概要
頚椎後縦靭帯骨化症とは、背骨を構成する椎体骨の後ろに存在する「後縦靭帯」と呼ばれる部位が骨となってしまい、神経を圧迫する病気です。頚椎後縦靭帯骨化症では、手足がしびれたり、細かい動きができなくなったりするなど、さまざまな神経症状がみられるようになります。
頚椎後縦靭帯骨化症は、日本国内では難病指定を受けている病気のひとつで、国民全体の約1.5〜5.1%がかかっていると報告されています。外傷後を含め何かしらの理由で頸部のレントゲン写真やCTを撮影した際に偶然見つかることが多いですが、神経症状を必ずしも伴っているわけではなく、骨化そのものに病的な意味はないと考えられています。
頚椎後縦靭帯骨化症では、固定や痛み止めなどの保存療法に加え、手術療法がとられることもあります。神経に関連した障害が生じるようになる病気であるため、症状が完全に消えるかどうかを術前に判断することは難しいです。
原因
背中の骨である背骨(脊柱)は、椎骨と呼ばれるいくつもの骨により構成されています。椎骨は7つの頚椎、12つの胸椎、5つの腰椎に分けられ、こうした椎骨がいくつも縦に連なり一本の脊柱が完成します。椎骨が重なることで背骨には「脊柱管」と呼ばれる空間が形成されるようになります。
椎骨のひとつひとつが互いに重なるのみでは不安定で、靭帯がその安定化に寄与しています。脊柱管の中から椎骨の安定性や柔軟性に寄与しているのが「後縦靭帯」です。なお脊柱管の中には、硬膜嚢という液体(脳脊髄液)で満たされた袋が通っており、この袋のなかには重要な神経が入った脊髄が納まっています。
頚椎後縦靭帯骨化症では、脊柱管を内側から補強する後縦靭帯が骨化するため脊髄が物理的な圧迫を受けることになり、さまざまな神経症状を引き起こすようになります。後縦靭帯の骨化は頚椎に生じることが多いです。しかし、重症の骨化症になると頚椎後縦靭帯以外にも全身に骨化ができます。
頚椎後縦靭帯骨化症では、なぜ骨化が起きるのかという点についてはまだ分かっていません。これまで関連性が指摘されているものとしては、遺伝子との関連性、性ホルモンの異常、カルシウム代謝異常、糖尿病、老化、局所ストレスなどがあります。
症状
頚椎後縦靭帯骨化症では脊柱管内に存在する後縦靭帯が骨化し、脊髄を圧迫することからさまざまな神経症状が出現するようになります。出現しうる神経症状としては、感覚神経、運動神経、自律神経に関連したものに大きく分けて考えることが可能です。
感覚神経
感覚神経が障害を受けると、手足のしびれ、痛みなどが出現します。頚椎後縦靭帯骨化症の初発症状として、肩周りや指先に感覚障害が出現することがあります。
運動神経
運動機能が障害を受けると、手を細かく動かせなくなるといった細かい動作に関連した症状が出現します。病状が進行すると、つまずきやすくなる、歩くのが困難となる、といったより大きな動作に関連した症状が出現します。
自律神経
自律神経の症状としては、尿や便が出にくくなるといった膀胱直腸障害があります。
頚椎後縦靭帯骨化症では、こうした症状が徐々に進行する点が特徴です。
検査・診断
頚椎後縦靭帯骨化症は、レントゲン写真診断可能です。レントゲンで後縦靭帯の骨化を評価することが困難な場合はCTなどより精密な検査方法が選択されることもあります。
脊髄の圧迫状況を把握することも重要な観点となります。MRIと呼ばれる画像検査を行い、骨化した靭帯がどのように脊髄を圧迫しているのかを確認することになります。
治療
治療には、保存療法と手術療法があります。保存療法では、頚椎カラーや痛み止めの薬を用います。頚椎後縦靭帯骨化症では歩行や排尿機能などに悪影響が生じることもあります。歩けない、立ち上がれない、尿漏れなどは日常生活に大きな支障をもたらすことになるため、こうした場合には手術を行うことが検討されます。基本的な手術の考え方は除圧と固定です。除圧とは脊髄への圧迫を取り去っていくことをいいます。圧迫が取り去られると神経症状が改善されます。また固定とは不安定な椎間を安定させることです。この2つにより、頚椎後縦靭帯骨化症を治療します。具体的な手術方法としては、椎弓形成術、前方除圧固定術、後方除圧固定術などがあります。患者さんの症状や画像所見などを加味して、どういった治療方法を選択するかを決定します。
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