しかんしゅっけつ

弛緩出血

最終更新日:
2023年08月22日
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2023/08/22
更新しました
2017/04/25
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概要

弛緩出血(しかんしゅっけつ)とは出産時、赤ちゃんが生まれた後に本来なら収縮するはずの子宮がうまく収縮せず(子宮弛緩症)、それに伴って子宮の出血が止まらなくなってしまう状態をいいます。

通常、子宮は分娩後に急速に収縮し、それによって胎児に栄養を与えていた血流が封じられ、自然と出血が止まります。この際に起こる痛みがいわゆる“後陣痛(こうじんつう)”です。しかし弛緩出血では、何らかの理由で子宮の収縮がうまくいかなくなることにより、出血が続いてしまいます。

弛緩出血は出血量が多くなると輸血が必要になることがあります。母体死亡の原因となりうるため、早急に治療を行うことが大切です。

種類

弛緩出血を引き起こす子宮弛緩症には、子宮全体の収縮が弱くなる“全子宮弛緩症”と、出産の際に胎盤が剥がれた部分の子宮壁のみがうまく収縮しない“部分性子宮弛緩症”があります。

原因

弛緩出血の原因は、子宮筋の異常、子宮収縮の異常、分娩後のトラブルなど多岐にわたります。

子宮筋の異常

双子以上の多胎妊娠の場合や羊水が通常よりも多い場合、赤ちゃんが大きい場合などで子宮筋が伸び切ってしまうと、分娩後に子宮がうまく収縮しないことがあります。また、子宮筋腫子宮腺筋症、子宮の形態異常などが原因となることもあります。

子宮収縮の異常

陣痛が弱い場合やお産に時間がかかった場合などには母体に疲労が生じ、子宮がうまく収縮しないことがあります。そのほか、分娩の進行が早すぎる場合、子宮収縮薬や子宮収縮抑制薬を長く使用した場合などに起こることもあります。

分娩後のトラブル

分娩後、胎盤や卵膜などが残ってしまった場合や、子宮内に血の塊が残った場合、また膀胱や直腸に尿や便がたまっている場合に起こることもあります。

その他

母体の遺伝的要因や肥満などが関与していることもあります。加えて血液凝固障害、妊娠高血圧症候群、臨床的絨毛膜羊膜炎、早産などが原因となることがあります。

症状

弛緩出血は赤ちゃんが生まれ、胎盤が体の外に出た後に生じます。まず子宮から出血が生じ、子宮を触ると軟らかく、正常に収縮していないことが伺えます。通常、医療従事者による子宮底マッサージにより子宮は収縮しますが、弛緩出血をきたしていると収縮は一時的で、しばらくすると再び軟らかくなります。子宮内に血や血の塊がたまり、子宮底を押すとそれらが噴出する状態になります。

出血が多量になると出血性ショックを引き起こし、命に関わることもあります。具体的には出血量が1,000mLを超えると問題になることが多く、1,500mL以上で“播種性血管内凝固症候群DIC)”を合併してより出血しやすくなり、2,000mL以上で出血性ショックを引き起こしやすくなると考えられています。

検査・診断

前述のような症状が現れ、ほかに分娩後の出血が生じるような病気が見当たらない場合には、弛緩出血と診断されることが一般的です。特に子宮底を圧迫した際に血の塊などが噴出する場合は確定できます。

ただし、いずれの場合も速やかな治療が必要なため、診断よりも優先して治療を開始します。

治療

弛緩出血が疑われる場合、まずは子宮内に指を挿入して子宮の中に残存物がないかどうか確認し、万一残存物があれば取り除く処置をします。子宮内に残存物がなければ、子宮収縮薬の投与を行いながら子宮底のマッサージをして子宮の収縮を促します。

お腹を皮膚の上から冷やして締め付けることが有効な場合もあります。また、膀胱が充満している場合には排尿を促すこともあります。

これらの処置を行っても出血が止まらない場合には“子宮双手圧迫法”を検討します。子宮双手圧迫法とは、片方の手で皮膚の上から子宮底部の腹壁を押さえ、もう片方の手を腟内に挿入し、両手で子宮を挟むようにして圧迫する方法です。通常5〜10分ほど行うことが一般的で、併せて輸血を行うこともあります。また、子宮の中にガーゼを詰めて止血を促す処置を行うこともあります。

前述の治療で容体が安定しない場合、動脈塞栓術(どうみゃくそくせんじゅつ)や外科的止血を検討します。動脈塞栓術とは、足の付け根(鼠径部)の血管からカテーテルと呼ばれる細い管を入れて、子宮動脈に塞栓物質を注入する治療法です。

外科的止血の手段は複数あり、子宮に糸をかけ止血する“子宮圧迫縫合”や子宮へと血液を送る動脈を縫い合わせて出血を止める“動脈結紮(どうみゃくけっさつ)”などがあります。これらの治療法でも止血が難しい場合には子宮摘出術が検討されます。

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