ぶるせらしょう

ブルセラ症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

ブルセラ症とは、ブルセラ菌によって感染することで引き起こされる感染症を指します。ブルセラ症を引き起こす病原体は、人に対してのみではなくペットの犬や家畜として飼われる牛、豚、ヤギ、また野生動物においても感染することが知られており、ブルセラ症は人獣共通感染症の一種として認知されています。

ブルセラ症は日本においては法律上4類感染症に指定されおり、発生数を全数把握することが求められています。近年の動向を見ると、日本国内では1999~2016年の18年間で38件の発症報告がありました。しかし、世界へと目を向けると地中海周辺地域(ポルトガルやスペイン、トルコ、北アフリカなど)を中心とした地域で食事等を通じて感染することもまれではないため、病気のハイリスク地域として認識されています。屠殺場や食肉加工場にて働く方や、野生動物のハンターなども病原体に曝されるリスクが高いです。さらに、妊娠中の女性が感染すると胎児にも重篤な影響が生じるため、注意喚起がなされています。

近年の日本において発生数は少なく推移していますが、ペット間で集団感染を示すこともあるため、動向に注意することが求められる疾患であると言えます。
 

原因

ブルセラ症は、ブルセラ菌に感染することを原因として発症する病気です。ブルセラ症を引き起こす菌は一種類ではなく、Brucella melitensis やBrucella abortus、Brucella canis, Brucella suis を代表としていくつものものが知られています。ブルセラ菌は100個以下の菌数でも感染するという感染力の強い菌です。日本ではBrucella abortusらによる家畜によるブルセラ症はほぼ撲滅されていますが、現在でも犬のBrucella canis感染がみられ、ヒトにも感染を起こします。犬の2~3%がキャリアであるといわれています。

ブルセラ菌は犬や牛、豚、ヤギやヒツジのほか、アザラシの中にも潜んでいることがあります。またブルセラ菌は、野生動物のみではなく、ペットや家畜として飼われている動物中に潜むこともあります。このように幅広い種族において感染するブルセラ菌は、さまざまな状況において人へと感染が広がる可能性を秘めています。

こうした背景があるため、ブルセラ菌に感染した動物からの乳や乳製品を人が摂取することでヒトに感染、発症することもあります。また、屠殺場や食品加工場などで働いている方、野生の豚やパイソンなどを狩るハンターも感染リスクは高いといえます。
 

症状

ブルセラ症は病原体に感染しから、1〜3週間ほどの潜伏期間(ときに半年近く)を経て発症します。病気を発症すると、発熱、筋肉痛、全身倦怠感、頭痛食欲不振などの症状が出るようになります。急性期の発熱は高く、時間経過を経ても微熱が残ることもあります。

その他、関節炎、精巣炎及び続発症としての不妊症心内膜炎、神経症状、貧血、慢性疲労、うつ、肝臓や脾臓の腫大など実に多様な病態を引き起こすこともあります。軽症の場合には数週間から数ヶ月の経過で自然治癒することもありますが、心内膜炎が重篤化して死に至ることもあります。

ブルセラ菌が妊娠中の女性に感染すると、流産や死産、早産など胎児に重篤な健康被害が生じるため注意が必要です。
 

検査・診断

ブルセラ症の診断は、病原体を分離・同定することによる検出、抗原抗体反応検査、PCRによる病原体遺伝子の検出によってなされます。用いられる検体としては、血液、骨髄、リンパ節などがあります。

ブルセラ菌を実際に同定する検査はどの施設でもできるというわけではなく、検体を扱う基準を満たした施設(Biosafety Level 3基準)にて行われることになります。
抗体の検出においては、感染早期であればIgM抗体が、活動型の感染時期の場合にはIgA とIgG 抗体の検出を行うことになります。
 

治療

ブルセラ症の治療には、テトラサイクリンやリファンピシン、キノロン系といった抗生物質が使用されます。どの臓器に病変が生じているのかに応じて、使用薬の選定や治療期間などが決定されます。

ブルセラ症では実用可能な予防接種はありません。そのため、ワクチン以外での予防対策を行うことが重要になります。日本においては問題となることは多くありませんが、まだまだ世界にはブルセラ症は根絶されていない地域もあります。調理が不十分な肉の摂取を避ける、殺菌処理が行き届いていないミルクやチーズなどの乳製品の摂取を避ける、などの予防策が重要です。

また、病原体に汚染された動物と接する可能性がある場合には、防御策を講じることが重要になります。具体的には手袋やゴーグル、ガウンやエプロンなどを着用し、物理的な接触を避けることが有効手段となります。

飼育場や屠殺場などではブルセラ症の感染が確認された場合には、市場に出回る前に検疫をかけることもあり感染拡大を防ぐための重要な手段として認識されています。
日本においては、レンタル犬サービス場や犬繁殖場で集団発生を来した事例もあります。普段の生活を送る分において日本での感染リスクは高くはありませんが、こうした事例があることからも完全に安心しきるのではなく、有事の対応に備えることが重要であると言えます。
 

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