疾患啓発(スポンサード)

聖路加国際病院における人工膝関節置換術後のリハビリテーション

聖路加国際病院における人工膝関節置換術後のリハビリテーション
北村 信人 先生

学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 副院長、整形外科部長、スポーツ総合医療センター長、リハ...

北村 信人 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)で手術を受けた後は、早期回復を目指して手術の翌日からリハビリテーション(以下、リハビリ)を開始します。「“手術とリハビリはセットで治療である”という考えのもとリハビリに取り組んでいただきたい」と聖路加国際病院において整形外科部長を務める北村 信人(きたむら のぶと)先生はおっしゃいます。

今回は北村先生に、人工膝関節置換術後のリハビリの概要や注意点などについてお話を伺いました。

当院では、人工膝関節置換術後のリハビリとして、関節可動域訓練、立位・歩行訓練、筋力増強訓練の3種類を行っており、理学療法士の指導のもとで術後の状態に応じてこれらを順次実施しています。

PIXTA
画像提供:PIXTA

関節可動域訓練とは、関節の曲げ伸ばしをスムーズにするために手術の翌日から開始するリハビリです。縮こまっている筋肉や腱を伸ばして関節の可動域を改善させるとともに、傷が治る過程で組織同士が癒着するのを防ぐといった観点からも重要なリハビリといえます。

PIXTA
画像提供:PIXTA

立位・歩行訓練は、平行棒や松葉杖を使って自分ひとりで歩けるようになることを目的としています。手術の翌日から平行棒を用いて自立歩行を開始しますが、術後すぐの状態では痛みがあるので、歩きたくないと感じる方もいらっしゃるでしょう。しかし、早期に立位・歩行訓練を始めることは筋力の回復を早めるとともに、心肺機能を回復させることにもつながるので非常に大切です。

PIXTA
画像提供:PIXTA

脚の筋力を増強させるために行うリハビリです。手術翌日から足首の関節の曲げ伸ばしを開始し、段々と負荷の大きな脚上げやスクワットなどを行うことで筋力の回復を図ります。

手術前の運動状況などによって個人差はありますが、手術後2~3週間ほどで日常生活を送れるまで回復する場合がほとんどです。ただし、料理や洗濯、掃除といった家事全般を1人でできるようになるためには、1~2か月程度かかると考えておいたほうがよいでしょう。また、仕事復帰までにかかる期間はデスクワークであれば1~2か月程度、重労働となると3~6か月程度と考えられます。術後の回復時期については手術前に医師にご相談いただくことをおすすめします。

関節可動域訓練は、術後のリハビリでもっとも重要なポイントです。変形性膝関節症で人工膝関節置換術を受ける患者さんの多くは、筋肉や腱が縮こまり、関節が曲がった状態になっています。長い間この状態だった場合は簡単には膝が伸びないため、術後早期の段階で関節可動域訓練を開始し、筋肉や腱のつっぱりを解消させて、スムーズに膝の曲げ伸ばしができるようにしていきます。

転倒してしまうと人工膝関節そのものが壊れることは少ないものの、人工膝関節のつなぎ目や周囲の骨が折れてしまうことがあります。人工膝関節置換術後の骨折を元の状態に戻すのは非常に困難ですから、当院では転倒防止の一環としても筋力増強訓練によって筋力をつけていただくように指導しています。

人工膝関節置換術を受けた方は、基本的に手術翌日からリハビリを開始します。早期回復を目指して、当院では理学療法士や看護師による全面的なサポートを行っています。

また、人工膝関節の耐久性に関わるため、リハビリの一環として生活指導も重視しています。人工膝関節に負荷をかけ過ぎないように適正体重を維持し、激しい運動を控えていただくようお伝えしています。

退院時にはすでに松葉杖などを使って自立して歩けるようなっているため、退院後に患者さんが自宅で実施するリハビリは関節可動域訓練と筋力増強訓練が中心になります。退院時には手術した関節が完全に治っているわけではないので、癒着のリスクを軽減するためにも関節可動域訓練をしっかりと行うことが重要です。また、筋力増強訓練を継続して行うことで、体力の回復に努めていただきたいと思います。

以下では、ご自宅で行うリハビリのポイントをご紹介します。

膝の曲げ伸ばしできる範囲を最大限維持するとともに癒着を防ぐためにも、関節可動域訓練を継続することが大切です。まず朝起きたら膝がまっすぐになるよう伸ばします。自力で伸ばせない場合は、重りを使って上から押さえても構いません。何分か行って体が温まってきたら、椅子に座って膝を曲げる訓練を始めてください。なかなか体が温まらなかったり、関節が動きにくかったりする場合には、お風呂で体を温めながら行うのもよいでしょう。

人工膝関節置換術をすると膝の周囲を鍛えることに意識が向きがちですが、歩く際は股関節(こかんせつ)や体幹の筋肉も重要になります。特に高齢の方では、四肢や体幹の筋力が若い頃と比べて衰えています。人工膝関節置換術後もできる限り運動能力を維持して長持ちさせられるよう、膝だけでなく全身の筋肉を鍛えることを心がけましょう。

人工膝関節置換術を行った場合、人工膝関節が壊れてしまうことがないように生活を送る必要があります。特に人工膝関節置換術を受けた方に注意していただきたいポイントは以下の2点です。

運動の開始は手術後およそ6か月後から

手術部位の腫れが引いていない段階で運動を始めてしまうと、腫れがぶり返して痛みが出てきてしまうため、運動は傷口が治って腫れが治まるまで待つことが大切です。腫れが治まる期間は人工膝関節手術の方法によっても異なりますが、6か月ほどはかかると思っておくとよいでしょう。

膝に負荷のかかる激しい運動は避けて

人工膝関節の耐久性は向上しているものの、長期間にわたって強い負荷がかかり続けると壊れてしまう可能性があります。そのため、たとえ人工膝関節置換術後6か月以上経過したとしても、サッカーやバスケットボールといった膝に大きな負荷がかかる運動をすることは推奨できません。

一方、ウォーキングやヨガ、水泳、サイクリングなどは筋力増強の意味でも積極的に行っていただくようお話ししています。なお、テニスのダブルスやゴルフは年に数回程度であれば行ってもよいと考えていますが、人工膝関節置換術後に運動したいという希望がある場合には、事前に医師に相談することをおすすめします。

人工膝関節の緩みや骨の配列(アラインメント)の変化がないかどうかを確認するために、退院後も定期的に受診いただく必要があります。当院では、手術後1か月、4か月、6か月、1年の頻度で受診していただきます。手術から1年が経過して特に異常がない場合、その後は1年に1度定期検診に来ていただきます。まれに骨が溶けてしまうケースもあるため、そういったトラブルを見逃さないためにも忘れずに受診いただきたいと思います。

変形性膝関節症に限った話ではありませんが、リハビリは患者さん自身が目的意識を持って行うことが大事です。なぜなら、手術をしたら治るわけではなく、その後のリハビリによってQOL(生活の質)の改善の度合いが変わってくるからです。だからこそ、“手術とリハビリはセットで治療である”という考えのもと、充実した日常生活を送ることを目的としてリハビリに取り組んでいただきたいと思います。

痛みがなくなるとリハビリが疎かになる方も中にはいますが、リハビリを継続することで行動範囲が広がり、できることも増えて日々の生活が楽しくなるでしょう。膝の痛みがなかった頃の自分に戻るという意識で、リハビリに取り組むことをおすすめします。

当院を初めて受診される方は、当院宛の紹介状をご用意のうえ、予約センターにご連絡ください。

北村先生に無料で相談

学校法人聖路加国際大学 聖路加国際病院 副院長、整形外科部長、スポーツ総合医療センター長、リハビリセンター長

こんなありませんか?

Check!
  • 治療を検討している
  • 治療方法について不安がある
  • 受診前に相談したい

北村先生に
無料で相談してみましょう!

お問合せフォームで無料相談

医師の詳細ページへ︎

「変形性膝関節症」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

変形性膝関節症でお悩みの方へ

北村先生に無料で相談する

本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。