概要
肥大型心筋症とは、心臓の心室の壁(心筋)が異常に厚くなってしまい、心臓の機能障害をきたしている病気を指します。心室の壁が厚くなる原因には高血圧や弁膜症(たとえば大動脈弁狭窄症)などがありますが、肥大型心筋症は、このような原因を特定できないものを指します。
肥大型心筋症は無症状のまま経過することも多い病気ですが、呼吸困難や胸の圧迫感などを自覚することもあります。また、最悪の場合、突然死を起こす病気でもあります。
肥大型心筋症の治療はさまざまで、内服薬を使用することも手術を実施することもあります。また、症状の悪化につながるリスクがあるために、運動、飲酒、妊娠などに制限がかかることもあります。
原因
肥大型心筋症は、心筋が異常に分厚くなることによって、心機能の低下が引き起こされる病気です。心筋が厚くなると、心室内部のスペースは小さくなります。これにより、本来心室に蓄えられるべき血液の量も減ってしまいます。心室内に入る血液量が減少すると、一回の心拍で全身や肺に送り出せる血液量も低下するため、必要な血液を全身に送り届けられなくなります。
MYH7遺伝子やMYBPC3遺伝子と呼ばれる遺伝子の異常と肥大型心筋症との関連が知られています。何かしらの遺伝子異常をもつ患者さんの割合も少なくないといわれており、「常染色体優性遺伝」という遺伝形式をとると考えられています。ただし、肥大型心筋症はこうした家族歴がある例ばかりではなく、遺伝子異常などが特定できないものも多く存在しています。
症状
肥大型心筋症であっても、必ずしも症状が現れるわけではありません。心臓の病気を持っていても生涯、症状が現れない方もいます。
しかし、なかには肥大型心筋症に伴うさまざまな症状を呈する例もあります。たとえば、重篤な場合には、心室からの血液供給が減少することや不整脈が生じることと関連して、失神や突然死をきたすこともあります。また、重篤でなくとも、胸痛や呼吸困難(特に運動時)、動悸、めまいなどの症状が現れることがあります。
肥大型心筋症の症状は、運動や飲酒、妊娠などをきっかけに重くなる可能性があります。運動に関しては、負荷が軽いスポーツで症状が悪化することは少なく、マラソンや重量挙げなど負荷の強い運動の場合に、症状の悪化が懸念されます。
検査・診断
肥大型心筋症の検査では、まず心臓超音波検査や心電図検査が行われます。
心臓超音波検査
肥大型心筋症はタイプにより肥大する部位などが異なりますが、心臓超音波検査を行なうと、心室が非対称・不均一に厚くなっていることが確認できます。
心電図検査
心電図検査では、心室が分厚くなっていることに関連した波形の異常を確認することができます。無症状の方の場合、学校や職場の検診における心電図検査が、心臓の病気を疑うきっかけになることもあります。また、肥大型心筋症では死にいたりうる危険な不整脈が現れることもあるため、ホルター心電図が適応になります。
心臓カテーテル検査・心筋生検
血行動態をより詳しく確認することを目的として、心臓カテーテル検査が行われることもあります。心臓カテーテル検査によって心臓の細胞を採取することも可能であり(心筋生検)、より正確な肥大型心筋症の診断につなげることができます。
そのほか、心臓CT、核医学検査、遺伝子検査などが行われることもあります。
治療
肥大型心筋症では、症状や重症度に応じて治療法が選択され、ときに経過観察になることもあります。
肥大型心筋症では心臓の収縮力が過剰に強くなっていることから、これを抑えることを目的としたβ遮断薬やカルシウム拮抗薬などの内服薬が処方されます。
内科的な治療方法以外に、外科的な治療方法が取られることもあります。分厚くなった心筋を切除したり、僧帽弁に異常があれば僧帽弁に対しての手術が行われたりすることがあります。症例によっては心臓移植が適応になることもあります。
肥大型心筋症に伴って起こることがある不整脈には「心房細動」、「WPW症候群」、「心室頻拍」、「心室細動」と呼ばれるものなどがあります。これらに対する治療としては、抗不整脈薬やワーファリンなどの抗凝固薬、カテーテルアブレーション、ペースメーカー、植込み型除細動などがあります。
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関連の医療相談が3件あります
肥大型心筋症と期外収縮
肥大型心筋症による心室頻拍で8年前にICDを埋め込みしています。その後、心房細動に3年前になり、アブレーションの手術をしました。1年半ぐらい経って再び心房細動が置きましたが自然に停止し現在に至っています。最近、期外収縮が頻発するようになってきて、多いときは30秒に2回ぐらい簡易型心電計で見つかるときもあります。この期外収縮は、肥大型心筋症の悪化や心室頻拍、心房細動につながるものなのでしょうか。最近、胃腸の調子が良くなく、お腹の張りを感じたとき期外収縮が起きるような気がします。ひょっとしたら感じ安くなっているだけかもしれませんが。動悸や息切れなどを感じることはなく、期外収縮が心室頻拍等に繋がらないか心配しています。
血圧の上昇と脈拍の乱れ
ここ最近動悸を感じ少し息苦しくなることが多かったのですが、血圧脈拍を測ってもとくに異常なく(大体110/70脈拍60~70くらい、体温36°前後)他には症状もなかったので、精神的なものかなと特に気にしていませんでした。 しかし、昨晩動悸と息苦しさがいつもより酷く目のかすみとだるさもあったので測ってみたら150~160/100脈拍45と今まで出たことがない数値でした。 しばらく座って休み再度測ってみたら140/90脈拍50と少し落ち着き、昨晩は少し早めにお休みしました(動悸を感じ中々寝つけませんでしたが…) 今朝起きて測るといつもの血圧脈拍に戻っていました。(熱は昨晩から少し微熱気味です) 祖母が肥大型心筋症で亡くなり、父親も心房細動と診断された事があるので少し不安なところがありますが、新型コロナウイルスで医療従事者の皆さんもお疲れですし、これは病院に行くほどなのかどうか非常に迷っております。 (昔小児喘息を患って以降大きな病気もしていないのでかかりつけ医もおりません) お忙しい中恐れ入りますが、ご確認頂けましたら嬉しいです。
心臓の動きが弱い
めまいと頭痛があり、約半年間総合病院にかかっていまして、心臓が大きいということと、収縮する力がとても弱いということがわかりました。母が若くして心筋梗塞で亡くなっているため、遺伝の可能性があると医師から早めにカテーテル検査をした方がいいと言われていて、もうすぐ検査を受けるのですが 心電図ではなにもひっかからないのですが…心臓が大きくなり、動きが弱くなる病気はどんなものがあるのでしょうか。 どんどん心臓が大きくなって、母のように急に亡くなってしまうのかと、不安です…
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肥大型心筋症を得意な領域としている医師
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心臓弁膜症
- 心臓弁膜症に対する弁置換・弁形成術
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- 肥大型心筋症に対する心筋切除術
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