概要
下垂体炎とは、脳の一部位である下垂体に炎症が生じる疾患です。 「リンパ球性下垂体炎」や 「肉芽腫性下垂体炎」と呼称されることもあります。
下垂体は副腎皮質刺激ホルモンや甲状腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモンなどを放出して、他の器官に働きかけ、重要なホルモン分泌調節を司る役割があります。
また、成長ホルモンやプロラクチン、抗利尿ホルモンなどさまざまなホルモンの分泌も行い、ヒトの生命活動のなかで非常に重要な働きを担っています。
下垂体にどのようなメカニズムで炎症が引き起こされるのか明確には解明されていません。しかし、他の自己免疫疾患を合併している例が多いことや、組織学的に下垂体にリンパ球の浸潤(広がり)が見られることから、何らかの自己免疫疾の異常が関与していると考えられています。
また近年では、抗体の一種であるIgG4が増加することでIgG4陽性形質細胞がさまざまな臓器に浸潤して障害を引き起こす全身性IgG4関連疾患という病気が難病指定されており、下垂体炎はその症状の一部として発症することもあります。
下垂体炎は下垂体機能を低下させるため、さまざまなホルモン分泌が低下して全身に多くの症状を引き起こします。
下垂体炎はまれな疾患ですが、下垂体腺腫などの下垂体機能低下を引き起こす他の疾患との鑑別(見分けること)が困難な場合も多く、除外診断を行うことで適切な診断を行う必要があります。
原因
下垂体炎の発症メカニズムは明確には解明されていませんが、妊娠末期~産褥期の女性に発症することもあります。
また、下垂体炎では下垂体内にリンパ球の浸潤が多く見られることや、他の自己免疫疾患を罹患している患者さんが多いことから、何らかの自己免疫異常によって引き起こされることが示唆されています。
一方、近年では抗体の一種であるIgG4が高値で、下垂体内にIgG4陽性形質細胞が多数浸潤しているケースも見られており、全身性IgG4関連疾患の一症状として発症することもあります。
症状
下垂体炎の主な症状は、頭痛、視野障害、下垂体機能低下です。
下垂体からは副腎皮質刺激ホルモンや甲状腺刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、抗利尿ホルモンなどが分泌されるため、これらの分泌が低下することで易疲労感や抑うつ気分、無月経、尿崩症など全身にさまざまな症状が現れます。
また、プロラクチンの分泌が上昇するケースもあり、乳汁分泌が生じることもあります。
検査・診断
下垂体炎はさまざまな症状が生じますが、基本的にはそれらの症状を引き起こす他疾患を画像検査などで除外することで最終的な診断がくだされます。
画像検査では、造影剤を用いたMRI検査が行われます。下垂体炎では下垂体茎や下垂体の腫大が見られますが、下垂体腺腫と見分けが付かないことも少なくありません。
このため、妊娠末期~産褥期にかけての急激な発症など、発症の状況などから下垂体炎を疑う場合には下垂体の生検を行って、リンパ球やIgG4陽性形質細胞の浸潤が見られないか病理検査が行われます。
また、下垂体の機能を把握するために、ホルモン値検査や、ホルモン分泌刺激試験などが行われることもあります。
治療
下垂体炎ではさまざまなホルモン分泌が低下するため、適切なホルモン補充療法が必要となります。
また、下垂体の腫大によって頭痛や視野障害などの症状が著しい場合には、ステロイド投与によって腫大を改善する治療が行われますが、効果が認められない場合は稀ですが外科的に腫大した下垂体の一部を切除することもあります。
ステロイド投与を続けることで、炎症は数か月で治まり、下垂体へのダメージの程度によっては下垂体の機能が回復する場合もあります。このため、下垂体炎は外科的な治療を行う前に適切な診断と内科的な治療が行われる必要があります。
医師の方へ
「下垂体炎」を登録すると、新着の情報をお知らせします
関連の医療相談が10件あります
ひどい夜泣き中のミルクの吐き戻しについて
生後4か月、息子のひどい夜泣きとその夜泣き中のミルクの吐き戻し、チアノーゼについてお伺いしたいです。 先程、ひどい夜泣き(ギャン泣き)中に自分のよだれでむせ込み、軽いミルクの吐き戻し、その吐き戻しにむせ込み顔を真っ赤にしむせ込みつつ多量の吐き戻しがありました。 その時に唇がチアノーゼを起こし横抱きのまま体を向けれる範囲で横向きにし背中をトントン叩き、チアノーゼが落ち着いたあとに縦抱き、泣き止むのを待ちました。 その後、泣き疲れたのか何事も無かったかのように普段と変わらず寝ていますが、チアノーゼを起こすほどのむせ込みがあったことで誤嚥していないか心配です。 受診した方が良いでしょうか? また今後同じようなことが起きた際の対処法があれば教えていただきたいです。 よろしくお願いします。
寝つきが悪い・お腹の不調・手足の冷え・発声しにくい・鬱など。姿勢が原因?
日常生活に支障が出るような症状がいくつかあり病院へ行こうと思っているのですが、まずどこへ行けばよいか分からないためこちらで相談させていただきたく思います。 具体的な症状を並べると、 ・寝つきが悪い ・肩が凝りやすい ・下痢や便秘が年中続く ・手足の冷え ・発声しづらい ・食後などに極端に声が出ないことがある(逆流性食道炎?) ・緊張していると酸欠っぽくなる ・鬱っぽくなる などです。 どれも慢性的なものですが、どれもが深刻です。かれこれ8年近く悩まされています。 そして、これらの根本的な原因は姿勢の悪さだと私は思っています。 猫背や反り腰がおそらく深刻なレベルです。 10年前に心臓の手術をしており、そのあたりから徐々に悪くなっていきました。 まずは整形外科などを受診して、姿勢改善に努めるべきでしょうか。 また、上記症状について薬で改善するものがあれば姿勢改善と並行して服用していきたいと考えています。 どういった科を受診すれば良いでしょうか。
扁桃腺手術
喉に濃栓がすぐできてしまい時々耳鼻科でとってもらっていたのですが、かなりしつこく大量にたまりやすいので扁桃腺をとることをすすめられました。慢性扁桃炎のため濃栓がができてしまうそうですが症状はのみこむときちょっと違和感があるくらいです。熱がでたりすることも今まではありません。このままにしておくと体にどんな悪い影響が出る可能性があるのでしょうか。 手術ということばに驚いて詳しく聞けず、入院一週間、全身麻酔の手術とネットでみて不安になり。できれば避けたいと思いまして。年齢は59歳です。
多飲、多尿について
私は1日にお茶や水を2〜3リットルくらい飲みます。意識しているのではなく、飲みたくなくても喉が渇きます。トイレも1日に10回くらい行きます。 尿崩症かな?と思い、飲み物を我慢するとトイレの回数は減ったので違うのかなと思いました。 調べると心因性多飲症があったのですが、その可能性があるのでしょうか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。