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ゆーいんぐにくしゅ

ユーイング肉腫

最終更新日:
2020年12月22日
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2020/12/22
更新しました
2020/12/17
更新しました
2017/04/25
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概要

ユーイング肉腫は、骨あるいは軟部組織に発生する悪性腫瘍(あくせいしゅよう)の1つです。骨を起源とする悪性骨腫瘍としては、骨肉腫軟骨肉腫に次いで多いことが知られています。しかし、悪性腫瘍全体からみると頻度は非常に低い病気で、代表的な希少がんの1つです。また、小児慢性特定疾病の指定を受けている病気でもあります。10歳前から20歳代などの小児や若年者に好発します。

ユーイング肉腫では、その種類や病状の進行度に応じて、手術療法、化学療法、放射線療法を組み合わせた強力な治療が行われます。そのため、病気そのものや治療に関連したさまざまな障害(手術に関連した機能障害、化学療法に関連した心臓や腎臓などの障害、放射線治療に関連した神経麻痺や成長障害など)を残すことがあるため、治療後も長期的なフォローアップが必要な病気です。

原因

ユーイング肉腫の発生には、遺伝子の異常が深く関与していると考えられています。頻度の高い遺伝子異常として、EWS 遺伝子とFLI1遺伝子に関連したものが知られています。ヒトの細胞には1から22番目までの常染色体が2対(44本)と2本の性染色体の計46本が存在していますが、EWS 遺伝子とFLI1遺伝子はそれぞれ常染色体の22番目と11番目に位置しています。

ユーイング肉腫の細胞においては、11番染色体と22番染色体が転座(相互に入れ替わること)を起こすことで、それぞれの染色体に乗っているこれらの遺伝⼦の位置が入れ替わってしまっており、EWS-FLI1キメラ遺伝子と呼ばれる異常な遺伝子が形成されます。こうしたキメラ遺伝子はユーイング肉腫の異常細胞にのみにみられ、正常な細胞にはみられません。

EWS-FLI1などのキメラ遺伝子が存在すると、正常な細胞増殖に重要な遺伝子が不適切に調整されるようになります。その結果、細胞が過剰に増えたり、正常に成熟できなくなったりすることで、異常な細胞が大量に産生されることになります。EWS遺伝子の相方として融合する遺伝子は、FLI1遺伝子以外にも知られています。これらにより形成されるキメラ遺伝⼦の頻度はEWS-FLI1遺伝⼦より少なくなりますが、異常な細胞増殖に至るという結果は同じであると考えられています。

症状

ユーイング肉腫の好発部位は、骨盤、大腿骨(だいたいこつ)、下腿の骨(腓骨、脛骨)、胸壁、上肢、脊椎(せきつい)などであり、筋肉などの軟部組織に発症することもあります。

骨肉腫長管骨(ちょうかんこつ)(四肢を構成する骨にみられる長大な骨)の端の部分(骨幹端部)に発生しやすいのに対し、ユーイング肉腫は長管骨の幹の部分にあたる骨幹部の発症が多いことが知られています。脊椎に生じたユーイング肉腫の場合、歩行障害や排尿障害がみられることがあります。

また、腫瘍が発生した部位に⼀致して、痛みや腫脹(しゅちょう)(はれ)などもみられます。さらに、発熱を伴うことや、麻痺や骨折をきっかけに見つかることもあります。ユーイング肉腫では肺や他の骨などにも転移をすることがあります。病気が進行すると、転移した部位に応じて咳や呼吸困難、貧血などがみられるようになります。

検査・診断

画像検査と病理組織検査が主体となります。

画像検査

レントゲン写真やCT、MRI、PET-CT、骨シンチなどが行われます。

骨の局所での病変(病気による変化)の進行度合いの評価に加えて、ユーイング肉腫で転移を起こしやすい肺や骨の病状を確認することも重要です。また、全身臓器への転移や周囲組織(神経や血管など)との位置関係を正確に確認することが必要です。

診察・画像検査の結果から、病変がどのような性格のものなのか、ある程度予想することができます。

病理組織検査

最終的な確定診断は、病理組織検査(腫瘍の組織を採取して顕微鏡で調べる)によって⾏われます。病理組織検査のために組織や細胞を採取することを生検といい、大きく分けて、針生検と切開生検の二通りの方法があります。病理組織検査により、形態学的な診断に加えて、発症に関わるとされるEWS-FLI1キメラ遺伝⼦などを、FISHや免疫組織学を用いて確認します。

ユーイング肉腫は骨髄に転移することがあり、必要に応じて骨髄検査を行うことで腫瘍細胞の侵入を確認することも行われます。

治療

病気が最初に発⽣した部位(原発巣)にのみ病変が存在する「限局性」と、臨床的・画像的に転移を認める「転移性」に分類されます。最大限の治療効果を得つつ、社会復帰後のことも考慮した機能温存の観点も重視して、手術や化学療法、放射線療法などを組み合わせて集学的な治療を行います。

限局性のユーイング肉腫では、抗がん剤によって原発巣の縮小を図るとともに微小転移の治療を行い、その後、手術や放射線によって原発巣の根治的治療を行います。

外科治療(手術)の目標は、(1)腫瘍の原発巣を完全に切除すること(2)腫瘍とともに切除した骨や関節を再建し患肢の機能を回復することです。放射線療法は腫瘍に放射線を照射し、腫瘍を死滅させる方法です。腫瘍の大きさや場所により手術のみでの完全切除が困難な場合に、補助的な治療法として局所制御を目的に使用されたり、脊椎や骨盤など、手術が困難な場合に局所根治目的で用いられたりします。

化学療法の目的は、肉眼的あるいは顕微鏡的に体内に広がっているユーイング肉腫の腫瘍細胞を抗がん剤によって死滅(あるいは減少)させることです。現在、VDC-IE療法(V:ビンクリスチン、D:ドキソルビシン、C:シクロホスファミド、I:イホスファミド、E:エトポシドの抗がん剤を組み合わせた化学療法)がもっとも広く用いられてます。

しかしながら、転移性のユーイング肉腫については十分な治療成績が達成されているとはいいがたく、ユーイング肉腫全体の治療成績向上のためにもさらなる治療法の開発が望まれています。

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