概要
非結核性抗酸菌症とは、結核菌以外の抗酸菌によって生じる病気のことです。非結核性抗酸菌症の原因となるものとしては、Mycobacterium avium-intracellular(MAC症)とMycobacterium Kansasii症の発症が多く、これらが大半を占めています。非結核性抗酸菌症では、結核のようにヒトからヒトへの感染や、数年で死に至ることはほとんどありません。しかし結核が減少しているのとは対照的に、発病者が増加しています。
症状としては、体重減少、微熱が出る、血痰などがありますが、いずれも結核と比べると軽く、慢性の呼吸器感染症の症状を呈します。病状の進行は非常に緩やかであり、10~20年という年月をかけて進行していきます。
感染者数は年間8,000人程度、死亡者数はそのうち1,000人強程度とされています。なお、閉経後の女性に多く発症していることも確認されています。進行は緩やかなのですが、菌を体内から完全に排除することは困難です。治療期間も年単位となるため、長期的な経過観察が必要不可欠な病気です。
原因
非結核性抗酸菌症とは、結核菌以外の菌の感染によって起こる慢性の呼吸器疾患で、非感染性の抗酸菌感染症です。非結核性の抗酸菌には多くの種類がありますが、日本国内では、Mycobacterium avium-intracellular(MAC症)とMycobacterium kansasiiが大半を占めています。その割合は、MAC症が非結核性抗酸菌症のおよそ70%を占めており、続くkansasiiと合わせると全体の90%以上を占めています。
非結核性抗酸菌は、水回り、水道、浴室のシャワーヘッドなど、ぬめり気のあるところに多く生息しています。一説では、日本では女性の発症者数が多いのは、家事の最中に蒸気にのった病原菌を吸い込んでしまうことが関係しているのではともいわれています。また、非結核性抗酸菌症は庭でガーデニングをする方に多いという報告もあります。これらの環境中に長い時間を過ごし、空気中に漂う病原体を吸い込むことで感染が成立するのでは、と考えられています。
抗酸菌の増殖スピードは非常に遅いため、非結核性抗酸菌症はゆっくり緩徐に進行する慢性の呼吸器感染症になります。原因菌の増殖が速ければ速いほど薬による効果が高いですが、非結核性抗酸菌症はゆっくりと増殖するため、薬の効果が得られにくいのが現状です。
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症状
呼吸器感染症では肺の中で菌が増殖しますが、菌の増殖のスピードによって症状は変わります。非結核性抗酸菌症では咳や痰、血痰、体重減少や全身倦怠感などの症状があらわれ、結核と比較すると症状も軽いことが多いです。また無症状で経過していることもまれではなく、健康診断などで医療機関の受診を勧められ検査した結果、発覚することもあります。
検査・診断
非結核性抗酸菌症では、胸部単純レントゲン写真と胸部CTといった画像検査や、痰を用いて培養検査と呼ばれる方法がとられることもあります。非結核性抗酸菌症の原因菌は増殖スピードが非常に遅く、結果が判定するまでにも数週間を要することがあります。無症状なこともあることもあるため、喀痰を得ることが難しいこともあります。こうした場合には、気管支鏡検査を行って痰を採取することもあります。
治療
非結核性抗酸菌症の治療の基本は薬物療法です。MAC症に対してはリファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシン、ストレプトマイシン、といった薬剤が用いられます。一方、Mycobacterium Kansasiiに対してはイソニアジド、リファンピシン、エタンブトールといった薬剤が使用されます。これらの薬剤を駆使しながら併用療法を行うことが、治療の主体になります。しかしながら、非結核性抗酸菌症の病原体の増殖スピードは遅く、現行の内服薬での治療効果は必ずしも高くなく、病原体を身体から完全に排泄することは困難です。かつ長期間内服が必要になることもあり、副作用も懸念される部分もあります。
非結核性抗酸菌症では、肺に空洞性病変が形成されることもありますが、一度空洞が形成されると、その部位が巣となり病原体はより一層増殖することになります。空洞に居座った病原体に対して、薬の効果はそれほど強く期待できません。そのため、こうした空洞性病変に対しての治療アプローチとして、内服薬での治療に加えて外科的な治療方法がとられることがあります。ただし、現在空洞化に対する手術療法に関しては、医師間や診療科間でも大きく意見がわかれています。
非結核性抗酸菌症の治療方法は必ずしも確立されているとは言えず、治療期間も年単位におよびます。日常生活における制限はないとはいえ、症状増悪時には早期受診をすると言った心構えが必要です。
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