの患者数は近年急増し、最近では年間1万人以上が前立腺がんで亡くなっています。検診などで前立腺がんが疑われた場合は放置せず病院を受診し、適切な治療を受けてください。

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