めたのーるちゅうどく

メタノール中毒

最終更新日:
2020年08月31日
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2020/08/31
更新しました
2017/04/25
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概要

メタノール中毒とは、メタノールを過剰に摂取・吸引することによって中毒症状があらわれる状態をいいます。軽症の方では悪心(おしん:吐き気を催すこと)、めまい、腹痛など、また重症の方では視力障害、呼吸困難、意識障害といった重篤な症状があらわれます。

メタノールは、アルコール臭のある無色透明の液体で、市販または工業用の溶剤、塗料、接着剤、燃料などに含まれている成分です。死亡例の多い中毒をおこす恐れなどがあることから、日本中毒学会の分析のあり方検討委員会(現分析委員会):薬毒物分析の指針に関する提言のなかで「中毒起因物質15品目」のひとつに挙げられています。

第二次世界大戦後の日本ではメタノールの毒性について認知が進んでおらず、メタノールを含む密造酒の製造がおこなわれ、こうしたアルコール飲料を摂取した人々から多数の失明者や死者が出ていたことがわかっています。

近年ではこうした密造酒の服用によるメタノール中毒例は少なくなり、一方で自殺目的での燃料用アルコールの服用など、メタノールを含む混合物を意図的に飲み込むことでメタノール中毒を発症するケースが多く報告されています。

原因

メタノール中毒は、メタノールの過剰摂取で引き起こされます。口から摂取した場合の致死量は30~100mL*1、失明を引き起こすと考えられる量は10mL*2と考えられています。

ただし、死亡や失明のリスクとなるメタノールの量には個人差が大きく、同じ濃度(40%)のメタノール溶液でも、15mL服用することで死につながってしまった例もあれば、500mL服用して生存できた例も報告されています。

1ヒトにおける経口致死量(100%メタノールとして)
2ヒトにおける経口失明惹起量(100%メタノールとして)(メタノールを摂取した結果、体内の血中濃度が20mg/dL以上になると、失明と関連するといわれています。)

症状

メタノール中毒ではこのような症状がみられます。

発症初期にみられる症状

  • 悪心(おしん:吐き気を催すこと)
  • 嘔吐
  • 腹痛
  • 酩酊(めいてい:ひどく酔っぱらうこと)
  • めまい
  • 昏睡(こんすい:意識をうしなうこと)

昏睡は重症例にみられる

主な症状

  • 視力への障害(眼のかすみ、見えづらさ、対光反射の減弱や消失、失明)
  • 消化器系への障害(悪心、嘔吐、腹痛、下痢、急性膵炎
  • 呼吸器系への障害(浅く早い呼吸、呼吸困難)
  • 意識障害

対光反射:瞳孔に届く光の強さによって、網膜に届く光の量を調節する反射反応

症状が重症で進行した場合の症状

  • 脳浮腫(徐脈、呼吸停止、心停止)

メタノール服用後40~72時間は無症状のことが多く、すぐに症状があらわれないケースがあります。また、危険となるメタノールの摂取量や、症状があらわれるまでの時間も人それぞれですので、メタノールを服用したときには症状の有無にかかわらず直ちに医療機関へと受診することが大切です。

検査・診断

メタノール中毒ではこのような検査がおこなわれることがあります。

  • 問診
  • 診察(身体所見の把握)
  • 血圧測定、脈拍測定、呼吸数測定、体温測定、酸素飽和度測定
  • 画像検査(CT検査など)
  • 血液検査
  • 尿検査 

など

患者さんの状態を把握するために、問診や診察をおこないます。患者さんの訴える症状、発症に至る前の経緯の把握、ならびに意識レベルや瞳孔・対光反射の度合い、聴診などの診察をすることが必要です。そのほか血圧、脈拍なども測定します。こうした患者さんの状態を把握していくことで、急性の中毒症状が疑われる場合には、迅速に治療を始めることが重要となります。

またメタノール中毒の治療方針、予後を検討していくために、可能な施設では血液中の「メタノール濃度」や「ギ酸濃度」の測定を行います。ただ実際にはすぐに測定できる施設は限られているため、服用された量や患者さんの症状に基づいて治療方針を決めていきます。

ギ酸とは、メタノールが体内で代謝・分解されてできる化合物です。そのためメタノール、そして代謝物であるギ酸の血中濃度がどれほど上昇しているのかを明らかにすることで、メタノール中毒の重症度を判断できます。

治療

メタノール中毒の治療・処置としては、主にこのようなものが挙げられます。

  • 血液透析
  • 解毒剤の投与
  • 胃内容の除去
  • 輸血
  • 酸性血症(アシドーシス)の補正

メタノール中毒では、過剰なメタノールの服用によって、体内血中のメタノールやギ酸の濃度が高まっています。そうした物質を除去できるよう血液透析をおこないます。血液透析は、メタノールの摂取量が30ml以上で、メタノール中毒が疑われているとき(アニオンギャップや浸透圧ギャップがみられるなど)や目の症状(目のかすみなど)があらわれているときに検討します。

メタノールはアルコール脱水素酵素によってホルムアルデヒドに酸化され、次いで アルデヒド脱水素酵素によってギ酸に酸化されます。アルコール脱水素酵素をエタノールで飽和するとメタノールが分解されてギ酸になることを防ぐことができます。そのため、治療としてエタノールを投与することがあります。

また、メタノール中毒では、体内の血液が酸性に傾いた状態になります。これは、メタノールを過剰摂取したことで、メタノールの代謝物(分解物)であるギ酸・乳酸といった酸性物質がつくられ、血液のpHが酸性に傾いてしまう(アシドーシスが起きる)ためです。この血液のpHを正すために、アシドーシスの補正(炭酸水素ナトリウムの投与など)をおこなう場合があります。

アニオンギャップ:血液中の陰イオンと陽イオンの差のこと。主に代謝性アシドーシスの原因を調べるためにつかわれる。検査では測定できないため、血液ガス検査から得た数値をもとに、計算式をつかって算出する。
浸透圧ギャップ:実際に測定した血清の浸透圧と、予測された(計算で算出された)血清の浸透圧の差のこと。代謝性アシドーシスが疑われたときに調べられる。

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