しんしんしょう

心身症

目次

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概要

心身症を専門にしている日本心身医学会では、心身症を「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」と定義しています。

つまり、心身症とは、心理社会的ストレスによって発症もしくは症状が悪化する身体疾患のことを言うのです。

原因

心身症とはあくまで身体の病気であり、その病気の発症や過程に心理・社会的因子が大きく影響しているものを指します。心理・社会的因子のなかでも、もっとも大きいものは「ストレス」です。このことから、心身症は「ストレスが発症や過程に関わる身体の病気」であると捉えられます。

心身症には発症の誘因と考えられるものが提唱されており、特に以下の2種類がよく知られています。

アレキシサイミア(失感情症)

アレキシサイミアでは、自分自身の感情や情動に鈍感になってしまい、うまく言葉で表現することができません。自分の気持ちや他人の気持ちが掴みにくいため、ストレスを抱え込みやすく、心身症を発症しやすくなると考えられています。

過剰適応

過剰適応は心身症が発症し、不適応が生じる前の段階でしばしば見られる状態です。ストレスが負荷され、それが制御の限界を超えても、身体に不具合が出るまでがんばってしまう傾向のことを指します。

 

心身症発症の誘因

●アレキソミア
アレキソミアは、アレキシサイミアに続いて日本で提唱された概念です。自分自身の正常な身体感覚に気付きにくい状態です。アレキソミアと同様に心身症を発症しやすい素因であると考えられています。

●vタイプA行動パターン・陰性情動
タイプA行動パターンとは、他人に対して高い敵意を示して攻撃的であり、他人を信用せず、いつも時間に追いやられている行動パターンの全体を指します。このタイプは、無理をしやすい傾向にあり、虚血性心疾患の危険因子であると考えられていました。しかし、現在では、虚血性心疾患の危険因子となるのは敵意性の高さと抑うつ傾向であることが明らかになったため、タイプA行動パターンという用語はあまり使われません。その用語に代わり、うつに代表される陰性情動やストレスと虚血性心疾患が非常に強く関係するということが明らかになっています。

●タイプC行動パターン
タイプC行動パターンとは、いわゆる「いい人」と捉えられることの多い行動パターンを指します。怒りや悲しみなどの感情があってもそれを表に出さない傾向があり、忍耐強い人、協力的な人と捉えられることが多い行動型です。このタイプも、心身に負担をかけることが多く、心身症の誘因になると考えられています。また、癌との関連を示唆する学説があります。

症状

心身症は、多くの身体疾患の中に認められます。これを身体疾患(心身症)として診断するのが普通です。具体的には、

  • 消化性潰瘍(心身症)
  • 過敏性腸症候群(心身症)
  • 片頭痛(心身症)
  • 関節リウマチ(心身症)
  • 緊張性頭痛(心身症)
  • 気管支喘息(心身症)
  • アトピー性皮膚炎(心身症)

などが挙げられます。

たとえば、過敏性腸症候群(心身症)の場合、発症の源流として感染性腸炎にかかってしまったという既往が明確な場合があります。

しかし、心理社会的ストレスがあると、症状が悪化することが繰り返し報告されています。また、実際、震災によるストレスが、消化性潰瘍(心身症)の発症や過程において間接的に影響を与えた、ということを示す報告もあります。

検査・診断

心身症の診療においては、身体的な症状と心理社会的な要因との関連性を評価することが重要です。そのためには、病歴や生活史の聴取、行動観察、周囲からの情報収集などが必要となります。

心身症を診る専門の診療科は心療内科です。心療内科は、正式には内科の一部であり、心身医学に基づき身体の疾患を診る診療科です。より適切な治療を受けるためにも、受診の際に医師とよく相談することが重要です。

身体疾患である心身症と同時に、心理面の異常であるうつ病、不安症、身体化(身体症状症)が合併・併存している場合も少なくありません。心療内科ではこれらの問題についても適切な診断を下します。

治療

出現する身体症状に対する治療と、症状増悪の要因となっている心理面に対する治療が必要になります。心療内科では、身体面と心理面の治療をそれぞれ別個に実施するのではありません。心身を同時に診療することで心理状態と身体機能のつながり(心身相関)を正常化し、心身症を治療します。

身体症状に対する治療

たとえば胃潰瘍であればプロトンポンプ阻害薬などを、喘息であれば喘息の治療薬を用います。

心理面に対する治療

抗ストレス作用を持つ薬物を用いた薬物療法がしばしば行われます。抗うつ薬がその中心になりますが、抗不安薬やそれ以外の向精神薬もその種類や投与期間に注意しながら使用されます。これらと同時に、あるいは単独で、心理療法が行われます。心療内科で良く使用される心理療法は以下のものです。

(一般的な)心身医学療法

  • 認知行動療法
  • 自律訓練法
  • 交流分析法
  • 標準型精神分析療法

非常にストレスフルな職場で勤務していた人が、薬でコントロールできないような本態性高血圧症を発症するといったことがあります。こうしたケースにおいて心理療法を取り入れることで、薬剤を増量することなく高い降圧効果を得ることも可能となります。