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肺がんに対する外科的治療(手術)の種類・アプローチ方法

肺がんに対する外科的治療(手術)の種類・アプローチ方法
𩜙平名 知史 先生

独立行政法人国立病院機構 沖縄病院 外科医長/肺がんセンター長

𩜙平名 知史 先生

目次
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肺がんとは、肺に発生した悪性の腫瘍を指します。生涯で肺がんに罹患する確率は、男性で10人に1人、女性で21人に1人といわれています。

前のページでお伝えしたように、肺がんに対する治療の基本的な目的は病変をなくすことです。本記事では、肺がんに対する手術の種類と内容について、独立行政法人国立病院機構 沖縄病院の𩜙平名(よへな) 知史(ともふみ)先生にお話を伺いました。

肺がんに対する手術では、肺をどのくらいの範囲で切除するかがポイントになります。

肺がんの手術には以下の方法があります。

  • 肺葉切除術
  • 肺全摘術
  • 縮小手術(区域切除、部分切除)

肺がんに対する外科的治療

がんが発生した1つの肺葉*のみを切除する肺葉切除術です。

*肺葉:肺は左右一対の臓器で、右肺は1つ、左肺は2つの部分に分かれている。その1つ1つを肺葉という

肺全摘術は、片側の肺を全て切除する術式です。肺全摘術では片方の肺を失うことになるため肺活量が損なわれ、心臓の機能にも影響を及ぼします。このように患者さんの身体的負担が大きいことから、可能な限り回避することが推奨されています。

肺全摘術を回避し、肺機能の温存と根治性を保つために、気管支形成術を行うことがあります。気管支形成術とは、気管支を一度切り離し、がんの発生した部分を切除した後に再び気管支をつなぎ合わせる方法です。

縮小手術

縮小手術は、がんの根治性を担保しつつ肺の機能温存を重視する術式です。切除する範囲によって、区域切除(肺葉のうち、肺がんが発生した区域のみを切除する)と、部分切除(肺葉のうち、肺がんが発生した部分のみを切除する)にわかれます。

縮小手術の考え方には、消極的縮小手術と積極的縮小手術の二通りがあります。

消極的縮小手術

消極的縮小手術とは、もともと肺機能が低い方や高齢者など、手術に耐えうる体力がなく肺葉切除が困難なケースに対して行う縮小手術です。本来は根治のために肺をある程度の大きさで切除したいものの、術後の肺機能低下を考慮して小さく切除せざるを得ない、という点から“消極的”縮小手術と呼ばれます。

積極的縮小手術

一方、積極的縮小手術とは、体力的に肺葉切除が可能なケースでも悪性度の低い症例であれば可能な限り小さく切除し、根治を目指す縮小手術です。早期の肺がんに対する積極的縮小手術では、再発を防ぐために腫瘍の大きさと同等または20mm以上のマージンを確保することが重要とされています。

従来、肺がんに対する手術では開胸手術が一般的に行われていました。開胸手術とは、皮膚を大きく切開し、肋骨や筋肉を切って胸腔内に到達して行う手術です。開胸手術は肋骨や筋肉を切るため、身体的な負担が大きい点がデメリットでした。

医療技術の進歩に伴い、現在では、“胸腔鏡下手術”が広く行われるようになっています。胸腔鏡下手術では、胸の数か所を小さく切開し、胸腔鏡(小型のカメラを装着した機械)や手術器具を挿入して手術を行います。開胸手術に比べて小さな傷で済むため、侵襲性が低く術後の痛みが少ないというメリットがあります。

胸腔鏡下手術には、完全鏡視下手術と胸腔鏡補助下手術(またはハイブリッド手術)と呼ばれる方法の2種類があります。

完全鏡視下手術

完全鏡視下手術は、数か所の小さな切開部分から胸腔鏡を挿し込み、モニターを見ながら手術を行います。傷や術後の痛みが小さいことがメリットです。しかし、モニター越しの手術であるため、出血した際にすぐに止血できず対処が遅れてしまう可能性がある点がデメリットといえます。

胸腔鏡補助下手術(ハイブリッド手術)

胸腔鏡補助下手術(ハイブリッド手術)は、完全鏡視下手術よりも少し大きな切開部分から胸腔鏡と手術器具を挿し込み、モニターと直視で病変部を確認しながら行う手術です。胸腔鏡補助下手術は切開部分から視野を確保できますが、完全鏡視下手術より傷は少し大きくなります。

当院では安全性と確実性を重視し、主に胸腔鏡補助下手術を行っています。

手術では皮膚を切開するため、術後回復するまで痛みを感じることがあります。しかしながら、現在メインのアプローチ法として行われている胸腔鏡下手術は、開胸手術に比べて傷や術後の痛みが小さくて済みます。

当院では麻酔科と連携し、硬膜外麻酔*などを行うことで、可能な限り患者さんの痛みを軽減できるよう対応しています。

*硬膜外麻酔:背中に細い管を挿入して脊髄を包む硬膜の周囲に麻酔薬を注入し、痛みを緩和する方法。手術の場合は、全身麻酔と併用することも多い。

手術によって肺の一部を切除すると、肺活量などの肺機能が低下することがあります。そのため肺がんの手術前には肺機能の評価を行い、標準的な術式が実施可能かどうか、術前術後に呼吸器リハビリテーションを実施するかといった点を検討します。

肺の手術後は、痰が多く出ることがあります。すると、もともと呼吸機能が低い方などは痰を出しきれないことで肺炎を起こすことがあります。

肺瘻(はいろう)とは、肺を切除した部分から空気が漏れることを指します。通常は術後数日で自然に治りますが、ケースによっては長期間続くことがあります。

手術時には、肺瘻を防ぐために切除部位を補強します。しかし、術後に肺瘻が長期間続くようなケースに対しては、自己血パッチを用いることがあります。自己血パッチとは、自身の血液(自己血)を胸腔内に注入し、自己血の凝固により肺瘻を治す方法です。

手術中に長時間体を動かさずにいることで、術後、肺血栓塞栓症エコノミークラス症候群ともいいます)を引き起こすことがあります。肺血栓塞栓症とは、足や下半身で発生した血のかたまりが血流にのって心臓内に到達し、肺動脈につまることで、胸の痛み、咳、呼吸困難、循環不全などをきたす病態です。

肺血栓塞栓症を防ぐために、手術中にエアマッサージ器で足をマッサージする、医療用弾性ストッキングを着用するといった対処方法を実施することがあります。

肺がんの手術中〜術後は、長時間の安静によって血行が悪くなり、血栓ができやすい状態になります。また、動脈硬化が進んでいる場合は血管が狭小化しており、心筋梗塞脳梗塞をきたす可能性があります。そのため、必要に応じて手術前に心機能評価を行います。心機能評価では、心電図や心エコー、冠動脈CT、冠動脈造影検査を行います。当院では、心臓病の既往または心臓病の恐れがある患者さんの場合には、手術前に冠動脈の評価と虚血性心疾患の有無の確認を行っています。

手術中のリンパ節郭清*の際、反回神経(声帯の動きを司る神経)を損傷するケースがあります。その場合、術後、反回神経麻痺の症状として声のかすれ(嗄声(させい))が起こる可能性があります。

*リンパ節郭清:手術時に、がんだけでなくがん周辺のリンパ節を切除すること

肺がんの手術前には、全身状態および遠隔転移の評価を行います。

全身状態の評価では、肺機能(呼吸機能)と心機能を評価し、手術に耐えうる体力があるかどうかを判断します。また、遠隔転移の評価では、脳や骨、腹腔内臓器への転移の有無を調べます。評価の結果、術後のリスクが懸念される部位に関しては、手術前に治療を行うこともあります。

先に述べたように、肺がんの手術後は肺の機能が低下します。そのため、術前・術後に呼吸訓練などの呼吸器リハビリテーションを行うことで、術後合併症の予防と術後のスムーズな回復を図ります。

肺がんは、喫煙と大きな関係があるといわれます。そのため、手術後は禁煙を心がけてください。また、副流煙による受動喫煙にも注意が必要です。

残った肺の機能を維持、向上させるためには、術前・術後に行う呼吸器リハビリテーションを日常生活で継続的に行うことも大切です。できるだけ家にこもらず、外で適度な運動を行うことをおすすめします。

次のページでは、肺がんに対する内科的治療についてご説明します。

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