概要
気象病とは、気温や気圧など“気候”の変化によって引き起こされるさまざまな症状の総称です。どのような気候の変化によってどのような症状が現れるかは人によって異なり、「低気圧が近づくと頭痛がする」「気圧や気温の変化が激しい秋は体調を崩しやすい」などさまざまな訴えが聞かれます。日本では1000万ほどの人が気象病に悩んでいると考えられており、比較的発症頻度が高い症状といってよいでしょう。
気象の変化に伴う諸症状は、古くからさまざまな研究が重ねられてきました。しかし、はっきりとした発症メカニズムは分かっていないのが現状です。強いて言えば、私たちの体は常に気圧と気温に晒されており、それらが急激に変化することで体内のバランスを崩しやすくなり、全身にさまざまな症状を引き起こすと考えられています。
また、症状の現れ方も人によって大きく異なり、一時的で軽度なものもあれば外出が困難になるほどの強い症状が現れるなど、日常生活に支障をきたしているケースも少なくありません。
さらに、関節リウマチや気管支喘息などの病気を悪化させたり、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気の発症に関与していたりするとの考えもあり、決して見過ごすことはできない症状のひとつといってよいでしょう。
原因
気象病は天候の変化によって引き起こされます。原因は以下の通りです。
気圧の変化
特に気圧の低下は気象病の大きな要因であると考えられています。私たちの体は常に大気からの圧力、すなわち“気圧”を受けています。このため、体内では気圧に負けないよう外部へ向かってさまざまな部位で圧力が発生しているのです。しかし、急激に気圧が低下すると体にかかる圧力も低下するため、体内で生じている圧力のほうが高い状態になります。その結果、頭痛、めまい、動悸などのさまざまな症状が引き起こされます。
気温の変化
気温の急激な変化も自律神経のはたらきを大きく乱す原因になります。特に急激な気温の低下は、交感神経を刺激して心拍数や血圧を上昇させ脳梗塞や脳出血、心筋梗塞など命に関わる重篤な病気発症の引き金になり得ます。
さらに、冷気に晒された全身の血管は収縮するため血行が悪くなり、肩や首が凝りやすくなります。体の平衡感覚をつかさどる内耳への血流も低下するため、めまいや耳鳴りなどの症状を引き起こすことも少なくありません。
症状
気象病では次のような症状が現れます。
むくみや痛み
急激に気圧が低下すると、血液中の水分が血管の外に押し出されて浮腫(むくみ)が現れることがあります。また、それが誘因となって痛みの原因となるプロスタグランジンやヒスタミンなどの物質が産生されることにより、頭痛や関節痛といった気象病に特徴的な症状が現れるようになるとされています。
気管支喘息
気圧の急激な低下は気管支喘息を悪化させることも知られています。これは、気管支に加わっていた圧力が急激に低下することで、気管支内の圧力も低下して気管支内部が狭くなるためと考えられています。
自律神経の乱れ
そのほか、気圧の変化は自律神経の乱れを引き起こす原因にもなり、めまいや動悸などの自律神経失調症状、気分の落ち込み、集中力や注意力の低下など精神的な症状を引き起こすことがあります。
検査・診断
気象病は気候の変化による諸症状のことであり、中には脳卒中や心筋梗塞、気管支喘息の悪化など明らかな“病気”として現れることもあります。しかし、多くは一時的な頭痛やめまいなどの症状が生じるのみで“病気”と呼ぶような身体的な変化は見られません。
このため、気象病が疑われる症状が現れたとしても、血液検査や画像検査などの一般的な検査は行わないケースも多々あります。しかし、日常生活に支障をきたすほど強い症状があるケース、上で述べたような病気の発症や悪化が疑われるケースでは、それぞれの症状に合わせて頭部CT検査、血液検査、心電図検査などが必要に応じて行われます。
治療
気象病は“天候”というヒトの力では改善することができない現象が根本的な原因であるため、治療はそれぞれの症状を改善する“対症療法”が主体となります。具体的には、頭痛に対しては鎮痛薬、めまいに対しては抗めまい薬、気管支喘息の悪化に対してはステロイドの点滴などが挙げられます。
一方で、低気圧のときなどに併せて強い体調の変化が現れるようなケースでは、事前にそれらの症状を予防するための薬物療法などが行われることも少なくありません。特に内耳の血流を改善する抗めまい薬や体内の水分循環を改善する五苓散などの漢方薬がよく使用されます。また、ストレスや疲れ、睡眠不足など不規則な生活習慣も気象病による自律神経の乱れなどを助長することがあるので、発症を予防するための生活習慣改善も大きなポイントです。
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