概要
冷気に触れたときや精神的に緊張したときに、手足の指先の小動脈が収縮して、血流が一時的に悪化する状態をレイノー現象と呼びます。典型的には、指先に蒼白、紫、赤の3色の色調変化が見られます。詳細はレイノー現象(1)をご参照ください。
レイノー現象は、他の病気に伴って生じる場合は二次性(レイノー症候群)、特に原因が明らかでない場合は原発性(レイノー病)と呼ばれます。レイノー病についてはレイノー現象(1)をご参照ください。
レイノー現象を来たす患者の約2割が二次性(レイノー症候群)とする報告もあります。二次性の発症年齢は30歳以上に生じることが多いようです。
原因
原因には大きく外からの要因と、何らかの自身の病気による中からの要因に分けられます。
外からの要因としては、
(1)チェーンソーなどの振動する工具、タイピングやピアノなど、反復的に指を動かすこと
(2)一部の薬剤(β遮断薬、抗がん剤、エストロゲン、インターフェロン、エルゴタミン製剤など)
(3)手根管症候群
が知られています。
内からの要因がある場合は、
(4)膠原病
(5)血管の中が狭くなる病気(閉塞性血管疾患)
(6)その他の全身病(一部の癌、甲状腺疾患など)
がある場合に出現します。いずれの要因もない場合が原発性になります。(4)では強皮症、混合性結合組織病の頻度が高く、初発症状としてもよく見られます。
それ以外にも、全身性エリテマトーデス、多発性筋炎/皮膚筋炎、シェーグレン症候群、リン脂質抗体症候群でも見られます。(5)では動脈硬化、血管炎、閉塞性動脈性硬化症、動脈塞栓症、バージャー病などで見られます。
症状
レイノー現象では、手足の指先の皮膚の色が白から紫、紫から赤と順次変化します。2色以上の変化があればレイノー現象と診断できます。詳細はレイノー現象(1)をご参照ください。
原発性(レイノー病)では症状は軽度であるのに対して、二次性(レイノー症候群)では症状の程度が強いことが多いとされています。また、左右非対称であったり、指以外にも症状が出ることがあります。特に閉塞性血管疾患に起因する場合はその罹患血管の末梢に起こるのが原則です。原発性では自然に症状がよくなってしまうことがありますが、二次性では何年も症状が持続しますので、血液の流れが悪い状態が長く続くと、指の先に潰瘍ができたり、一部が腐ってしまうこともあります。レイノー現象が出現する際の色調変化や疼痛の程度が強かったり、レイノーの発作が頻繁に起きたり、一度の発作が長期間持続する場合は、指先の潰瘍が生じやすいとされています。
また、二次性ではレイノー現象以外の症状として、皮疹や関節の痛み、腫れなどの症状が出現することがあり、随伴する症状に基づきレイノー症候群の原因が判明することがあります。
検査・診断
問診を含めてレイノー現象が確認された際には、原因となる病気がないかどうか評価するための検査を行います。膠原病では全身各所に臓器障害を起こすため、全身を診察し、血液検査や尿検査による臓器障害(血球の状態や腎障害など)、自己抗体の測定を行います。また、血管の状態を評価するために、手足の血圧測定や血管造影(お薬を血管内に注射してX線を用いて血管を撮影する検査)を行うこともあります。また動脈硬化の原因となる糖尿病や脂質異常症の有無なども調べます。
治療
レイノー現象の治療のゴールは、発作を起こらないようにすることです。
生活指導
誘因を避けることがレイノー現象の予防につながるため、
- 手袋や靴下を着用する
- 冬季に車に乗る際には暖房などで温度調節をおこなう
- 夏場でも直接冷房にさらされないようする
- 冷蔵庫の開閉の際に注意する
- 精神的なストレスを抱えないようにする
- 禁煙(タバコが細い血管を収縮させるため)
などを心がけることが大切です。
薬物療法
レイノー現象の程度が強い場合には、お薬を内服する治療も考慮されます。カルシウム受容体拮抗薬という種類の血圧を下げる薬は血管拡張作用を持つため、二次性としては、強皮症に伴うレイノー現象に対して有効であることが国際的な研究で示されています。
その他
薬剤のみではコントロールできない場合には、交感神経ブロックを行い血管が広がりやすくすることもあります。
二次性レイノー現象の場合には、原因となる病気に対する治療も大切です。そのため、正確な診断が不可欠です。
医師の方へ
「レイノー症候群・レイノー現象」を登録すると、新着の情報をお知らせします