概要
心身症とは、心理社会的ストレスが原因となって発症したり症状が悪化したりする体の病気の総称です。同じく心理社会的ストレスによって発症する神経症、うつ病などの精神疾患とは異なり、ストレスに応じて体に明らかな器質的または機能的異常が現れる病態をいいます。
心理社会的ストレスが発症や病状の増悪・改善に関わるとされる病気にはさまざまなものがあり、過敏性腸症候群、機能性ディスペプシア、本態性高血圧症、アトピー性皮膚炎、頭痛、疼痛性障害などがあります。
心身症では心理社会的ストレスが重要な要因となるため、心理社会的ストレスを感じやすい生活習慣や行動様式のほか、性格や考え方のクセなどによって発症するリスクが高くなります。また、この病気は大人だけではなく0歳の乳児であっても発症することがあります。子どもの心身症は思春期を迎える頃にはピークを迎え、適切な治療を受けなければ成人になっても症状に悩まされ続けることもあります。
種類
心身症に分類される病気は多岐にわたり、代表的なものには以下のものがあります。
過敏性腸症候群
腹痛やお腹の不快感が繰り返し起こったり、便秘や下痢を繰り返したりする病気です。大腸に明らかな病変がないにもかかわらず、このような症状が長期間続くときに疑われます。
機能性ディスペプシア
消化管内視鏡検査などで明らかな異常所見が認められないにもかかわらず、慢性的なみぞおちの痛みや胃もたれなどが現れる病気です。
本態性高血圧症
血圧が高くなる高血圧症のうち、血圧を上げる原因が見つからないタイプのものを指します。高血圧症の大部分を占めます。
アトピー性皮膚炎
かゆみのある湿疹を慢性的に繰り返す病気です。アレルギー疾患の1つですが、心身症として取り扱われることもあります。
頭痛
頭痛のうち、頭が締め付けられるような痛みを繰り返す緊張型頭痛や、脈打つように激しい痛みと共に嘔気・嘔吐などが現れる片頭痛は、ストレスが要因の1つであるといわれています。
疼痛性障害
部分的、または複数の部位で痛みを感じ、その発症に心理的要因が関与していると考えられるものです。痛みを引き起こす明らかな異常が認められない場合もあります。
原因
心身症は、仕事や対人関係といった日常生活の心理社会的ストレスに長期間さらされる結果、体の中でのストレス反応が継続することで起こります。
ストレス反応とはストレスに対する体の防御反応のことで、ストレスを受けると交感神経系と呼ばれる自律神経や副腎皮質ホルモンなどのホルモン分泌が盛んに機能するようになり、心理面、行動面、身体面にさまざまな反応が起こるようになります。このような反応は本来であれば自分の身を守るための緊急で一時的な生理的はたらきですが、長期にわたり継続するとストレス障害となり、障害や疾病となって現れます。心身症は、そのようなストレス障害が身体面の病気として現れたものであるといえます。
心身症は、心理社会的ストレスを受けることに加え、その人の性格や考え方のクセなどによって発症するリスクが高まることが知られています。その1つが、心身症を発症しやすい性格特性として失感情症(アレキシサイミア)と呼ばれる性格的特性です。これは、自分の感情への気付きや、感情を言葉として表現することが苦手な人の特徴で、心身症を発症する人に多く見られる特徴の1つであるといわれています。
そのため、心身症を発症する人は自分が心理社会的ストレスを感じていることに気付いていないことも多く、治療の導入や継続が困難になることも少なくありません。
症状
基本的には、心身症として現れているそれぞれの体の病気に準じた症状が現れます。たとえば、過敏性腸症候群を発症している人は下痢や便秘が、機能性ディスペプシアを発症している人はみぞおちの痛みやお腹の張りなどがストレスに応じて認められます。
初診時には、自覚症状として分かりやすい頭、腹部、肩、手足などの痛みや、胸腹部のもたれ、吐き気、全身のだるさなどが目立つことが多く認められます。
検査・診断
心身症に定義される病気が疑われる場合、症状に応じた検査が行われます。器質的な変化(体の組織や内臓などが壊れたり、色や形が変わってしまったりする状態)がある場合は、内視鏡検査やX線検査、CT検査、MRI検査、血液検査などで分かることがあります。
心身症の中には、明らかな器質的変化が認められなくても、臓器運動の異常が現れたり、感覚の異常が現れたりする機能的変化が認められる場合があります。
いずれにしても心身症と診断するためには、心理社会的ストレスに密接に対応して身体症状が軽快・増悪するという心身相関の病態を確認できることが診断上必要となります。病名を記載する際は、緊張型頭痛であれば“緊張型頭痛(心身症)”と表記します。
治療
心身症は、心身医学療法と呼ばれる方法で、心と体の両面から治療を行います。心身医学療法には、大きく分けて心理療法と薬物療法があります。
心理療法
治療薬や医療器具などは用いずに、対話や作業、訓練などによって心理的ストレスに対するストレス反応の改善を試みる治療法です。認知・行動療法、自律訓練法、交流分析、作業・芸術療法、精神分析的治療法などがあります。
薬物療法
病気に応じた治療(たとえば、過敏性腸症候群であれば消化管機能調節薬や整腸剤など、機能性ディスペプシアであれば消化管運動機能改善薬や胃酸の分泌を抑える薬など)に加え、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬といった向精神薬を使用します。
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