いしゅくせいいえん

萎縮性胃炎

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

萎縮性胃炎とは、胃の粘膜に長期間にわたって炎症が生じることで、粘膜が壊されたり修復したりすることが繰り返され、しだいに胃の粘膜が薄くなった状態のことをいいます。萎縮性胃炎と慢性胃炎は、ほぼ同じ意味として扱われます。

特に、ヘリコバクター・ピロリ菌によって起こった萎縮性胃炎では、胃潰瘍十二指腸潰瘍胃がん、胃MALTリンパ腫(悪性リンパ腫の一種)、胃過形成性ポリープ(胃の炎症でできる胃ポリープの一種)などの病気を起こす可能性が高くなるとされています。

原因

萎縮性胃炎の原因でもっとも多いのは、ヘリコバクター・ピロリ菌という胃に感染する細菌です。ほとんどは幼少期に感染します。

ヘリコバクター・ピロリ菌は、胃の中でウレアーゼという酵素を生成します。このウレアーゼは、胃の粘液に含まれている尿素を分解してアンモニアをつくり出します。このアンモニアはアルカリ性であるために、ピロリ菌は胃酸を中和して胃内で生き続けます。また、アンモニアは胃の粘膜を傷つけ炎症を起こします。長期間にわたってピロリ菌が居座り、炎症を起こし続けることによって、しだいに粘膜が萎縮を起こし、萎縮性胃炎の状態となります。

その他には、自己免疫(自分を自分で攻撃してしまうようなメカニズム)によっても粘膜の炎症や萎縮が起こることがあり、このタイプの萎縮性胃炎をA型胃炎と呼びます。

以前は、胃粘膜の萎縮は主に加齢によって起こるものだと考えられていました。しかし、ヘリコバクター・ピロリ菌が発見されてからは、主としてピロリ菌感染に伴う現象であるということが判明しました。

 

症状

萎縮性胃炎には特徴的な症状はありません。そのため、症状のみでは萎縮性胃炎だと断定することはできませんが、チクチクとした胃の痛み、腹部の膨満感、胃が重く感じられるなどの症状を自覚する方もいます。

萎縮性胃炎の主要な原因であるピロリ菌の治療をすると、それまで感じていた胃の不快症状(食欲不振や胃もたれ感など)が改善することがあります。

検査・診断

萎縮性胃炎の検査で第一に選択されるのは上部消化管内視鏡検査胃カメラ)です。

そのほかの検査としては、萎縮性胃炎の原因であるピロリ菌の感染があるか調べる検査や、胃の萎縮について間接的に知るための検査などがあります。

内視鏡検査

鼻や口から胃カメラを挿入して、胃の中を直接観察する検査です。

萎縮性胃炎の代表的な胃粘膜の様子として、胃の壁が薄くなり粘膜の下の血管が透けて見えたり(血管透見像:けっかんとうけんぞう)、胃の粘膜が腸の粘膜のようになってしまう腸上皮化生(ちょうじょうひかせい)が見られたりします。

ヘリコバクター・ピロリ菌の検査

ヘリコバクター・ピロリ菌の感染があるかどうかを調べるための検査には、いくつか種類があります。

迅速ウレアーゼ試験

胃カメラの際に行う検査です。胃の組織を一部採取して、ピロリ菌の有無を迅速に調べることができます。

抗体測定法

血液検査によって、感染しているピロリ菌に対して体の抵抗力でつくられる抗体を評価します。

尿素呼気試験

検査薬を服用し、服用前後の呼気を調べることでピロリ菌の有無を診断する検査です。

便中抗原法

便の中のピロリ菌抗原というものを調べる検査です。

ペプシノゲン検査

ペプシノゲン(PG:胃の粘膜から分泌されるペプシンという物質の前段階のもの)は胃粘膜の炎症や萎縮によってその値が変化するため、胃粘膜の萎縮の程度を知るためのマーカーとなります。血液検査で測定されます。

その他の検査

胃酸の分泌の程度を評価する項目として、ガストリンという値を調べたり、自己免疫性の萎縮性胃炎(A型胃炎)の診断のために胃の組織などに対する自己抗体というものを調べたりすることがあります。これらは血液検査で行います。

 

治療

ヘリコバクター・ピロリ菌の持続的な感染によって引き起こされた萎縮性胃炎は、その除菌治療をすることで、胃の粘膜の炎症を改善させることができます。粘膜の炎症を改善させることで、胃潰瘍十二指腸潰瘍を起こす危険性を低下させることができ、また胃がんの発生も低下させることができます。

以前は、ごく限られたケースでしか、保険診療でのヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が認められていませんでした。しかし2013年2月からは、ヘリコバクター・ピロリ菌感染による萎縮性胃炎に対しても保険診療での除菌治療が可能となりました。胃カメラで胃に慢性胃炎(萎縮性胃炎)があり、いずれかの検査でヘリコバクター・ピロリ菌感染があるということが証明されれば、治療を行うことができます。

除菌治療では、胃酸を抑える薬や、抗菌薬など数種類の薬を1週間内服し、しばらく期間をおいてから、除菌が成功したかどうかを確かめる検査を行います。

ただし、除菌治療が成功した後であっても、粘膜の炎症・萎縮が改善するには長い期間を要します。そのため、除菌治療が成功した後でも胃がんになることはありえます。除菌治療が上手くいった後であっても、定期的に胃カメラなどによる胃がんのチェックを行うことは大切です。

 

 

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