概要
冷気に触れたときや精神的に緊張したときに、手足の指先の小動脈が収縮し、血流が一時的に悪化する状態をレイノー現象と呼びます。典型的には、まず血流が悪くなると蒼白になり、さらに悪化すると紫になり、その後血流が戻ると赤になるといった、3色の色調の変化として見られます。色調の変化は通常境界が明瞭なのが特徴で、よく「冷え性」と呼ばれる、指が冷たくて全体的に色が白い状態とは異なります。
レイノー現象を診断する際には、①指が寒冷刺激に対して通常以上に反応する、②指が冷気に触れたとき色が変わる、③色が白、紫、あるいはいずれも見られる、の3つとも満たすことが必要です。
レイノー現象は、他の病気に伴って生じる場合は二次性(レイノー症候群)、特に原因が明らかでない場合は原発性(レイノー病)と呼ばれます。ここではレイノー病について解説していきます。
レイノー現象を来たす患者さんの約8割はレイノー病とする報告もあります。レイノー病はどの年齢層でも起こりえますが、15~30歳代の女性多いとされています。家族にレイノー病の方がいる場合、発症リスクが高まります。
原因
手足の指先へ血液を送る血管が、冷気やストレスなどをきっかけとして発作的に収縮し、細くなると血液の供給が乏しくなり、指の色が白く変化します。血液が乏しい状態がしばらく続くと、酸素の供給も滞り、チアノーゼの状態となり、表面上は紫色に見えるようになります。血管の収縮を起こした原因がなくなってしばらくすると血液の流れが元通りになり、指先の色調が元に戻ります。ただ、詳細なメカニズムはまだよくわかっていません。
症状
レイノー現象では、手足の指先の皮膚の色が白から紫、紫から赤と順次変化します。色調の変化は、数分から20分程度で回復し、「一時的」あるいは「発作的に」生じるのが特徴です。特に、暖かい場所から寒い場所に急に移って外気温が変化した際に生じやすく、一番起りやすいのは冬場の寒いときです。しかし、夏は冷房の効いた建物に入ったときや、冷蔵庫に手を入れたときなど、急な温度の変化により誘発されます。
ほとんどの場合は手の指先、特に人差し指、中指、薬指によく見られます。足の指もよく見られる一方、鼻、耳、唇などいずれも体の末端部で外気に触れ、寒冷にさらされやすいところにも生じることがあります。極端に血流が悪いときは冷感だけでなく、痛みやしびれを感じることもあります。原発性では症状は軽度であることが多いく、自然に症状が出なくなって治ってしまう場合もあります。
検査・診断
レイノー現象は、色調変化についての3つの問診(上記のレイノー現象の項参照)、あるいは写真で診断できるため、必須の検査はありません。3色の色調変化が典型的ですが、2色以上あればレイノー現象と診断します。専門的な評価のために、サーモグラフィーや指尖脈波が行われることがあります。冷水誘発試験はかつて行われましたが、今はあまり推奨されていません。
次に、レイノー病と診断するにあたり、動工具や薬剤、全身の病気などレイノー現象を生じる二次性の要因がないか問診で確認する必要があります。レイノー現象は、膠原病の中でも強皮症、混合結合組織病でほぼ必発し、しかも初発症状であることが多いので、これらの病気が疑われる場合は血液検査(自己抗体の測定など)や尿検査、画像検査などが適宜検討されます。また、他の身体状況から特にこれらの疾患が疑われなくとも、スクリーニングとして抗核抗体は一度検査した方がよいと思われます。
治療
レイノー現象の治療のゴールは、発作を起こらないようにすることです。
生活指導
誘因を避けることがレイノー現象の予防につながるため、
- 手袋や靴下を着用する
- 冬季に車に乗る際には暖房などで温度調節をおこなう
- 夏場でも直接冷房にさらされないようする
- 冷蔵庫の開閉の際に注意する
- 精神的なストレスを抱えないようにする
- 禁煙(タバコが細い血管を収縮させるため)
などを心がけることが大切です。
薬物療法
レイノー現象の程度が強い場合には、お薬を内服する治療も考慮されます。カルシウム受容体拮抗薬という種類の血圧を下げる薬は血管拡張作用を持つため、原発性レイノー現象(レイノー病)に対して有効であることが国際的な研究で示されています。
その他
薬剤のみではコントロールできない場合には、交感神経ブロックを行い血管が広がりやすくすることもあります。
レイノー病は時間経過とともに自然に改善することも期待できる病気です。一方、強皮症、混合結合組織病などの膠原病の初発症状であることもありますので、経過観察することも重要です。
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