概要
高血圧緊急症は、単に血圧が異常に高いだけの状態ではなく、血圧の上昇に伴い脳や心臓、大動脈、腎臓などの主要な臓器が障害される病気です。加速型―悪性高血圧*と呼ばれる病態をはじめ、さまざまな臓器が急速に障害されるため、直ちに治療を行わなければ命に関わることもあります。血圧の上昇に伴って起こる臓器障害には高血圧性脳症や心筋梗塞、心不全、大動脈解離、不安定狭心症などがあります。
高血圧治療ガイドラインによると、血圧の正常値は診察室での測定値で上の血圧(収縮期血圧)が120mmHg未満、下の血圧(拡張期血圧)が80mmHg未満とされていますが、高血圧緊急症では収縮期血圧が180mmHg以上、拡張期血圧が120mmHg以上にもなることがあります。
高血圧緊急症の原因には、生活習慣によって高血圧が悪化するものに加え、腫瘍などの臓器障害によって血圧に関連するホルモンが過剰に産生されて生じるものなどがあります。
高血圧緊急症と診断された場合には、集中治療室やそれに準ずる施設に入院のうえ、注射薬などを用いた降圧治療が行われます。なお、著しい血圧の上昇をきたすものの臓器障害を伴わない場合、あるいは臓器障害が急速に進行する可能性が低い場合は高血圧切迫症と呼ばれ、内服薬による降圧治療が行われます。
*加速型―悪性高血圧:拡張期血圧が120~130mmHg以上で、心不全や高血圧性脳症などの発症リスクが高い予後不良の病態。
原因
高血圧緊急症は生活習慣が大きく関わっているほか、生活習慣以外にもさまざまな原因があります。
喫煙や運動不足、過労、過度の飲酒、塩分の過剰摂取は血圧を上昇させます。このような生活習慣によって高血圧が悪化すると、高血圧緊急症を発症することがあります。
また、腎臓の上に位置する副腎という臓器に褐色細胞腫**クリーゼ***が発生することによって交感神経を活性化するホルモンが過剰に分泌され、著しい血圧の上昇を招くこともあります。重症の高血圧を伴う妊娠や子癇(妊婦に起こるけいれん発作)が生じた場合も高血圧緊急症を引き起こす原因になります。
**褐色細胞腫:副腎の中央部にある髄質から発生する腫瘍
***クリーゼ:ドイツ語で「危機的な状態にあること」を意味する
症状
高血圧緊急症では、120mmHg未満が正常値である上の血圧(収縮期血圧)が180mmHg以上、80mmHg未満が正常値である下の血圧(拡張期血圧)が120mmHgを上回り、著しい血圧の上昇を認めます。
また、それに伴い頭痛やけいれん、嘔吐、感覚障害、視野障害などさまざまな症状が起こり得ます。呼吸困難や意識障害など急を要する症状が起こることも少なくありません。
検査・診断
高血圧緊急症の診断は、血圧値と臓器障害の所見によって行われます。
高血圧緊急症が疑われる場合には、血圧の上昇に伴う臓器障害の有無や程度を調べるために心電図検査や尿検査、血液検査などを行います。また、呼吸困難や胸痛などの心血管疾患が疑われる場合には胸部X線検査を行い、意識障害やけいれん発作などを認める場合には脳血管疾患を疑って頭部CT検査を行うこともあります。
治療
高血圧緊急症と診断された場合は、直ちに血圧を下げる降圧治療が開始されます。治療は、集中治療室やそれに準ずる施設へ入院したうえで行われます。
高血圧緊急症の発症初期には、注射薬などを用いて段階に応じた降圧治療が行われます。血圧が目標値に達し次第、注射薬の使用を徐々に減らしながら内服治療を開始します。なお、血圧を下げるために使用する薬の種類や投与の仕方は、臓器障害の程度や原因となる病気を考慮して決定されます。
予防
高血圧緊急症の予防には、高血圧の早期発見と適切な血圧管理が重要です。
生活習慣の乱れやストレスは発症の誘引になり、降圧薬の自己中断は高血圧緊急症が発症する特に重要な原因になります。医師の指示に従って治療を継続するとともに、ストレスの解消や規則正しい生活を心がけましょう。
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