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おたふく風邪(こども)

目次

おたふく風邪(こども)とは

おたふく風邪とは、正式名称を「流行性耳下腺炎」と呼びます。ムンプスウイルスに対して、咳や唾液等を介して飛沫感染や接触感染することで引き起こされる疾患です。耳の下に位置する「耳下腺」と呼ばれる唾液を作る組織に炎症が生じることから、同部位の腫れを特徴とした症状を呈します。
おたふく風邪は、保育所や幼稚園などの集団生活を開始したばかりの小児に多く見られ、6歳までのお子さんが発症例の半数以上を占めると報告されています。一度感染することで一生涯の免疫が獲得されますが、中には成人になってから初めておたふく風邪を発症する方もいます。
通常は大きな合併症もなく自然に治癒することが多い病気ですが、時に難聴や不妊の原因になることも知られています。そのため、予防接種を含めた感染予防策を徹底することが重要であると考えられています。
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【ムンプスとおたふく風邪―ワクチンで9割は予防できる】

原因

おたふく風邪を引き起こすウイルスは、ムンプスウイルスと呼ばれます。ムンプスウイルスは感染者の唾液中に大量に存在することから、咳や唾液等を介して感染が周囲に拡大することが知られています。唾液を作る耳下腺以外にも、性腺や膵臓など、いわゆる「腺組織」と呼ばれる部位を好んで感染します。腺組織とは、消化液や精液等の液体成分を生成する組織のことを指します。また、ムンプスウイルスは中枢神経に対して感染しやすいことも知られています。ムンプスウイルスが好む臓器を把握することは、合併症についての理解を深めるために非常に重要なことです。
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症状

ムンプスウイルスに飛沫感染や接触感染で感染したのち、およそ2〜3週間ほどの潜伏期間を経ておたふく風邪の症状が出現します。
おたふく風邪では、耳下腺の周りに炎症が生じることから、発熱が生じることに加えて突然耳の下が腫れたり同部に痛みを伴ったりするようになります。片側から腫れることが多く、1〜2日ほどのタイムラグでもう片方の耳下腺も腫れるようになります。唾液を作る組織に炎症が起きていることから、食事摂取(特に酸っぱいもの)により唾液分泌が亢進すると、耳の下の痛みが増強することも特徴的です。一週間ほど症状は持続し、これら症状は落ち着いてきます。発症の数日前から発症後5日が最も周囲への感染力は高いです。しかしながら、おたふく風邪の症状が必ず出現する訳ではなく、およそ3割のお子さんではムンプスウイルスに感染しているが症状がはっきりしない、不顕性感染を呈すると言われています。
おたふく風邪には様々な合併症を伴うことがありますが、「後遺症残す」という観点から、難聴と不妊の二つはとても重要です。おたふく風邪に伴う難聴はムンプス難聴と呼ばれ、おたふく風邪の制圧が完全にはなされていない日本において、この合併症は看過することは出来ません。約500-1,000例に1例において聴覚障害が生じていると報告されており、主には片側です。耳の聞こえが悪くなると、同時に発語にも影響が及びます。お子さんからの訴えがないことも稀ではなく、周囲の大人に疑われて初めて難聴を指摘されることもあります。完全な聴力喪失は稀ではありますが、部分的な聴力障害であったとしても日常生活における影響は大きいです。聴力の低下により、学業や友人との社会生活に多大なる弊害を生じることもあり、職業選択の自由が選択されることもあります。ムンプス難聴は回復することはなく、補聴器などによるサポートが必要になります。
その他、成人期に感染した場合においては、20-30%の方において性腺(精巣や卵巣)に炎症を生じることがあります。発熱に加えて、腹痛や陰嚢の腫れ・痛みを伴います。多くの場合は片方の性腺が影響を受けるのみであり、両側に炎症が起きることはまれです。しかし両側に炎症を起こした際、男性の場合においては特に、不妊につながることが稀ながらあります。
またその他髄膜炎や膵炎などを合併し、それぞれ頭痛や嘔吐、腹痛等を生じることがあります。これらの合併症は、おたふく風邪が治ったと思われる時期(すなわち、耳の腫れが治まりつつある時期)にも生じることがあります。おたふく風邪の経過中数週間は、合併症の発生にも注意を払うことが大切です。
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検査

おたふく風邪の診断は、主に臨床症状からなされます。しかし耳下腺が腫脹する疾患は他にもあり、判断に迷う際、もしくは合併症を呈する等で確定診断をすることが求められる際には、ムンプスウイルスの存在を証明する検査が行われます。ウイルスの存在証明のためには、血液検査にて抗体を調べることが一般的です。特殊な状況がある場合には、ウイルス分離やウイルスの遺伝子を同定する特別な検査が行われることもあります。

治療

おたふく風邪における治療は、対症療法が主体です。発熱や耳下腺の痛みに対しては、解熱鎮痛薬が使用されます。症状によっては食事摂取がままならないこともあり、点滴が適応になることもあります。おたふく風邪に罹患した際には、学校保健法にて登校・登園を控えることが定められており、かかりつけの先生の指示に従うことが必要です。
ムンプスウイルスに対しての特別に効果のある薬は存在しないことから、ワクチンによる予防接種がとても大切です。ワクチンにおける予防効果は非常に高く、合併症の発生率も有意に低下させることは、諸外国から多く報告されています。そのため、多くの先進国において、ムンプスワクチンは定期接種の位置付けになっています。日本において、ムンプスワクチンは1989年から定期接種として導入されていました。しかし、ワクチン関連の無菌性髄膜炎が多く発生したことを受け、1993年にムンプスワクチンの定期接種は中止されています。こうした歴史的な背景もあり、日本においては2017年現在、任意接種としての導入に留まっています。ムンプスにおける合併症や、ワクチンによる効果・副作用を充分に加味しながら対応することが大切です。
難聴が発生した場合には、聴覚障害の程度に応じて補聴器や人工内耳を使用することもあります。また周囲の理解も必要であり、長期的な社会的サポートを充実させることが大切です。
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参考
【国立感染症研究所(おたふく風邪)】
小児内科 増刊号 2008, p.1157-p.1160
【国立感染症研究所(小児科からみたムンプス難聴について)】
【立感染症研究所(ムンプス難聴と聴覚補償)】
【CDC(ムンプス)】
【国立感染症研究所(おたふくかぜの自然感染とワクチン接種後の無菌性髄膜炎の発生について)】

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