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日本脳炎(こども)

脳

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概要

日本脳炎とは、コガタアカイエカと呼ばれる蚊により媒介される原因ウイルス(日本脳炎ウイルス)に感染し、発症する脳炎のひとつです。感染者の一部は脳炎を発症するといわれており、意識障害やけいれんなどをきたし、最悪の場合死に至ることもあります。日本脳炎は、脳炎ウイルスにより発症する病気のなかでも代表的な疾患とされ、ワクチンにより予防が可能な病気でもあります。

日本脳炎ウイルスは極東から東南アジア、南アジアに広く分布することが確認されており、世界的には年間3~4万人程度の日本脳炎患者の報告があります。日本脳炎ウイルスは、湿地などの沼地に生息するシギやツルなどの鳥、家畜として飼育される豚などの体内に生息します。コガタアカイエカは、人だけではなく、こうした鳥や豚の血液も吸うことが知られており、蚊を介して日本脳炎ウイルスが鳥や豚から人間に感染します。日本でも、西日本を中心に日本脳炎ウイルスに感染した豚が多いことが確認されており、日本における感染リスクも日常に潜んでいる状況といえます。

原因

日本脳炎は、フラビウイルス属の日本脳炎ウイルスにより引き起こされます。フラビウイルスに属するウイルスには、日本脳炎ウイルス以外にも脳炎を引き起こすセントルイス脳炎ウイルスや西ナイルウイルスなどがあります。これらにより引き起こされる脳炎のなかでも、日本脳炎は日本における発症例が多い病気とされます。

豚や鳥に生息する日本脳炎ウイルスは、蚊により人に伝播することはありますが、人から人にうつることはありません。蚊に吸血される際に、日本脳炎ウイルスが体内に侵入し、リンパ節をはじめとした各種臓器で増殖します。その後、血液を介して脳組織に進入し、特に神経細胞が密集した部位(大脳皮質、基底核など)で増殖して、神経細胞へのダメージを引き起こします。その結果、脳炎を発症し、重篤な症状をきたすとされています。

症状

日本脳炎ウイルスに感染しても、多くの方は症状を呈することはありませんが(不顕性感染と呼びます)、100〜1000人に一人の割合で脳炎を発症すると考えられています。また、無菌性髄膜炎という病気を発症することもあります。脳炎の典型的な発症様式は、ウイルスに感染した後6〜16日の潜伏期間を経て症状が現れることです。

初発症状は、突然発症する高熱、頭痛、嘔吐が多く、その後数日の間に、意識障害や意識変容を来たし、落ちつきがなくなったり、刺激に対して反応が乏しくなったりします。また、手足の震えが現れたり、急速に四肢(しし)の麻痺が現れたりすることもあります。その他、話すことに困難を覚える、嚥下障害や呼吸障害、複視などを呈することもあります。小児の場合は、特にけいれんや下痢、腹痛が起こることもあります。

致死率は高く、また、神経的・精神的な後遺症の発症率も残存することが多いと報告されています。

検査・診断

日本脳炎ウイルスに感染すると、体内ではウイルスに対する免疫反応として、抗体(特にIgM抗体)が産生されます。日本脳炎を診断するための検査では、血液もしくは髄液のなかにIgM抗体が存在していないかどうかを確認します。しかし、IgM抗体は病初期には確認できないこともあるため、特に日本脳炎が疑わしいときには繰り返し検査をすることもあります。

抗体検査は間接的にウイルスの存在を確認する検査ですが、直接的な確認のために、ウイルス分離やPCRといった方法が取られることもあります。特に重症例や剖検例においては、脳組織を採取し、その検体を用いたウイルス検査や組織染色を併用することもあります。

また、ウイルスは主に神経細胞が密集している部位(大脳皮質、基底核など)で増殖するため、脳のCTやMRI検査を行うことで、異常所見を認めることもあります。

治療

日本脳炎ウイルスに対する根本的な治療方法はないため、治療の中心は対症療法になります。日本脳炎の経過中は、脳全体が浮腫(ふしゅ)を起こし、けいれんや呼吸障害、血圧の低下などをきたすため、これらへの対応が主体となります。

脳の浮腫を少しでも軽減させるためには、脳圧降下剤を投与します。けいれんが生じている際には、適宜抗けいれん薬を使用します。呼吸や血圧の障害に対しては、人工呼吸管理、血圧昇圧剤、輸液などの集中的な治療を行います。ステロイドパルスと呼ばれる特殊な治療方法がとられることもありますが、明らかな有効性は確認されていません。そのほか、集中治療の経過中に、肺炎や敗血症などをきたすこともあるため、抗生物質を投与することもあります。

予防

日本脳炎に対しての確実な治療方法は確立されておらず、予防をすることが極めて重要です。日本においては、日本脳炎の定期接種は生後6か月以上から可能ですが、標準的には3歳以上が推奨されています。ワクチンにより重篤な合併症の予防も期待できるため、ワクチン接種を怠らないことが大切です。

そのほかにも、予防ためには蚊にさされない対策が重要です。野外で活動をする際には、虫除けスプレーの使用や野外活動時間の短縮、長袖長ズボンを着用、皮膚の露出を最低限に抑えることなどが大切です。日本以外にも日本脳炎ウイルスの流行地域はあります。厚生労働省検疫所などの情報を参照し、流行地域に渡航する可能性がある場合には、予防接種を受けることを検討しましょう。

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