ろっかんしんけいつう

肋間神経痛

最終更新日:
2023年01月26日
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2023/01/26
更新しました
2017/04/25
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概要

肋間神経痛(ろっかんしんけいつう)とは、肋骨(ろっこつ)の下を走る神経に何らかの原因で痛みが生じることです。肋間神経痛自体が1つの病気なのではなく、あくまで原因となる病気や外傷、解剖学的な異常が引き起こす症状の1つとして捉えられています。また、肋間神経痛を引き起こす原因が不明な場合もあります。

肋間神経は、12個ある胸椎(きょうつい)の間から左右に対となって出て各肋骨の下を走り、胸壁と腹壁の筋肉や皮膚の運動・知覚を司っている末梢神経です。通常は胸部の左右のうち、どちらか一側に起こるとされています。また、肋骨に沿って水平方向に痛みを感じることも特徴です。

症状の程度や現れ方は原因によってさまざまですが、特に病的な異常がない一次性(原発性)肋間神経痛と、何らかの病気に起因する二次性(続発性)肋間神経痛に分けられます。

原因

肋間神経痛は大きく2つに分けられますが、それぞれの主な原因は以下のとおりです。

原発性肋間神経痛

病気や外傷、解剖学的な異常がないにもかかわらず発症します。ストレスによるものが多いとされていますが、不適当な姿勢を長時間続けることで肋間神経が骨などによって直接刺激されて発症することもあります。

続発性肋間神経痛

何らかの病気や外傷、解剖学的な異常によって生じるものです。さまざまな原因がありますが、それぞれ以下のようなことが原因として挙げられます。

多くは、肋間神経を直接刺激することで発症します。一方、帯状疱疹は、ウイルス感染によって生じ、通常は皮疹(ひしん)を伴いますが肋間神経痛だけが生じることもあります。

症状

特定の肋間神経に生じる痛みであるため、その肋間神経が支配する筋肉や皮膚の領域のみの痛みが生じます。痛みは非常に強いことが多く、広範囲ではなく、範囲が限られた痛みであることが特徴です。

原発性の場合は、肋間神経そのものの痛みより肋間神経が支配する筋群(主に内・外肋間筋)のれん縮による痛みが主であると考えられます。そのため、不自然な姿勢や同じ姿勢を長時間取っていたり、ストレスにさらされたり、肩や背部の筋群が凝ったりすると起きやすくなります。症状は発作的で、数秒~数十秒続くことが特徴です。

一方、続発性の場合は、上半身を動かしたり、前かがみになったりしたときに肋間神経への圧迫が強くなって非常に強い痛みが生じます。また、原発性と異なり、原因となっている病気や異常が取り除かれるまで続くなど、痛みの継続時間が極めて長いことが特徴です。また、帯状疱疹ではピリピリとした表層部の痛みが生じ、特有の皮疹を伴わないことも多いです。

検査・診断

肋間神経痛の診断でもっとも重要なことは、痛みの原因を見逃さない(原発性肋間神経痛を除外する)ことです。

続発性の原因疾患としては、前述のとおり(悪性)腫瘍、胸膜炎骨折、(急性)帯状疱疹帯状疱疹後神経痛などが考えられます。また、原発性の場合、ほとんどのケースで痛みのほかに当該部位にほかの神経症状(知覚過敏や知覚鈍麻など)がみられます。

原因が見つからなかった場合は原発性として治療を開始します。一方で、痛みがある部位が変わった、痛みの程度がひどくなった、痛みの頻度が頻繁になったなど、症状が変化した際には、続発性である可能性を再検討する必要があります。

診断方法には後述する画像診断のほか、理学所見(視診、触診、腱反射などによる反応など)もあります。

また、肋間神経痛は胸壁や腹壁に痛みが生じるため、画像検査で明らかな異常がない場合には狭心症などの心疾患や消化器病変がないかを調べるためにも心電図検査、心臓超音波検査、内視鏡検査、血液検査などが行われることもあります。

X線検査

肋骨や脊椎の骨折、腫瘍などの異常を評価できる検査です。しかし、肋骨骨折はX線検査でははっきり分からないことも多々あります。ほかにも、肺炎肺がんなどの胸郭内病変を発見することが可能です。

CT検査

肋骨や脊椎、胸郭内の病変を詳しく観察できる検査です。X線では分からない骨折を発見することもできます。

MRI検査

椎間板ヘルニアなどの脊椎病変を観察できる検査です。椎間板の圧迫や脱出などを詳しく評価することが可能です。また、脊椎にある病気の治療方針を決めるうえでも重要な検査となります。

治療

肋間神経痛の治療は続発性の場合と原発性の場合で異なります。

続発性肋間神経痛の治療

続発性の場合は、原因となっている病気に対処することが第一となり、それぞれに適した手術や患部の固定、服薬治療などの治療が優先して行われます。特に帯状疱疹は早期から抗ウイルス薬を投与しないと症状が長引くことがあるので注意が必要です。また、帯状疱疹の後遺症である帯状疱疹後神経痛が生じている場合、原因への対処は困難です。

原因疾患への対処が困難な場合や対処しても痛みが残る場合、あるいはその両方の場合には、原因疾患の病態に応じて、日本ペインクリニック学会の作成する“神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン”の指定する薬(医療用麻薬を含む)の使用や神経破壊ブロック注射(原因疾患の病態によっては適応とならない場合もある)などを行います。なお、急性帯状疱疹のような炎症性疾患への使用を除き、一般的な抗炎症薬(NSAIDs:Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs)は効果がないため、注意が必要です。

帯状疱疹の予防

帯状疱疹やその後遺症である帯状疱疹後神経痛は、前述のとおり治療が困難なことから予防が重要です。特に帯状疱疹の好発年齢である50歳以上の人にはワクチン接種を推奨しています。

帯状疱疹のワクチンには不活化ワクチン*と生ワクチン**の2種類があり、昨今の研究では不活化ワクチンの方が生ワクチンよりも持続性・有効性が高いことが分かってきました。具体的には生ワクチンの有効性が60~70%程度、不活化ワクチンが90~95%程度とされています。また、生ワクチンの場合は、特に70歳以上の人が接種した場合の有効性が大幅に落ちるといわれています。

持続性に関しても、生ワクチンが3~5年程度持続するのに対して、不活化ワクチンが10年以上と、こちらも不活性ワクチンのほうが高いとされています。

また、生ワクチンはステロイドを使用中の人やがんの治療中の人など、一般的に帯状疱疹にかかりやすいとされる免疫に異常のある人は接種できません。

ワクチンは2種類とも保険適用外ですが、生ワクチンが7,000~9,000円程度、不活化ワクチンが40,000~50,000円程度(2~6か月間隔で2回接種)と価格や接種回数にも違いがあります。接種時は担当の医師とよく相談し、それぞれのワクチンの特徴を理解したうえで検討するとよいでしょう。

*不活化ワクチン:不活化(殺菌)されたウイルス・細菌を材料として作られたワクチン

**生ワクチン:生きたま弱らせたウイルス・細菌を材料として作られたワクチン

原発性肋間神経痛の治療

急性期の原発性肋間神経痛の場合、特に肋間神経ブロック注射によって症状の改善が期待できます。これは、肋間神経に局所麻酔薬を直接注入して痛みを麻痺させる治療です。ただし、施行できる医療機関が近隣にないなどの理由で対応が間に合わないこともあるため、場合によってはNSAIDsやその他鎮痛薬、湿布薬、漢方薬(芍薬甘草湯)などが併用されます。また、鍼灸も有効な場合があります。

痛みに対する予防としては、適度な運動を日常的に行うこと、十分な休息を取ること、呼吸法やヨガなどでストレス耐性を高めることなどがあります。なお、痛みが酷くなる場合には、ストレッチなどの運動は行わないほうがよいとされます。

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